3行でわかる要点
何が起きたか:10月13日、キオクシア株が前の営業日より13%安く引け、韓国のSKハイニックスも10%安、サムスン電子も7%安となりました。メモリの会社の株がそろって大きく下げています。
なぜ注目か:市場では、中国のCXMT(長鑫存儲)が新しい構造のDRAMを年末に出すと発表したことと、BroadcomのCEOがAIへの投資家を「カジノ」にたとえたと報じられたことが、理由に挙げられています。
AIインフラにとっての意味:今のメモリの会社の業績はAI向けの需要で大きく伸びています。今回の下げは足元の業績ではなく「この先も高い利益が続くか」への見方の変化で、次の決算が答え合わせの場になります。
情報の時点:2026年10月14日 0時30分(日本時間)。米国株は10月12日の終値まで
この記事の位置:AIインフラ速報解説 > メモリ > 10月13日のメモリ株の急落
関わる技術
DRAM
HBM
NANDフラッシュ
4F²セル
何が起きたか:メモリ株がそろって急落
東京市場は10月12日がスポーツの日で休みだったため、キオクシアの下げは10月9日から2営業日分の材料を一度に反映した形です。韓国では12日と13日の2日続けて下げました。
| 銘柄 |
日付 |
終値 |
前の営業日比 |
出来高 |
| キオクシアHD(285A) | 10月13日 | 15,180円 | −13.28% | 6,367万株 |
| SKハイニックス(000660.KS) | 10月13日 | 1,443,000ウォン | −10.09% | — |
| サムスン電子(005930.KS) | 10月13日 | 232,000ウォン | −7.39% | — |
| Micron(MU) | 10月12日 | 989.04ドル | −3.88% | 2,398万株 |
| KOSPI(韓国の指数) | 10月13日 | 6,035.35 | −5.46% | — |
| 日経平均株価 | 10月13日 | 67,777.52円 | −1.82% | — |
キオクシアの出来高は、前の営業日(10月9日)の約3,512万株の約1.8倍に膨らみました。日経平均の下げ(1.82%)と比べても、メモリの会社の下げが際立っています。
Micron(MU)の10月13日の終値は953.19ドルで、前の営業日より3.62%安く引けました(10月14日 6時追記)。
何が発表されたか:CXMTの「4F²」DRAM
中国のメモリメーカーCXMT(長鑫存儲)の曹堪宇総裁は、第4回 集積チップ・チップレット大会で講演し、「4F²」と呼ぶ構造などの新しい技術を取り入れたサーバー向けのDDR5メモリ(DDR5 RDIMM)を、年末に出す見込みだと発表したと、中国のIT之家が10月10日に報じました。講演では、製品の仕様や具体的な発売時期は明らかにされていません。
用語メモ:4F²(よんエフじじょう)
DRAMの記憶の単位(セル)1つが占める面積の表し方です。Fは最小の線幅で、今の主流は6F²。4F²にするとセルの面積は計算上3分の2になり、同じ面積に多くのセルを詰められます。トランジスタを縦に立てる新しい作り方が必要です。
同じ報道によると、CXMTは4F²に関する特許ファミリーが300件を超えるとしています。CXMTは9月20日に、第5世代の技術プラットフォームの量産も公式に発表していました。
あわせて読みたい
CXMTとは?中国最大のDRAMメーカーのHBM量産挑戦と3強寡占への影響を図解
中国CXMTのHBM挑戦、3強の寡占はいつまで続くか
市場で挙げられている理由
| 挙げられている理由 |
中身 |
慎重な見方 |
| CXMTの技術の進み | 中国勢が新しい構造のDRAMで先に量産に近づけば、供給が増え、今の高い値段と利益が続きにくくなるという見方 | 仕様も時期も未公表で、量産の歩留まりや性能は確かめられていない |
| BroadcomのCEOの発言 | Hock Tan氏が10月12日、シンガポールの会合で「多くの投資家は何に投資しているか分かっていない」「カジノにいるようだ」と述べ、資金が最大の制約になりうると話したと報じられた | 投資家の期待の持ち方に向けた発言。同じ場で、計算の需要はまだ供給を上回り、2029年ごろまで続く可能性があるとも述べたと報じられた。Broadcom自身のAI向けの売上も伸び続けている(次の段落) |
足元の業績は強いままです。Samsungは10月8日、7〜9月期の連結の営業利益が約107.4兆ウォン(前年同期は12.17兆ウォン)になる見込みと発表しました。BroadcomもAI向けの半導体の売上高が5〜7月期に167億ドルと前年の3.2倍になっています。今回の下げは「今の業績」ではなく、「この先の値段と需要」をめぐる見方の変化だと読めます。
AIインフラにとっての意味
