SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)とは、米国の取引所に上場する半導体の会社30社でつくる株価指数で、Nasdaq(ナスダック)が算出しています。日経半導体株指数は、東京証券取引所に上場する半導体関連の30銘柄でつくる指数で、日本経済新聞社が算出しています。
どちらも「半導体株の指数」ですが、中身はかなり違います。SOXはチップを設計して売る会社が中心。日経半導体株指数は、チップを作るための装置と材料の会社が中心です。
この記事を書いたのは、検索で「sox指数」と「日経半導体株指数」がほぼ同じくらい調べられていたからです。値動きのチャートは証券会社のサイトで見られます。この記事は中身を見ます。2つの算出元が公開している方法書を読み比べ、30銘柄を半導体の工程で並べ直しました。
先に表で見たい方は 違いの比較表 /SOXの30社 /日経の30銘柄 /比重の上限
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SOX指数の重心(半導体の工程)
設計 → 設計と製造 → 受託製造 → メモリ → 前工程の装置 → 後工程の装置 → 材料・部材
日経半導体株指数の重心(半導体の工程)
設計 → 設計と製造 → 受託製造 → メモリ → 前工程の装置 → 後工程の装置 → 材料・部材
一言でいうと: SOXは「チップを設計して売る側」、日経半導体株指数は「作る道具と材料を納める側」が中心
SOX指数と日経半導体株指数の違い
SOX指数と日経半導体株指数の違いは、上場している市場、銘柄の選び方、1銘柄の比重の上限、見直しの回数の4つです。どちらも30銘柄の時価総額の指数ですが、決まりが違うので、中に入る会社の顔ぶれも変わります。
比べる点
SOX指数
日経半導体株指数
正式な名前 PHLX Semiconductor Sector Index 日経半導体株指数(Nikkei Semiconductor Stock Index)
算出する会社 Nasdaq 日本経済新聞社(算出・配信は S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスに委託)
対象 米国の取引所に上場する半導体の会社(ADRを含む) 東京証券取引所に上場する半導体関連の銘柄
銘柄の数 30 原則30
業種の決め方 ICB(国際的な業種分類)の「半導体」と「製造装置」 日経NEEDSの業種分類の7つ(電子材料・製造装置・半導体など)
比重の決め方 時価総額に上限をかける 時価総額(基準日の発行済み株式数)に上限をかける
1銘柄の上限 1位12%・2位10%・3位8%・ほか4% 15%(主力が半導体関連でない銘柄は5%)
銘柄の入れ替え 年1回(9月) 年1回(11月末)
比重の調整 3か月ごと(3・6・9・12月) 入れ替えと同じ年1回
始まり 1993年12月1日 2011年11月30日=1,000(公表は2024年3月25日から)
中身の重心(筆者の分類) 設計の会社11社・設計と製造の会社7社 材料・部材13銘柄・装置10銘柄
いちばん大きいのは「対象」の行です。SOXの条件は米国の取引所への上場なので、東京にだけ上場している東京エレクトロンやアドバンテストは入りません。逆に日経半導体株指数には、NVIDIA(エヌビディア)もTSMCも入りません。
SOX指数とは
SOX指数とは、米国の取引所に上場する半導体の会社のうち、時価総額の大きい30社でつくる株価指数です。方法書の1文目そのままです。日本では「フィラデルフィア半導体株指数」の呼び名で報じられることが多い指数です。
名前のPHLXは、フィラデルフィア証券取引所のことです。この取引所はNasdaqが2008年7月に買収を終え、名前もNASDAQ OMX PHLXに変わりました。算出も方法書もNasdaqの担当です。始まりは1993年12月1日。
条件
方法書の決まり
上場先 米国の取引所(Nasdaqが決めた取引所の一覧)
株の種類 普通株のほか、ADR(外国の会社の株を米国で売買する証書)も入る
業種 ICBの「半導体」か「製造装置」の小分類
大きさ 時価総額1億ドル以上
売買の量 基準日までの6か月、毎月150万株以上
上場からの期間 基準日の3か月前から取引されていること
そのほか 米国でオプション取引ができること
