ダイシングで1個ずつに切り分けたチップは、そのままでは使えません。まず、パッケージの土台になる基板や金属の枠に、正しい位置で、しっかり貼り付ける必要があります。この工程が「ダイボンディング」です。
こんな疑問はありませんか?
- ダイボンディングとは、チップをどうやって貼っているの?
- ただ貼るだけなのに、なぜ大事な工程なの?
- 接着に使う材料には、どんな種類があるの?
- メモリのチップを何枚も積み重ねるときは、どうするの?
- ワイヤーボンディングやハイブリッド接合と、どう違うの?
この記事でわかること
- ダイボンディングの定義と、ピックアップから硬化までの流れ
- 固定・熱を逃がす・電気を通すの3つの役割
- 樹脂ペースト・DAF・はんだ・焼結銀の違いを1枚の表で
- 薄いフィルムでメモリを積み重ねる仕組み
- 装置・材料・使う側の企業を3面のカードで
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前工程(ウェーハに回路を作る)
基板
成膜
露光
エッチング
ドーピング
CMP
洗浄
配線
計測
後工程(チップに切り分けて仕上げる)
ウェーハテスト
バックグラインド
ダイシング
ボンディング ←ココ
封止
最終テスト
先端パッケージ
ダイボンディングは「ボンディング」の最初の工程です。「ダイシング」で切り分けたチップを基板に貼り、このあとワイヤーなどで電気をつないで、「封止」で樹脂に包みます。
ダイボンディングとは?先に結論
先に結論
ダイボンディングとは、ダイシングで切り分けたチップ(ダイ)を、テープから1個ずつつまみ上げ、パッケージの基板やリードフレーム(金属の枠)の決まった位置に、接着材料で貼り付けて固定する後工程です。
チップを固定するだけでなく、チップの熱を基板へ逃がしたり、チップの裏面の電極と電気をつないだりする役割も持ちます。接着には、樹脂のペースト、フィルム状の接着剤(DAF)、はんだ、銀を焼き固める焼結銀などを使い分けます。メモリのようにチップを何枚も積み重ねる製品では、薄いフィルムでチップどうしを貼り重ねていくのも、ダイボンディングの仕事です。
用語メモ:ダイ
ウェーハから切り出した1個のチップのこと。ダイボンディングは「ダイを貼り付ける(ボンディング)」という意味です。
用語メモ:DAF
Die Attach Film(ダイアタッチフィルム)の略。ウェーハの裏にあらかじめ貼っておく、フィルム状の接着剤です。ダイシングのときにチップといっしょに切り分けられ、チップの裏に付いたまま基板に貼られます。
ダイボンディングの流れ:つまむ・合わせる・貼る・固める
この工程の役割
受け取るもの
テープの上のチップ
ダイシングで切り分け、並んだままの状態
→
ボンディング
ダイボンディング
1個ずつ基板に貼り付ける
→
次の工程へ渡すもの
基板に固定されたチップ
ワイヤーボンディングなどで電気をつなぐ
| 順番 |
ステップ |
やること |
| 1 | ピックアップ | テープの下から細いピンなどで突き上げ、上から吸着ノズルでチップをつまみ上げる |
| 2 | 位置合わせ | カメラでチップと基板の位置を読み取り、決まった位置・向きに合わせる |
| 3 | 接着 | 基板に塗った接着材料、またはチップの裏のフィルムで、チップを押しつけて貼る |
| 4 | 硬化 | 熱を加えて接着材料を固め、チップを動かないように固定する |
ダイボンダー(ダイボンディングの装置)は、この流れを高速でくり返します。テープの上には、検査で良品と判定されたチップと、不良のチップが並んでいるため、良品だけを選んでつまみ上げるのも、装置の大事な仕事です。
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ダイボンディングの3つの役割
「貼るだけ」に見えるダイボンディングですが、チップが製品として働くために、3つの役割を担っています。
1. 固定する
チップが動いたり、はがれたりしないよう、基板にしっかり固定します。このあとワイヤーをつなぐときの力や、樹脂で包むときの力にも耐える必要があります。
2. 熱を逃がす
動いているチップは熱を出します。接着の層を通して、チップの熱を基板やパッケージへ逃がします。熱を通しにくい材料や、すき間(ボイド)があると、チップが熱くなりすぎます。
3. 電気を通す
パワー半導体のように、チップの裏面も電極として使う製品では、接着の層が電気の通り道になります。電気を通す材料で貼る必要があります。
用語メモ:ボイド