AIのサーバーでは、GPUのすぐ隣に積むHBMと、CPUの周りに挿すDDR5の両方が大量に使われます。HBMはDRAMのチップを積み重ねて作るので、DRAMを作る力(工場の能力)の取り合いが起きています。今のメモリの高い値段と利益は、この取り合いが支えています。
CXMTが今回の対象にしたのは、HBMではなくサーバー向けのDDR5です。それでも、DRAMを作る力を持つ会社が増えれば、取り合いがゆるむ可能性があります。キオクシアはDRAMではなくNANDフラッシュの会社ですが、同じ「メモリ」として一緒に売られた形です。
あわせて読みたい
【図解】DRAMとHBMの違いとは?速さ・構造・価格を5つの視点で比較
同じDRAMなのに、HBMは何が違うのか
あわせて読みたい
メモリ・スーパーサイクルとは?2026年のDRAM価格高騰とメモリサイクルの仕組みを図解
HBMがDRAM全体の値段を押し上げる仕組み
関連する会社
| 会社 |
作っているメモリ |
今回の話との関係 |
| SKハイニックス(000660.KS) | DRAM・HBM・NAND | HBMの大手。DRAMの供給の見方が変わると影響を受ける |
| サムスン電子(005930.KS) | DRAM・HBM・NAND | DRAMの大手。10月8日に7〜9月期の業績見通しを発表 |
| Micron(MU) | DRAM・HBM・NAND | 米国のメモリ大手 |
| キオクシアHD(285A) | NANDフラッシュ | DRAMは作っていない。メモリ全体の見方の変化で動いた |
| CXMT(長鑫存儲) | DRAM | 中国のDRAM大手。今回の発表の当事者 |
あわせて読みたい
HBMシェアの推移|SK hynix・Samsung・Micronの会社別シェアを四半期ごとに更新【定点観測】
HBMの3社のシェアの推移
今後の見どころ
| 日付 |
予定 |
見るところ |
| 10月30日(金)18:45 | キオクシア 2027年3月期 第2四半期の決算発表(予定) | NANDの値段とデータセンター向けSSDの需要の見方 |
| 年末(時期は未公表) | CXMTの4F²のDDR5 RDIMM | 実際の製品の仕様と、出荷が始まるか |
SKハイニックス・サムスン電子・Micronの次の決算の日付は、各社の発表を確かめてから追記します。
ほかの会社の決算日と、速報を出す予定は、決算カレンダーにまとめています。
あわせて読みたい
AIインフラ・半導体の決算カレンダー【2026年10月〜2027年1月】TSMC・ASML・NVIDIA・東京エレクトロンなどの決算日と速報の予定
TSMC・ASML・NVIDIA・東京エレクトロンなどの決算日と、速報を出す予定
追記・訂正
2026年10月14日 6時追記:Micron(MU)の10月13日の終値(953.19ドル、前の営業日比 −3.62%)を「何が起きたか」の表の下に足しました。
2026年10月14日 追記:HBMの3社のシェアの推移を記録したページへのカードを、「関連する会社」の表の下に足しました。
関連する速報(10月14日):
あわせて読みたい
アプライドマテリアルズ株が6.7%安、なぜ?投資家説明会で装置市場の見通しを示さず|ASML決算の前に装置株が下落
アプライドマテリアルズ株が下げた日、何が発表されたか
あわせて読みたい
ASMLの決算は10月14日、何を見る?7〜9月期の会社予想は売上110億〜120億ユーロ|前日は製造装置株が下落
ASMLの決算で何を見る?会社予想と3つのポイント
よくある質問
Q. キオクシア株が10月13日に下げたのはなぜですか?
A. 市場では中国CXMTの新型DRAMの発表と、BroadcomのCEOの発言が理由に挙げられています。どれが効いたかは決められません。
Q. CXMTの4F²のDRAMとは何ですか?
A. 記憶の単位1つの面積を今の主流の6F²より小さくした構造のDRAMです。CXMTは年末にサーバー向けのDDR5で出す見込みとしています。
Q. キオクシアはDRAMを作っていますか?
A. 作っていません。キオクシアはNANDフラッシュの会社で、今回はメモリの会社として一緒に売られた形です。
免責事項:本記事は、技術と産業の構造を理解するための情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。社名・証券コードや、株価・業績などの数値は、記事中に示した時点の公開情報にもとづきます。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)にもとづいて行ってください。
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめての方にもわかるように図解で書いています。
メモリとHBMをもっと深く
つまずきやすい「違い」を解決
あわせて知りたい、隣のテーマ
コメント