選び方は単純です。条件を満たした会社から、時価総額の大きい順に30社を取ります。方法書の「Constituent Weighting」の節を読むと、比重には上限があり、1位12%・2位10%・3位8%・4位以下4%です。この上限は2024年4月22日からで、それまでは「どの銘柄も8%まで」でした。改定の履歴の付録に、前と後の文が並んでいます。
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日経半導体株指数とは
日経半導体株指数とは、東京証券取引所に上場する主要な半導体関連銘柄30でつくる、時価総額ウエート方式の指数です。日本経済新聞社が2024年3月25日に公表を始めました。まだ新しい指数です。2011年11月30日を1,000として、さかのぼって計算した値もあります。
半導体関連かどうかは、日経NEEDSの業種分類で決めます。算出要領に並ぶのは次の7つです。
日経NEEDSの業種分類(小分類)
当てはまる会社の例(2026年10月の構成銘柄から)
電子材料 東京応化工業・住友ベークライトなど
半導体・液晶製造装置 東京エレクトロン・SCREENホールディングスなど
半導体(集積回路・半導体素子) ルネサスエレクトロニクス・ロームなど
シリコン・シリコンウエハー SUMCO
フォトマスク HOYA(マスクの材料)
イメージセンサー ソニーグループ
半導体・電子部品卸 マクニカホールディングス・加賀電子
主力の事業がこの7つに入らなくても、半導体関連の売上が10%以上あり、その製品のシェアが高い会社は入れることがあります。大きさの条件もあります。時価総額200億円以上、1日平均の売買代金5,000万円以上。毎年10月の最終営業日の時価総額で並べ、11月の最終営業日から入れ替えます。
注意: 会社の例の列は、筆者が構成銘柄一覧と業種の名前を見比べて置いたものです。各社にどの業種分類が付いているかは、日経の公開資料に載っていません。
日経平均株価とは別の指数です。日経平均は225銘柄の株価を使う「価格平均指数」で、株価の高い銘柄の影響が大きくなります。こちらは時価総額で比重を決める方式。投資信託の名前で見かける「日経半導体株インデックス」は、この指数に連動をめざす商品の名前に使われている言い方です。
SOX指数の構成銘柄を工程で並べる
SOX指数の構成銘柄は、2026年10月21日の時点で次の30社です。Nasdaqの一覧はティッカー(銘柄の記号)のアルファベット順なので、筆者が半導体の工程のどこにいる会社かで並べ直しました。
工程(筆者の分類)
会社
主に何をしているか
設計(ファブレス・IP)11社 NVIDIA・Broadcom(ブロードコム)・AMD・Qualcomm(クアルコム)・Marvell(マーベル)・Arm(アーム)・Astera Labs(アステラ・ラボ)・Credo(クレド)・Lattice(ラティス)・SiTime(サイタイム)・Monolithic Power Systems(モノリシック・パワー・システムズ) GPU・CPU・通信用のチップ・特注のAIチップ・FPGA・電源IC・タイミング部品を設計して売る。Armは設計図を貸す
設計と製造(IDM)7社 Intel(インテル)・Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)・Analog Devices(アナログ・デバイセズ)・Microchip(マイクロチップ)・NXP・onsemi(オンセミ)・MACOM(メーコム) 自社の工場を持ち、CPU・アナログ・マイコン・車載・パワー・通信用のチップを作る。Intelは受託製造も始めた
受託製造(ファウンドリー)3社 TSMC・GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ)・Tower Semiconductor(タワー) ほかの会社が設計したチップを作る
メモリ1社 Micron(マイクロン) DRAM・HBM・NANDを作る
前工程の装置4社 ASML・Applied Materials(アプライド マテリアルズ)・Lam Research(ラムリサーチ)・KLA 露光・成膜・エッチング・検査の装置
後工程・テストの装置1社 Teradyne(テラダイン) できたチップを試験するテスター