接着の層の中に残った、小さなすき間(気泡)。熱や電気の通り道をふさぎ、はがれの起点にもなるため、できるだけなくすように管理します。
接着の材料:ペースト・フィルム・はんだ・焼結銀
何で貼るかは、チップの種類と、熱や電気をどれだけ通したいかで選びます。
| 材料 |
どんなものか |
長所 |
主な使い道 |
| 樹脂ペースト | エポキシなどの樹脂に、銀などの粒を混ぜたペースト。基板に塗って使う | 扱いやすく、コストが低い | 一般的なIC |
| DAF(フィルム) | ウェーハの裏に貼る、フィルム状の接着剤 | 厚さが均一で、はみ出さない。薄いチップを積み重ねやすい | メモリなどの積層 |
| はんだ | 金属を溶かして貼る | 熱と電気をよく通す | パワー半導体、一部の高出力の部品 |
| 焼結銀 | 銀の細かい粒を、熱と圧力で焼き固めて貼る | 熱と電気をとてもよく通し、高い温度にも強い | SiCなどのパワー半導体 |
用語メモ:焼結
粉の粒を、溶かしきらない温度で熱して、粒どうしをくっつけて固めること。焼結銀は、はんだより高い温度でも溶けにくい接合を作れます。
ポイント:流れとしては、一般的なICは扱いやすいペースト、積み重ねるメモリは薄く均一なフィルム、熱と電流の大きいパワー半導体ははんだや焼結銀、という使い分けです。
メモリを積み重ねる:薄いフィルムの技術
スマートフォンやSSDのメモリでは、1つのパッケージの中に、薄いチップを何枚も積み重ねて容量を増やします。チップどうしを1枚ずつ貼り重ねていくのも、ダイボンディングの工程です。
ここで活躍するのが、ウェーハの裏にあらかじめ貼っておくフィルム状の接着剤(DAF)です。厚さが均一で、ペーストのようにはみ出さないため、薄いチップを正確に積み重ねられます。下のチップのワイヤーを埋め込みながら上のチップを貼れる、厚めのフィルムもあります。
レゾナックは、ダイシングテープとフィルム状の接着剤を一体にした製品を、20年以上の実績を持つ主力製品と位置づけ、生産量・売上とも世界トップクラスとしています。2023年4月には、積層化が進むメモリ向けの需要に応えるため、生産能力を約1.6倍に増強すると発表しました(2026年に稼働予定)。
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ダイボンディングの難しさ
チップが薄く、小さく、たくさんになるほど、ダイボンディングは難しくなります。
薄いチップのピックアップ
紙より薄いチップをテープから突き上げてはがすと、割れたり欠けたりしやすくなります。突き上げ方とはがし方の工夫が必要です。
位置の正確さ
このあとつなぐワイヤーやバンプの位置がずれないよう、チップを決まった位置にぴたりと置く必要があります。
すき間と反り
接着の層にすき間が残ったり、固めるときの熱でチップや基板が反ったりすると、熱の逃げ道がふさがれ、はがれの原因になります。
注意:ダイボンディングの不良は、組み立てた直後には見つからず、使っているうちに熱でくり返し伸び縮みして、はがれやひびとして表に出ることがあります。そのため、貼った後の検査や、信頼性の試験で確かめます。
フリップチップ・TCB・ハイブリッド接合との関係
チップを基板やほかのチップに取り付ける方法は、チップの性能に合わせて進化してきました。広い意味では、どれもチップを「貼る」ボンディングの仲間です。
| 方式 |
チップの向き |
電気のつなぎ方 |
| ダイボンディング+ワイヤー | 表を上にして貼る | 貼ったあと、細いワイヤーでふちの電極をつなぐ |
| フリップチップ | 裏返して、表を下にして載せる | チップの面に並べた小さな金属の突起(バンプ)で、基板と直接つなぐ |
| TCB(熱圧着) | 裏返して載せ、熱と圧力をかける | 細かいバンプを1個ずつ確実につなぐ。HBMの積層などで使う |
| ハイブリッド接合 | 向かい合わせて貼る | バンプを使わず、銅どうしを直接くっつける |
オランダのBesiは、2025年12月期の決算で、ハイブリッド接合の装置を採用した会社が18社に広がり、累計の受注が150台を超えたと発表しました。AI向けのチップを並べて組み立てる工程では、フリップチップの装置の需要も伸びたとしています。チップを「貼る」技術は、AI半導体の性能を左右する工程になりつつあります。
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ダイボンディングを支える企業:装置・材料・使う側
装置メーカー
