「テラプローブ」──AI半導体の話題でこの名前を見かけたことはあっても、「結局何をしている会社なのか」を説明できる人は少ないのではないでしょうか。
- テラプローブの「半導体テスト受託」って、具体的に何をしているの?
- 親会社のPTI(力成科技)ってどんな会社? テラプローブとの関係は?
- AI半導体やHBMの需要拡大と、テスト受託はどうつながるの?
- 台湾に87億円も投資するって、小型株にしては大きすぎない?
- AIインフラのサプライチェーンのなかで、テラプローブはどこにいるの?
- テラプローブの事業内容と「半導体テスト」の位置づけを図解
- 親会社PTI(力成科技)とのグループ構造と戦略的意味
- AIインフラのサプライチェーンでテストが「最後の関門」になる構造
- 2025年12月期の決算実績と2026年上期の業績予想
- 台湾87億円投資・AI GPU測定開始の成長戦略
- 投資家が見るべき指標とリスク要因
テラプローブ(6627)は、半導体の「テスト受託」に特化した日本唯一の上場企業です。台湾OSAT大手PTI(力成科技)の連結子会社であり、日本と台湾の2拠点でウェハテスト・ファイナルテストを受託しています。2025年12月期は売上高417億円(前年比+12.5%)、営業利益88.9億円(同+28.0%)で過去最高を更新。とりわけサーバー・AI関連製品のテスト売上は前年比170%増(+65億円)と爆発的に伸びています(2026年2月発表の決算説明資料より)。2026年1月には台湾子会社が新竹県に約87億円で工場を取得し、2027年稼働を目指す大型投資を発表。AI GPU測定の受託開始も予定されており、AI半導体テストの「最後の関門」を担う黒子企業として構造的な成長フェーズにあります。
テラプローブとは?──半導体の「最終検査」に特化した受託企業
🔍 半導体テストとは「出荷前の品質保証」
テラプローブ(証券コード:6627、東証スタンダード)は、半導体チップの電気的テスト(検査)を受託する専業企業です。2005年にエルピーダメモリ(現・マイクロンメモリジャパン)のテスト部門を分社化して設立されました。
半導体の製造は「前工程」(ウェハ上に回路を形成)と「後工程」(切り出し・組立・テスト)に分かれます。テラプローブが担うのは、この後工程の「テスト」──すなわち、チップに電気信号を流して「正しく動くか? 不良品ではないか?」を1つ1つ確認する工程です。
半導体テストは「出荷前の品質検査員」のような存在です。工場で精密な製品を作っても、1つ1つ動作確認しなければ不良品が市場に出てしまう。GPU1枚300万円超のAI半導体で不良品が出たら被害は甚大です。テストは地味ですが、半導体サプライチェーンの「最後の関門」なのです。
🏭 テラプローブが行う2種類のテスト
テラプローブは「ウェハテスト」と「ファイナルテスト」の両方を受託。半導体の品質を最終保証する。
🔬 ウェハテスト
ウェハ(シリコン円板)上のチップが回路形成後にまだ切り出されていない状態で、プローブカードの針をチップの電極に当てて電気信号を流し、1つ1つ良品・不良品を判別する。切り出し前に不良品を排除するため、後工程のコスト削減に直結。
✅ ファイナルテスト
パッケージ(封止)された完成品のチップに対して、動作速度・電圧・温度耐性などの最終確認を行う。出荷直前の「最後の関門」。ここを通過して初めて「製品」として顧客に届けられる。
🏢 会社の基本情報
| 会社名 | 株式会社テラプローブ(Tera Probe, Inc.) |
| 証券コード | 6627(東証スタンダード) |
| 設立 | 2005年8月(エルピーダメモリのテスト部門を分社化) |
| 本社 | 神奈川県横浜市港北区新横浜 |
| 事業拠点 | 日本(九州事業所・熊本県)、台湾(TeraPower Technology=TPW) |
| 親会社 | Powertech Technology Inc.(PTI・力成科技)── 台湾OSAT大手(業界5位) |
| 連結従業員 | 1,397名(2025年12月末) |
| 連結売上高 | 417.5億円(2025年12月期・過去最高) |
