古河電工(古河電気工業・5801)の光電融合での役割は、光通信で信号の光を生み出す「DFBレーザー」のチップを作ることです。光電融合(CPO)でも、光を運ぶ前にまず光源が要るため、古河電工は光の流れのいちばん最初の部品を受け持ちます。光ファイバーも作っています。
古河電工は2025年12月、高出力のDFBレーザーのチップの生産能力を2025年度の5倍以上にする計画(総投資額380億円、岩手の新工場は2028年4月に量産開始の予定)を発表しました。光ケーブルと接続のフジクラとは役割が違い、NVIDIAが出資を発表した米国の光部品大手(Coherent・Lumentum)と同じ光源の領域で競う立場です。
AIデータセンター関連株を調べると、必ず出てくるフジクラ(5803)と古河電工(5801)。「どっちも電線・光ケーブルの会社でしょ?」と、ざっくり同じ箱に入れていませんか?
実はこの2社、AIインフラの中で担っている役割がまったく違います。フジクラが「光を運ぶ配線」のエースなら、古河電工が握るのは「そもそも光を生み出す部品=レーザー光源」。CPO(光電融合)という次世代技術のまさに心臓部です。
この記事では、地味な「電線株」と思われがちな古河電工が、なぜAI相場の主役に押し上げられたのかを、①どこを担う会社か ②2つの強み ③決算と株価リスク ④NVIDIAが出資したCoherent・Lumentumとの関係、の順で図解します。読み終わる頃には、光関連ニュースを自分で読み解けるようになります。

- 正体:光通信の心臓「DFBレーザー光源チップ」を作れる、世界でも数少ない日本メーカー。AIの光配線を”光らせる”側。
- 強み:子会社の古河ファイテルオプティカルデバイス(FFOD)が高出力DFBレーザーチップを量産。2028年に生産能力を2025年度比5倍以上へ引き上げる計画(約380億円投資)。※出典:古河電工プレスリリース(2025年12月)
- 実力:2026年3月期は売上高1兆3,076億円(+8.8%)・営業利益638億円(+35.8%)。翌27年3月期は営業利益950億円予想と急成長局面。※出典:古河電工 決算短信(2026年5月)

DFB=Distributed Feedback(分布帰還型)レーザー。ざっくり言えば「1色(単一波長)でまっすぐ強く光る、超高性能な豆電球」です。
光通信では「光のON/OFF(=0と1)」でデータを送ります。その光を最初に生み出すのがレーザー光源。色(波長)がブレると信号が濁って読めなくなるため、波長がピタッと揃った澄んだ光を出せるDFBレーザーが、高速・大容量通信の土台になっています。CPO(光電融合)でも、この光源チップがなければ何も始まりません。

世界でも数社しか作れない「単一波長の高出力光源」
古河電工の光源事業を担うのが子会社古河ファイテルオプティカルデバイス(FFOD/千葉県市原市)。ここが作る高出力DFBレーザーチップが、データセンター用トランシーバーやCPOに搭載され、需要が急増しています。
ポイントは大規模増産の意思決定です。古河電工は約380億円を投じ、岩手(JSC岩手事業所内・2028年4月量産開始予定)とタイの第二工場に生産設備を導入。2028年にDFBレーザーチップの生産能力を2025年度比で5倍以上に引き上げる計画を公表しています。※出典:古河電工プレスリリース(2025年12月17日)、日経報道
生産能力の増強(2028年・25年度比)
新工場・増産投資
レーザーチップは化合物半導体(InP=インジウムリン等)を使い、髪の毛より細い構造を高精度に作り込む必要があります。長年の技術蓄積がないと歩留まりが上がらず、新規参入が極めて難しい領域。だからこそ「光通信黎明期からやってきた古河電工」に価値が集まっています。