- Besi(BESI、ユーロネクスト・アムステルダム):ダイアタッチ装置、フリップチップ、ハイブリッド接合の装置
- ASMPT(0522.HK):後工程の装置の大手。ダイボンダーも手がける
- ヤマハ発動機(7272):グループのヤマハロボティクスが、ダイボンダーやフリップチップボンダーを手がける
- キヤノンマシナリー(キヤノンの子会社):IC向けなどのダイボンダー
材料メーカー
- レゾナック(4004):ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム
- リンテック(7966)・日東電工(6988):ダイシングテープなど後工程の粘着テープ
使う側
- ASE(3711.TW)・Amkor(AMKR):後工程を受託する会社(OSAT)
- キオクシア(285A)・SK hynix(000660.KS):チップを積み重ねるメモリ
- ローム(6963):パワー半導体
装置は国内外のメーカーが競い合い、フィルム状の接着剤やテープでは日本の材料メーカーが強い存在感を持っています。メモリの積層が進むほど、薄いフィルムと、薄いチップを割らずに扱う装置の両方の出番が増えます。
ダイボンディングを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:製品の故障解析では、接着の層のすき間やはがれが、発熱や故障の原因として調べられることがよくあります。設計・品質の担当なら、チップの厚さや接着材料の選び方が、熱の逃げ方と寿命に関わることを知っておくと役立ちます。
投資家の方へ:ダイボンディングの装置と材料は、メモリの積層、パワー半導体、AI向けの先端パッケージという、それぞれ違う需要で動きます。どの製品向けの話かを分けて見ると、ニュースの位置づけがわかります。
学生・就活中の方へ:ダイボンディングは、機械(精密な搬送と位置合わせ)・材料(接着剤と金属)・熱(熱の逃がし方)が交わる分野です。機械系・材料系・化学系の学生にとって、目に見える製品として関われる工程です。
よくある誤解
誤解1:ダイボンディングは、ただチップを貼るだけの簡単な工程
チップを固定するだけでなく、熱を逃がし、ときには電気も通します。薄いチップを割らずに、正確な位置に、すき間なく貼るための技術の積み重ねがあります。
誤解2:ダイボンディングとワイヤーボンディングは同じ
ダイボンディングはチップを基板に貼って固定する工程、ワイヤーボンディングは貼ったチップの電極と外側を細い線でつなぐ工程です。順番に行う別の工程です。
誤解3:接着の材料は、どれでも同じ
一般的なICはペースト、積み重ねるメモリはフィルム、パワー半導体ははんだや焼結銀と、熱と電気の通し方や薄さで使い分けます。
まとめ
- ダイボンディングは、切り分けたチップを基板やリードフレームに貼り付けて固定する後工程
- 流れは、ピックアップ・位置合わせ・接着・硬化の4ステップ
- 役割は、固定する・熱を逃がす・電気を通すの3つ
- 材料は、樹脂ペースト・DAF・はんだ・焼結銀を、製品に合わせて使い分ける
- メモリの積層やハイブリッド接合など、チップを「貼る」技術はAI時代に重みを増している
よくある質問
Q. ダイボンディングとは何ですか?
A. 切り分けたチップを、パッケージの基板やリードフレームの決まった位置に、接着材料で貼り付けて固定する後工程です。
Q. ダイボンディングとワイヤーボンディングの違いは何ですか?
A. ダイボンディングはチップを基板に貼って固定する工程で、ワイヤーボンディングはその後に細い線で電気をつなぐ工程です。
Q. DAFとは何ですか?
A. ウェーハの裏にあらかじめ貼っておくフィルム状の接着剤です。厚さが均一で、薄いチップを積み重ねるメモリなどで使われます。
Q. パワー半導体のダイボンディングで焼結銀を使うのはなぜですか?
A. 熱と電気をとてもよく通し、高い温度にも強いからです。大きな電流で発熱するパワー半導体に向いています。
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ポチップ
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめての方にもわかるように図解で書いています。
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つまずきやすい「違い」を解決
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