半導体の後工程の材料とは、ウェーハをチップに切り分けて部品に仕上げるあいだに使う材料です。ウェーハを守るテープ、チップを貼る接着フィルム、電気をつなぐワイヤとバンプ、すき間を埋めるアンダーフィル、チップを包む封止材、土台のパッケージ基板が、工程の順に使われます。
前工程のウェーハやレジストほど話題になりません。それでも、その多くで日本の会社が製品を出しています。HBM(広帯域メモリ)や CoWoS(コワース)のような先端パッケージでは、反りと熱を抑える材料の役目が重くなりました。工程ごとの早見表から順に見ていきます。
先に見たい節 工程ごとの早見表 /アンダーフィルとは /封止材 /先端パッケージで求められること
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前工程(ウェーハに回路を作る)
基板
成膜
露光
エッチング
ドーピング
CMP
洗浄
配線
計測
後工程(チップに切り分けて仕上げる)
ウェーハテスト
バックグラインド
ダイシング
ボンディング
封止
最終テスト
先端パッケージ
後工程の材料は、削る・切るときにウェーハを守るテープから、チップを貼る・つなぐ材料、包む封止材、土台の基板まで、工程ごとに分かれています。
半導体の後工程の材料とは
先に結論
半導体の後工程の材料とは、ウェーハをチップに分けて部品に仕上げるあいだに使う材料 です。工程の順に、①削る・切るときにウェーハを守るテープ 、②チップを貼る接着材(接着フィルム・ペースト) 、③電気をつなぐボンディングワイヤ・バンプ と、そのすき間を埋めるアンダーフィル 、④チップを包む封止材 、⑤チップを載せる土台のパッケージ基板・リードフレーム の5つに分けると整理できます。
前工程の材料が「回路を作るため」の材料なのに対し、後工程の材料は「チップを守り、つなぎ、長く使えるようにする」ための材料です。チップが薄くなり、積み重ねたり大きなパッケージに並べたりする先端パッケージでは、反り・熱・接合の信頼性に効く後工程の材料の重みが増しています。
用語メモ:パッケージ
チップを包み、基板につなげられる形にした部品。後工程の材料の多くは、このパッケージを作るために使われます。
後工程の材料の早見表
後工程の流れに沿って、使う材料を並べました。左から順に工程が進みます。
工程
材料
役割
作る日本企業の例
バックグラインド バックグラインドテープ 削るあいだ、ウェーハの回路の面を守り、固定する リンテック
ダイシング ダイシングテープ 切るあいだ、チップがばらばらに飛ばないよう支える リンテック
ダイボンディング 接着フィルム(DAF)・ペースト チップを基板や下のチップに貼り付ける レゾナック・リンテック
ワイヤーボンディング ボンディングワイヤ(金・銅・銀) チップの電極と外の端子を細い線でつなぐ 田中電子工業(田中貴金属グループ)
フリップチップ バンプ(はんだ・銅ピラー)とアンダーフィル 面全体でつなぎ、すき間を樹脂で埋めて接合を守る ナミックス
封止 封止材(エポキシ樹脂+シリカ) チップを包み、熱・湿気・衝撃から守る 住友ベークライト・デンカ(シリカ)
土台 パッケージ基板(絶縁フィルム・ガラスクロス)・リードフレーム チップを載せ、細かい配線を外の配線へ広げる 味の素(絶縁フィルム)・日東紡(ガラスクロス)
注意: 表の会社は、各社の製品紹介で製品を確かめられた例です。ほかにも多くの会社があり、シェアや順位を示すものではありません(2026年10月時点)。
削る・切るときにウェーハを守る:テープ
後工程の最初の材料は、粘着テープです。ウェーハの裏を削るとき(バックグラインド)は、回路のある表の面にテープを貼って、削りくずや水から守り、ウェーハを固定します。切るとき(ダイシング)は、ウェーハの裏にテープを貼り、リングの枠に張って、切り分けたチップがばらばらにならないよう支えます。
ダイシングテープの多くは、紫外線(UV)を当てると粘着力が弱まる作りになっています。切るときはしっかり貼りつき、切ったあとはチップを取り上げやすくするためです。リンテックの「Adwill」シリーズには、UV で硬化するダイシングテープ、バックグラインドテープ、ダイシングとダイボンディングを1枚で行うテープなどがあります。
バックグラインドテープ
表の回路の面に貼る。削るあいだの保護と固定。
ダイシングテープ
裏に貼ってリングに張る。切ったチップを支え、UV で外しやすく。
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接着材・ワイヤ・バンプ・アンダーフィル