部品単体ではなく「光の総合商社」的な強み
古河電工が評価されるのは、光源チップ(DFBレーザー)だけでなく、光ファイバ・光配線材・データセンター向けの伝送機器まで幅広く手がける点です。AIデータセンター需要を「点」ではなく「面」で取りにいけるのが特徴といえます。
| 古河電工が担う領域 | 中身 | AIでの役割 |
|---|---|---|
| 光源(DFBレーザー) | 高出力レーザーチップ | ◎ 本命 |
| 光ファイバ・配線材 | DC内・DC間を結ぶ光ケーブル | ○ 需要増 |
| EML・受光素子など | 次世代光デバイスを開発中 | △ 開発中 |
※EML=電界吸収変調器集積レーザー。高速変調に有利な次世代光源。出典:産業タイムズ、古河電工 研究開発ページ

光デバイス需要が利益を押し上げている
前期比 +8.8%
前期比 +35.8%
さらなる増益見込み
かつて「成熟した電線・非鉄の会社」と見られていた古河電工が、情報通信ソリューション事業(光デバイス・光配線)を成長エンジンに、利益を大きく伸ばしています。ここが「AI相場の主役」に押し上げられた理由です。※出典:古河電工 決算短信(2026年5月12日)。27年3月期予想は会社計画であり確定値ではありません。

「実需はある」。でも株価はテーマで走りすぎることも
古河電工は業績の裏付けがある「実需組」です。ただし株価は、2025年末比で一時約6.2倍(上場来高値6,241円・分割遡及修正値)まで急騰し、その後は数日で大きく調整する局面も見られました。PER(株価収益率)も業界平均を上回る水準で推移するなど、期待が先行しやすい状態です。※出典:各種株式情報サイト・報道。数値は2026年央時点で、その後変動します。
古河電工は「決算・受注・増産計画」という実需が数字に立っている点で、業績の裏付けが薄いテーマ株とは区別できます。とはいえ「実需がある=株価がいつ買っても報われる」ではありません。会社の実力(決算)と、株価の水準(期待の織り込み度)は別物として見るのが安全です。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。筆者は投資助言の資格を持ちません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

光源の種類で見る、古河電工の位置──DFBレーザー・外部光源・光ファイバー
「古河電工 CPO」と調べると、光源・光ファイバー・CPOの話が混ざって出てきます。光電融合で使う部品を「光源」と「運ぶ道」に分けて、古河電工がどこにいるかを整理しました。
| 部品 | 何をするか | 古河電工の関わり | ほかの主な会社 |
|---|---|---|---|
| DFBレーザー(信号の光源) | 1つの波長(色)だけで強く光る半導体レーザー。光トランシーバーやCPOの光源 | チップを作り、増産の計画を発表 | Coherent・Lumentum・住友電工 など |
| 外部光源(ELS) | CPOで、熱に弱いレーザーだけをスイッチの外の箱に置く方式 | 外部光源に使う高出力のレーザーも、DFBレーザーの一種 | 光部品の各社 |
| 光ファイバー・光ケーブル | 光の信号を運ぶ道 | 光ファイバーとケーブルを作る | フジクラ・住友電工 など |
光源をチップの外に置く理由は量子ドットレーザーとは、光ケーブルのフジクラはフジクラとはで解説しています。
古河電工は「同じ光源領域」で戦う日本勢
2026年3月、NVIDIA(NVDA)はCoherent(COHR)とLumentum(LITE)に計約40億ドル(約6,400億円)を出資すると発表しました。狙いはCPO向けのレーザー光源・光部品の調達安定化です。※出典:NVIDIA公式発表、日経クロステック(2026年3月)。数値・完了状況は執筆時点。
ここで重要なのは、NVIDIAが出資したこの2社こそ、高出力DFBレーザーの世界シェア上位という点。つまり古河電工は、NVIDIAが「喉から手が出るほど欲しい」と認めた光源領域で、同じ土俵に立つ日本企業なのです。市場調査でも高出力DFBレーザーはCoherent・Lumentumが上位を占めるとされ、古河電工はそこに食い込む立ち位置にあります。※出典:市場調査レポート等。シェアは調査により異なります(要確認)。
NVIDIAが光源に大金を投じたということは、「CPO時代にレーザー光源が構造的なボトルネック(=取り合いになる希少資源)になる」と業界が判断した証拠です。光源を作れる企業の価値が上がる流れであり、古河電工の増産投資(5倍増)はこの潮流に沿った動き、と読み解けます。