半導体の後工程(組立+テスト)を受託する専門企業の総称。ASE(台湾)、Amkor(米国)、PTI(台湾)などが世界の大手。テラプローブはこのOSATのなかでも「テスト」に特化した希少なポジション。

PTIグループの一員であることの戦略的意味
🏗️ 台湾OSAT大手PTI(力成科技)の連結子会社
テラプローブを理解するうえで欠かせないのが、親会社PTI(Powertech Technology Inc.・力成科技)の存在です。PTIは2017年にテラプローブの発行済株式の過半数を取得し、テラプローブを連結子会社化しました。
PTIは台湾に本社を置く半導体後工程受託(OSAT)の大手で、TrendForceの調査によると2024年の世界OSAT業界で5番手に位置します。2026年1月には日本経済新聞がPTIが「AI半導体関連に2,200億円投資」と報じており(出典:日経新聞 2026年1月27日)、グループ全体でAI半導体への投資を加速させています。
PTIが「組立・封止」、テラプローブが「テスト」を担う分業体制。日台2拠点で半導体テストを受託。
①顧客基盤:PTIの顧客(半導体メーカー)からのテスト受託案件が流れてくる。
②投資連携:PTIグループ全体の設備投資戦略のなかで、テスタ投資の最適化が可能。
③地理的優位:台湾の半導体産業クラスター(TSMC・SK Hynixなどの近隣)に拠点を持つ。
注意点:一方で、親子上場特有の利益相反リスク(親会社の意向が優先される構造)は認識しておく必要があります。
🗺️ AIインフラ・サプライチェーンのなかの位置づけ
当サイトの技術解説記事で繰り返し述べている通り、AI半導体には「GPU設計 → HBM製造 → 先端パッケージ → テスト → データセンター」という長いサプライチェーンがあります。テラプローブはこのチェーンの「テスト」レイヤーにいます。
NVIDIA等
SK Hynix等
TSMC等
★テラプローブ
冷却・電力
AI半導体が増産されるほど、テスト工程の回数・複雑性・所要時間も増大します。特にHBMは3D積層構造であるため、積層前のウェハテスト+積層後のテストの両方が必要で、テスト回数が従来メモリの数倍に膨らみます。テスト工程が量産能力を律速する「ボトルネック」になり得る──これがテラプローブへの注目が高まっている構造的な背景です。
📖 【完全図解】HBMとは?GPUの隣にある「AI最重要メモリ」を初心者向けに解説 →
HBMの3D積層構造がなぜテスト工程を複雑にするのかを理解できます。

業績分析──過去最高を更新した2025年12月期と成長加速する2026年
📊 2025年12月期(通期)──売上高・営業利益が過去最高を更新
2026年2月10日に発表された2025年12月期の連結決算は、売上高・営業利益・経常利益すべてで過去最高を記録しました(決算短信・決算説明資料より)。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 371.1億円 | 417.5億円 | +12.5% |
| 営業利益 | 69.5億円 | 88.9億円 | +28.0% |
| 経常利益 | 70.1億円 | 87.5億円 | +24.9% |
| 純利益 | 35.1億円 | 33.7億円 | ▲4.0% |
| 営業利益率 | 18.7% | 21.3% | +2.6pt |
出典:テラプローブ 2025年12月期 決算短信・決算説明資料(2026年2月10日発表)
🚀 成長の牽引役:サーバー・AI関連テストが前年比170%増
2025年12月期の最大のトピックは、サーバー向け・AI関連製品のテスト売上が前年比170%伸長(+65億円増)を記録したことです(決算説明資料P.19より)。EV向けロジック製品のテスト拡大も貢献し、全社で6期連続の増収となりました。
第4四半期(2025年10-12月)は特に好調で、四半期売上高119.3億円(前四半期比+10.5%)、営業利益29.4億円(同+31.2%)、営業利益率24.6%と、いずれも四半期ベースで過去最高を更新しています。会社側は第4四半期の上振れ要因として「サーバー・AI関連製品の上振れ」と「台湾ドル高(為替差益)」を挙げています。
📈 2026年12月期 上期予想──営業利益51%増の加速成長