貼る:接着フィルム(DAF)とペースト
切り分けたチップは、基板やリードフレームに貼り付けます。昔からの接着剤のペーストに加え、メモリのように薄いチップを何枚も積む製品では、厚みのそろった接着フィルム(DAF:ダイアタッチフィルム)が使われます。レゾナックは、ダイシングテープとダイボンディング用のフィルムを1枚にした製品を、3D NAND や DRAM からリードフレーム用まで出しています。
つなぐ:ボンディングワイヤとバンプ
ワイヤーボンディングでは、金・銅・銀などの髪の毛より細い線を使います。田中貴金属グループの田中電子工業は、金のほか銅・銀のボンディングワイヤを手がけています。フリップチップでは、チップの面に並べた小さな突起(バンプ)で基板とつなぎます。バンプには、はんだの玉や、銅の柱(銅ピラー)の先にはんだを載せたものが使われます。
アンダーフィルとは:すき間を埋めて接合を守る
アンダーフィルとは、フリップチップでチップと基板のすき間を埋める樹脂です。樹脂を重ねた基板は、シリコンのチップより温まったときに大きく伸びるため、そのままではバンプに力が集まって割れることがあります。すき間を樹脂で固めて、力を面全体に分けるのが役目です。ナミックスは「フリップチップ用アンダーフィル剤」を製品にしています。
材料
使う工程
ポイント
接着フィルム(DAF) ダイボンディング 厚みがそろい、薄いチップを積む製品に向く
ボンディングワイヤ ワイヤーボンディング 金から、銅・銀へと使い分けが広がった
バンプ フリップチップ はんだの玉や銅ピラー。端子の多いチップを面でつなぐ
アンダーフィル フリップチップのあと 伸び方の差による力を分け、接合を守る
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チップを包む:封止材
つないだチップを包むのが封止材です。中身は、エポキシ樹脂に、シリカ(石英を溶かして丸くした粉)をたくさん混ぜたものです。樹脂だけでは温まったときに大きく伸びてしまうので、伸びにくいシリカを混ぜて、チップや基板との伸び方の差を小さくしています。
住友ベークライトの「スミコン EME」は、半導体封止用のエポキシ樹脂成形材料で、BGA・CSP からウェーハやパネルの単位で包むパッケージ、パワーモジュールまで幅広く使われます。封止材に混ぜるシリカでは、デンカが球状の溶融シリカを出しています。
各社の製品ページを工程の順に読み比べて、筆者が気づいたことがあります。材料の会社は、製品を「困りごとの名前」で分けている。リンテックはバックグラインド用・ダイシング用・ダイシングとダイボンディングを兼ねるテープと工程ごとにテープを並べ、住友ベークライトの封止材は「低反り」「狭部充填性」「高熱伝導性」のように、パッケージで起きる問題の名前でシリーズを分けていました。この記事の早見表を工程の順にしたのは、そのためです。
たとえるなら
封止材は、コンクリートに似ています。セメント(樹脂)だけでは割れやすく伸び縮みも大きいので、砂利(シリカ)を混ぜて、丈夫で寸法の変わりにくい材料にします。
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チップを載せる土台:パッケージ基板とリードフレーム
チップを載せる土台には、大きく2つあります。1つは、薄い金属の板を打ち抜いたリードフレームで、ワイヤーボンディングの多くの製品で使われます。もう1つは、細かい配線を何層も重ねたパッケージ基板で、端子の多い CPU や GPU のフリップチップに欠かせません。
パッケージ基板は、それ自体がたくさんの材料でできています。配線の層と層の間を絶縁するフィルムには、味の素の「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」が CPU などの土台の基板に使われています。基板の芯には、ガラスの繊維を布にしたガラスクロスが入り、日東紡は、温まっても伸びにくい T ガラスがAI半導体などのパッケージ基板に採用されていると説明しています。
リードフレーム
金属の板を打ち抜いた土台。ワイヤーボンディングの製品に多い。
パッケージ基板
配線を何層も重ねた土台。絶縁フィルム・ガラスクロス・銅でできる。
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先端パッケージで材料に求められること