上流:素材・光部品(光源)
- 古河電工(5801):DFBレーザー光源 ←本記事
- Coherent(COHR):光源~光部品の垂直統合最大手。NVIDIA出資先
- Lumentum(LITE):レーザー・OCS。NVIDIA出資先
- 浜松ホトニクス(6965):受光・検出側
中流:光配線・モジュール・統合
- フジクラ(5803):高密度光配線・MPOのエース
- 住友電工(5802):光ファイバ・光デバイス
- Marvell(MRVL):光DSP
下流:システム・DC運用
- NVIDIA(NVDA):CPOスイッチで光化を主導、光源に出資
- Broadcom(AVGO):CPOスイッチのプラットフォーマー

投資家の方へ
古河電工(5801)は光源の実需組。決算(営業利益+35.8%)と増産計画は本物ですが、株価は急騰・急落しやすい。「実力」と「株価水準」を分けて見るのが肝心です。
学生・院生の方へ
化合物半導体(InP)・光デバイス・材料の知識が直結する領域。DFBレーザーやEMLは就活面接でも語れると強い。光通信は今後10年の成長分野です。
技術者の方へ
自社が光の「光源/配線/モジュール/システム」のどこに位置するかを、この3層マップで整理できます。CPO化で光源の重要性が一段上がる点は押さえておきたいところ。

| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 古河電工=ただの電線・電力ケーブルの会社 | AIでの主役は光デバイス(DFBレーザー光源)。光通信の心臓を握る会社。 |
| フジクラと同じ会社みたいなもの | 古河電工=光源(ポンプ)、フジクラ=配線(配管)。役割が違う。 |
| 実需があるなら株価は安泰 | 実需は本物でも株価は期待先行で乱高下する。実力と水準は別物。 |
| CPOが来たら光源はいらなくなる | 逆。CPOでも光源チップは必須。むしろ取り合いになる希少資源。 |

- 古河電工(5801)はAIの光配線を”光らせる”DFBレーザー光源の希少メーカー。
- 子会社FFODが光源チップを量産し、約380億円投資で2028年に生産能力5倍以上へ。
- 26年3月期は営業利益+35.8%、27年3月期は950億円予想と実需で成長中。
- NVIDIAが出資したCoherent・Lumentumと同じ光源領域で戦う日本勢。
- ただし株価は期待先行で乱高下。実需組でも水準判断は慎重に。
- フジクラ(配線)とはライバルではなく役割分担の関係。

よくある質問(FAQ)
A. 東証プライム上場、証券コードは5801です。
A. 優劣ではなく役割が違います。古河電工は光源(DFBレーザー)、フジクラは光配線(MPO・高密度ケーブル)。両方ともAI光化に欠かせません。
A. Coherent・Lumentumは光源~光部品を垂直統合する米企業で、規模とシェアが大きいため。ただし古河電工も同じ光源領域の有力プレイヤーであり、需要拡大の恩恵を受ける立場です。
A. 新工場の量産開始は2028年4月予定。生産能力5倍以上への引き上げも2028年目標です(会社計画)。時期は今後の状況で変動しうるため一次情報での確認を推奨します。
A. 光の信号を生み出すDFBレーザーのチップを作っています。光電融合(CPO)でも、光を運ぶ前にまず必要になる光源の部品です。
A. 古河電工は光を生む光源のレーザーに強く、フジクラは光を運ぶケーブルや接続に強い会社です。担う部品が違います。
この記事で見たCPOの光源を、もう一段くわしく知りたい方に。本書(日経BP)は、日経クロステック・日経エレクトロニクスの記者2人が、光電融合を市場動向・中核技術・主要プレーヤー・部素材の4章で解説した本で、部素材の章に「レーザー」「DFBレーザー」「量子ドットレーザー」などの節があり、CPOの構造や課題の節もあります。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
次に読むべき記事
ここまでで「古河電工(5801)」の全体像がつかめました。次は、つながりの深い記事で理解を一歩ずつ広げていきましょう。
データを運ぶ配線が銅から光へ。光電融合の基本
全体像を見る →テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめての方にもわかるように図解で書いています。
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