2026年上期(1-6月)の業績予想は以下の通りです。第2四半期以降は「サーバー向け及びAI関連製品のさらなる需要増」を見込んでいます。
| 項目 | 2025年上期 (実績) |
2026年上期 (予想) |
前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 190.2億円 | 250.0億円 | +31.5% |
| 営業利益 | 37.2億円 | 56.0億円 | +50.5% |
出典:テラプローブ 2026年12月期 上期業績予想(2026年2月10日発表)。為替前提:US$ 156.00円、NT$ 4.80〜4.85円。
テラプローブは通期予想を開示せず、上期予想のみを発表しています。また、台湾ドル建ての売上高が全体の約41%を占めるため、為替変動の影響を受けやすい構造です。2025年12月期第4四半期は台湾ドル高が利益の上振れ要因になりましたが、逆方向に動くリスクもあります。

成長戦略──台湾87億円投資とAI GPU測定の開始
🏗️ 台湾新竹県に約87億円の大型投資(2026年1月発表)
2026年1月27日、テラプローブは台湾連結子会社TPW(TeraPower Technology)が新竹県湖口郷に土地・建物を取得したと発表しました。取得価格は17億8,000万台湾ドル(約87億2,200万円)。2027年1月の稼働開始を予定しています(出典:テラプローブ IR 2026年1月27日)。
この金額は、テラプローブの2025年12月期の営業利益88.9億円にほぼ匹敵する規模です。同社の時価総額(2026年4月時点で数百億円規模)に対しても大きな投資であり、AI半導体テスト需要の拡大に向けた「攻めの投資」と位置づけられます。
新竹は台湾の「サイエンスパーク」が所在し、TSMC・ASML・SK Hynixなど世界の半導体企業が集中する地域です。テスト受託の顧客(半導体メーカー)の近くに拠点を置くことで、輸送時間の短縮と機密性の確保が可能になります。
🤖 AI GPU測定の受託開始──2026年の成長ドライバー
テラプローブの横山毅社長は日刊工業新聞のインタビュー(2025年3月21日報道)で、「AIサーバー向けの半導体テストを強化する」と述べ、台湾拠点でAI向けGPU測定を2025年後半から量産レベルで開始する計画を示しました(出典:日刊工業新聞 2025年3月21日)。
2025年12月期の決算説明資料では、2026年の成長戦略の筆頭に「AI・先端デバイス領域の積極獲得」が掲げられています。サーバー・AI関連の売上構成比は年々上昇しており、会社は2026年にさらなる比率拡大を見込んでいます。
AI・先端デバイスのテスト獲得──AI GPU・先端ロジック・CIS(イメージセンサ)の成長領域で技術力・品質を武器に受注拡大
国内半導体増強への対応──日本のサプライチェーン再構築(TSMC熊本工場など)に伴う新規テスト需要の取り込み。J-OSAT(日本OSAT連合会)の設立にも参画
日台拠点の最適運用──日台共通プラットフォームで85台のテスタを投資(台湾66台、日本19台)。需給変動に強い体制構築
スマートファクトリー化──自動搬送・AI活用で品質・コスト・スピードを改善
出典:テラプローブ 2025年12月期 決算説明資料 P.19、P.22(2026年2月発表)

投資家が見るべき指標とリスク要因
📌 決算でチェックすべき5つの指標
⚠️ リスク要因──投資判断で考慮すべき5つのリスク
| リスク分類 | 内容 |
|---|---|
| 顧客集中リスク | PTIグループ経由の受注比率が高い。親会社の事業戦略変更が直接影響する構造 |
| 為替リスク | 台湾ドル建て売上が約41%。US$建て売上もあり、為替変動が業績に大きく影響 |
| 設備投資の回収リスク | 台湾87億円投資は営業利益1年分に匹敵。需要が見込みより遅れた場合の固定費増がリスク。有利子負債も増加傾向(2025年末299億円、前年末138億円から倍増) |
| 半導体サイクルリスク | 半導体産業は景気循環性が強い。AI需要が一時的に調整した場合、テスト需要も連動して減少する可能性 |
| 地政学リスク | 台湾に主要拠点を持つため、台湾有事や米中対立の激化が事業に影響する可能性 |