材料・部材3社 Entegris(インテグリス)・Qnity Electronics・Coherent(コヒレント) 薬液・ガスのフィルターと容器、電子材料、レーザーと光部品・SiC基板
Qnity Electronicsは、デュポンが2025年11月に電子材料の事業を分けてつくった会社です。TSMC・ASML・ArmはADRや米国の上場株として入っています。
2026年7月に米国のNasdaqにADRを上場したSK hynix(SKハイニックス)は、10月21日の一覧には入っていません。理由は書かれていない。方法書には「基準日(7月の最終取引日)の3か月前から取引されていること」という条件があるので、2026年の入れ替えには間に合わなかった、と筆者は読んでいます。Nasdaqがそう説明したわけではありません。
日経半導体株指数の構成銘柄を工程で並べる
日経半導体株指数の構成銘柄は、2026年10月22日の一覧で次の30銘柄です。日経の一覧は業種(化学・電気機器など)ごとなので、こちらも同じ物差しで工程に並べ直しました。
工程(筆者の分類)
会社(証券コード)
主に何をしているか
設計(ファブレス)1 ソシオネクスト(6526) 特注のSoCを設計し、製造は外に出す
設計と製造(IDM)3 ルネサスエレクトロニクス(6723)・ローム(6963)・ソニーグループ(6758) マイコン・アナログ、パワー半導体、イメージセンサー
メモリ1 キオクシアホールディングス(285A) NANDフラッシュ
前工程の装置6 東京エレクトロン(8035)・KOKUSAI ELECTRIC(6525)・SCREENホールディングス(7735)・アルバック(6728)・レーザーテック(6920)・ローツェ(6323) 成膜・エッチング・洗浄・真空の装置、マスクの検査、ウエハーの搬送
後工程・テストの装置4 アドバンテスト(6857)・ディスコ(6146)・東京精密(7729)・TOWA(6315) テスター、切断・研削、プローバー・ダイサー、樹脂の封止
材料・部材13 信越化学工業(4063)・SUMCO(3436)・トクヤマ(4043)・東京応化工業(4186)・日産化学(4021)・JX金属(5016)・HOYA(7741)・住友ベークライト(4203)・日本化薬(4272)・ADEKA(4401)・太陽ホールディングス(4626)・デクセリアルズ(4980)・フェローテック(6890) ウエハー・多結晶シリコン・レジスト・スパッタリングのターゲット・マスクの材料・封止材・成膜の材料・基板の絶縁膜・接続材料・装置の部材
商社2 マクニカホールディングス(3132)・加賀電子(8154) 半導体・電子部品の販売
2025年11月の定期見直しでは、キオクシアホールディングスとJX金属が新しく入りました。
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東京エレクトロンは何の会社か。前工程の装置の中での位置
工程で並べると見える違い
2つの一覧を同じ8つの工程で数え直しました。重心の違いがはっきりします。SOXは設計の会社が11社、設計と製造の会社が7社で、合わせて30社の6割です。日経半導体株指数は材料・部材が13銘柄、装置が10銘柄で、合わせて8割近くになります。
表にすると、こうなります。SOXは「半導体を設計して売る側」と「それを受託して作る側」の指数です。日経半導体株指数は「半導体を作るための装置と材料を売る側」の指数。TSMCやMicronやIntelが工場に投資すると、その装置や材料を納める側に日本の会社も並びます。チップを売る側と、作る道具を納める側が、それぞれの国の指数に分かれて入っている形です。
分け方には迷った会社があります。Intelは自社の製品を作るIDMですが、受託製造も始めています。この記事はIDMに入れました。ディスコの研削はウエハーを薄くする前工程の作業にも使われます。売上の中心がチップを切り出す工程なので、後工程に入れています。Coherentは光部品とSiC基板の両方を持つので、材料・部材にしました。
比重の上限の違い
1銘柄の比重の上限は、SOXが時価総額1位12%・2位10%・3位8%・4位以下4%、日経半導体株指数が15%です。ただし日経は、主力の事業が半導体関連でない銘柄を5%までに抑えます。