HBM のようにチップを何枚も積む、CoWoS のように大きなパッケージに GPU とメモリを並べる、といった先端パッケージでは、後工程の材料にこれまでより厳しい条件がかかります。
求められること
なぜか
関わる材料
反りを抑える パッケージが大きく、チップが薄くなり、伸び方の差で反りやすい 封止材・アンダーフィル・基板(ガラスクロス)
熱に耐える・逃がす AIのチップは電力が大きく、熱くなる 封止材・接着材・基板
すき間を確実に埋める バンプが細かく、すき間が狭い アンダーフィル・封止材
汚さない 積む・直接つなぐ工程では、わずかな残りかすが不良になる テープ・接着材
このため、後工程の材料は「安い消耗品」から、パッケージの性能と歩留まりを左右する材料へと位置づけが変わりつつあります。
品質保証の仕事では、不良の原因を「どの材料と、どの材料の境目か」で切り分ける考え方がよく使われます。剥がれなら接着材やテープと相手の面の境目、割れなら温まったときの伸び方の差。後工程の材料を工程ごとに押さえておくと、反り・剥がれ・接合の割れといった不良の話を、材料の名前で追えるようになります。
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後工程の材料を知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ: 材料・品質・購買のどの担当でも、自分の扱う材料が後工程のどの工程で、何を守るために使われるかを押さえると、反りや剥がれ、接合の割れといった不良がどこから来るのかを話しやすくなります。
投資家の方へ: 後工程の材料の会社のニュースは、どの工程の、どの材料の話かで意味が変わります。先端パッケージの投資の話が出たら、封止材・アンダーフィル・基板の材料が一緒に動くことが多い点を押さえておくと、位置づけがわかりやすくなります。特定の銘柄の推奨ではなく、ニュースの読み方の話です。
学生・就活中の方へ: 化学・材料系の学生にとって、後工程の材料は、樹脂・粘着・金属・ガラスの知識がそのまま生きる分野です。日本の会社が多い分野でもあり、材料メーカーの研究・開発職の入口になります。
よくある誤解
誤解1:後工程の材料は封止材だけ
封止材のほかに、テープ・接着材・ワイヤ・バンプ・アンダーフィル・基板と、工程ごとに専用の材料があります。
誤解2:材料は性能に関係ない消耗品
先端パッケージでは、反りや熱、接合の信頼性を材料が左右し、歩留まりにも直結します。
誤解3:パッケージ基板は1つの部品
基板は、絶縁フィルム・ガラスクロス・銅などの材料を何層も重ねて作る、材料のかたまりです。
まとめ
後工程の材料は、ウェーハをチップに分けて部品に仕上げるあいだに使う材料
テープ(守る)・接着材(貼る)・ワイヤとバンプ(つなぐ)・アンダーフィルと封止材(守る・包む)・基板(土台)に分けて整理できる
多くの材料で日本の会社が製品を出している(リンテック・レゾナック・田中電子工業・ナミックス・住友ベークライト・味の素・日東紡など)
先端パッケージでは、反り・熱・すき間・汚れへの要求が厳しくなった
後工程の材料は、パッケージの性能と歩留まりを左右する材料になりつつある
よくある質問
Q. 半導体の後工程の材料には何がありますか?
A. ウェーハを守るテープ、チップを貼る接着材、つなぐワイヤやバンプ、すき間を埋めるアンダーフィル、包む封止材、土台の基板などです。
Q. アンダーフィルとは何ですか?
A. フリップチップでチップと基板のすき間を埋める樹脂です。伸び方の差でバンプにかかる力を分け、接合が割れるのを防ぎます。
Q. 封止材は何でできていますか?
A. エポキシ樹脂に、シリカの粉をたくさん混ぜた材料が中心です。シリカで伸び縮みを小さくし、チップを守ります。
Q. 後工程の材料で日本企業は強いのですか?
A. テープ・接着フィルム・ワイヤ・封止材・基板の材料など、多くの分野で日本の会社が製品を出しています。順位は資料で確かめてください。
免責事項: 本記事は半導体の後工程の材料と関連する企業の構造を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。業績などの数値は2026年10月時点の公開情報に基づき、将来の成果を保証しません。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)に基づいて行ってください。
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