テラプローブの投資テーマを一言で表すなら「AI半導体の量産拡大 → テスト工程のボトルネック化 → テスト受託需要の構造的増加」です。HBMやAI GPUが増産されるほど、テスト回数と複雑性は増大します。しかし、この構造的な追い風は「AI半導体の需要が伸び続ける」ことが前提です。AI投資の一時的な調整局面では、テスト需要も影響を受けます。
また、ROE 8.6%が株主資本コスト(会社試算10.4〜12.4%)を下回っている点は、資本効率の観点から改善が求められる状況です。会社は「純利益の継続的な改善」でROE向上を目指すとしています。

まとめ──テラプローブの全体像
① 事業内容:半導体のウェハテスト・ファイナルテストを受託する専業企業。半導体サプライチェーンの「最後の関門」。
② グループ構造:台湾OSAT大手PTI(力成科技・業界5位)の連結子会社。日本と台湾の2拠点体制。台湾子会社TPWの売上構成比は約41%。
③ 2025年12月期:売上高417.5億円(+12.5%)、営業利益88.9億円(+28.0%)で過去最高更新。サーバー・AI関連テストが前年比170%増(+65億円)と爆発的成長。
④ 2026年上期予想:売上高250億円(+31.5%)、営業利益56億円(+50.5%)。成長の加速を見込む。
⑤ 成長投資:台湾新竹県に約87億円で工場取得(2026年1月)。2027年稼働。AI GPU測定の受託も開始予定。テスタ85台を新規投資済み。
⑥ リスク:顧客集中(PTI依存)、為替(台湾ドル)、設備投資回収(有利子負債倍増)、半導体サイクル、地政学リスク。ROEが株主資本コストを下回る点も課題。
結局こういうことです。テラプローブは「半導体テスト」という地味だけれど不可欠な工程に特化した、日本唯一の上場企業です。AI半導体の量産が加速するほど、テスト工程の需要は構造的に増大します。台湾87億円投資やAI GPU測定の開始は、この追い風に乗るための「攻めの一手」です。一方で、設備投資の回収リスク、為替リスク、親子上場の構造的な課題も見逃せません。「AI半導体の量産を支える黒子企業」として、サプライチェーン全体のなかでこの企業の位置づけを理解することが、投資判断の精度を上げる鍵になります。
❓ よくある質問(FAQ)
📚 参考データソース
企業IR資料:
・テラプローブ 2025年12月期 決算短信(2026年2月10日発表)
・テラプローブ 2025年12月期 決算説明資料(2026年2月10日発表)
・テラプローブ 台湾子会社における固定資産取得に関するお知らせ(2026年1月27日)
・テラプローブ 2026年12月期 上期業績予想(2026年2月10日発表)
・テラプローブ 月次連結売上高速報(2026年4月15日まで公表分)
※すべて テラプローブ公式IR より取得
報道・メディア:
・日刊工業新聞「テラプローブ社長・横山毅氏 AI半導体テスト強化」(2025年3月21日)
・日本経済新聞「台湾・力成科技、25年増収減益 AI半導体関連に2200億円投資」(2026年1月27日)
・日本経済新聞「半導体『地味スゴ』企業、AIの巨人も頼る ナノの黒子たち」(2026年1月31日)
・マイナビニュース「テラプローブが台湾でのテスト受託能力拡大に向けて不動産を取得」(2026年1月28日)
・EE Times Japan「サーバをそのままオイルにどぼん PUE 1.03の液浸冷却技術」(2026年1月14日)
・SBI証券「四半期大幅増益の中小型半導体関連7銘柄」(2026年1月7日)
業界データ:
・TrendForce OSAT業界ランキング(2024年実績)
・SEMI「世界半導体製造装置の市場予測」(2025年12月16日)
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※この記事は特定銘柄の投資推奨ではありません。AIインフラのサプライチェーン構造を理解するための情報提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。記事中の情報は作成時点のものであり、最新の業績・株価とは異なる場合があります。
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