違いが出るのは、上限をかけ直す回数です。SOXは3か月ごとに上限へ戻します。日経半導体株指数は年1回、11月末の定期見直しのときだけ。算出要領を読む限り、その間に株価が大きく上がった銘柄は、15%を超えたまま次の見直しを待つことになります。
SOX指数
日経半導体株指数
上位の銘柄の比重 12%・10%・8%で止まる 15%で止まる
上限をかけ直す回数 年4回 年1回
上位以外の銘柄 4%まで 上限は15%(主力が半導体関連でない銘柄は5%)
各銘柄の比重が今いくつかは、この記事には書きません。比重は株価で毎日変わります。日経は構成銘柄の比重の一覧とファクトシートを公開していますが、Nasdaqの公開画面では比重の数字が出てきませんでした。確かめたいときは、それぞれの算出元の最新の資料を見てください。
見直しの時期の違い
銘柄の入れ替えは、SOXが毎年9月、日経半導体株指数が毎年11月末です。SOXはこれとは別に、3・6・9・12月に比重を調整します。
基準日
反映
SOXの入れ替え 7月の最終取引日 9月の第3金曜日の次の取引日の取引開始
SOXの比重の調整 2・5・8・11月の最終取引日 3・6・9・12月の第3金曜日の次の取引日の取引開始
日経の入れ替えと比重の調整 10月の最終営業日 11月の最終営業日の算出から
2026年の暦に当てはめてみます。日経半導体株指数の定期見直しは10月30日が基準日で、11月30日の算出から入れ替わります。SOXの次の比重の調整は、11月30日が基準日で、12月21日の取引開始から。入れ替える銘柄は算出元が前もって発表するので、この記事の一覧はその発表で変わることがあります。
SOX指数と日経半導体株指数は何を映すか
SOX指数は、米国に上場する半導体の会社、とくにチップを設計して売る会社の株価をまとめて映します。ここが出発点。日経半導体株指数は、東京に上場する装置と材料の会社の株価を多く映します。同じ「半導体株」でも、見ている会社の工程が違います。
もう1つの違いは、計算している時間です。SOXは米国の取引時間に1秒ごとの配信。日経半導体株指数は東証の取引時間に15秒ごとに計算されます。取引の時間が重ならないので、東京の取引が始まる時点では、前の晩のSOXの終値がすでに出ている、という順番になります。
NVIDIAのGPUの売れ行き、TSMCの工場への投資、メモリの値段。材料はいろいろです。それが工程のどこの話かを見れば、どちらの指数の中身により近い話かがわかります。決算の数字を読むときの見方は、受注残や利益率の読み方の記事にまとめました。
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よくある誤解
誤解1:SOX指数はフィラデルフィアの取引所が算出している
名前のPHLXはフィラデルフィア証券取引所のことですが、取引所は2008年にNasdaqの傘下に入りました。いまの方法書はNasdaqが出しています。
誤解2:日経半導体株指数は日経平均の半導体版
日経平均は225銘柄の株価を使う価格平均指数で、日経半導体株指数は時価総額で比重を決める別の指数です。日経平均の構成銘柄から選んでいるわけでもありません。
誤解3:東京エレクトロンもSOXに入っている
SOXの条件は米国の取引所への上場です。東京エレクトロンやアドバンテストは、2026年10月21日の一覧に入っていません。
まとめ
SOX指数は米国に上場する半導体の会社30社、日経半導体株指数は東証に上場する半導体関連の30銘柄の指数
工程で並べると、SOXは設計と製造の会社が中心、日経は装置と材料の会社が中心
1銘柄の上限はSOXが12%・10%・8%・4%で年4回、日経が15%で年1回かけ直す
入れ替えはSOXが9月、日経が11月末。銘柄の一覧は算出元の発表で確かめる
免責事項: 本記事はSOX指数と日経半導体株指数の決まりと構成銘柄の構造を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。業績などの数値は2026年10月22日時点の公開情報に基づき、将来の成果を保証しません。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)に基づいて行ってください。
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