3行でわかる要点
何が起きたか:インテル株価が10月30日(米国)に1日で28.6%下落し、終値は65.76ドルになりました。半導体株の指数(SOX)も7.2%下がり、AMDやクアルコムも約1割下げました。
下落の理由:前日に出た7〜9月期の決算そのものは好調でした。下落の引き金は、10〜12月期の会社予想(1株利益0.25ドル)が市場の予想(0.4ドル台前半と報じられた)を大きく下回ったことです。
AI需要は?:インテルのデータセンターとAI向けの売上は前年同期比78%増で、会社は「需要が供給を大きく上回る」と説明しています。弱いのはパソコン向けと工場の利益率で、AI需要が崩れた数字は今回の決算には出ていません。
情報の時点:2026年10月31日 11時(日本時間)。株価は10月30日(米国)の終値、決算は各社の発表文
この記事は、株価の急落を見て「AIバブルが終わったのでは」と不安になった人に向けて書きました。会社の発表した数字を図にして、何が起きて、何がまだ起きていないのかを分けて見ていきます。
この記事の位置:AIインフラ速報解説 > CPU・ファウンドリ > インテルの7〜9月期の決算と株価の急落
関わる技術
CPU(Xeon)
ファウンドリ
先端パッケージ(EMIB)
メモリの値上がり
クラウドの設備投資
何が起きた:インテル株が1日で28.6%安
インテルの株価は10月29日の終値92.07ドルから、10月30日は65.76ドルへ28.6%下がりました。出来高は約4.5億株で、ふだんの数倍にふくらんでいます。
下げはインテルだけでは終わりませんでした。半導体の会社をまとめた指数(SOX)が7.2%、Nasdaq総合指数も2.9%下げています。同じ日の東京市場でも、東京エレクトロンが5.2%安、アドバンテストが5.9%安でした(インテルの発表は日本時間の朝5時で、東京の取引の前)。同じ日の夜に決算を出したキオクシアも、夜間取引で12%下げました。理由はキオクシア株価が夜間12%下落した理由は?で図にしています。
| 銘柄・指数 |
10月29日の終値 |
10月30日の終値 |
前日比 |
| インテル | 92.07ドル | 65.76ドル | −28.58% |
| クアルコム | 185.41ドル | 164.79ドル | −11.12% |
| AMD | 566.42ドル | 504.80ドル | −10.88% |
| NVIDIA | 213.66ドル | 204.64ドル | −4.22% |
| SOX指数(半導体) | 11,518.20 | 10,688.80 | −7.20% |
| Nasdaq総合指数 | 26,184.72 | 25,437.00 | −2.86% |
下の図のとおり、下げ幅はインテルが飛び抜けています。ほかの半導体では、クアルコム・AMD・Dell・Arm が約1割、NVIDIA・TSMC・Micron・Broadcom が4〜6%の下げでした。クラウドの大手はどれも1%台の下げにとどまっています。
なぜ下がった?決算は好調、弱かったのは「次の3か月」
下がった理由として市場で挙がっているのは、7〜9月期の結果ではなく、10〜12月期の会社予想の弱さです。結果は市場の予想を上回っていました。
| 項目 |
2026年7〜9月期(実績) |
10〜12月期(会社予想) |
変化 |
| 売上高 | 165.1億ドル(前年同期比 +21%) | 150億〜160億ドル | 真ん中で約 −6% |
| 売上総利益率(特別な項目を除く) | 44.1% | 38.0% | −6.1ポイント |
| 1株利益(特別な項目を除く) | 0.52ドル(市場の予想は0.40ドル前後と報道) | 0.25ドル(市場の予想は0.4ドル台前半と報道) | 約半分 |
決算の数字は「過去の3か月の成績表」で、会社予想は「これからの3か月の見込み」です。株価は先の見込みに強く反応します。成績表が良くても、次の見込みが半分になれば、持っている人の多くが売りに回ります。
筆者も今回、英語の決算発表と決算説明会の書き起こしを読み比べました。発表文の表だけを見ると好決算ですが、説明会では10〜12月期の弱さの理由が次々に語られていて、市場が見ていたのはこちらだと分かります。
会社が挙げた4つの理由
決算説明会で会社が説明した理由を、つながりで並べると下の図になります(数字は会社の見方)。
パソコン市場の縮小:2026年のパソコンの台数は約12%減、2027年も約10%減を前提にしている。財務責任者は「パソコンの減速は少なくとも来年前半まで続く」と述べた
メモリの値上がり:AI向けにメモリが取り合いになり、パソコンに積むメモリが高くなった。パソコンの値段が上がって売れにくい。メモリの値上がりの仕組みは下のカードの記事に
基板の不足:チップをつなぐ技術(EMIB)に使う先端の基板が業界全体で足りず、作れる量が増やせない
イスラエル工場の停止:事故で工場(Fab 28)が長く止まり、売上で約3億ドル、利益率で約2ポイントの影響。止まったのは主にサーバー向けの製品
例えるなら:行列のできるパン屋と、客の減ったパン屋を、同じ大きなオーブンで回している状態
インテルの工場は大きなオーブンです。データセンター向けの店には行列ができているのに、小麦粉(基板)が足りず、オーブンの1台(イスラエル工場)も止まって焼けません。パソコン向けの店は、バター(メモリ)が値上がりしてパンの値段が上がり、客が減りました。オーブンの借り賃(工場の固定費)は焼く量が減っても下がらないので、1個あたりのもうけが薄くなります。これが「売上総利益率 44.1%→38.0%」の中身です。
あわせて読みたい
メモリ・スーパーサイクルとは?2026年のDRAM価格高騰とメモリサイクルの仕組みを図解
メモリの値段はなぜ上がったのか。2026年のDRAMの高騰とメモリのサイクル
あわせて読みたい
CoWoSとEMIBの違いとは?構造・コスト・EMIB-Tを6項目で比較|TSMCとIntel
インテルの EMIB と TSMC の CoWoS。チップをつなぐ技術と基板の違い
AI需要は崩れたのか:インテルの中でもAI向けは78%増
インテルの決算の中では、AI需要が崩れた数字は出ていません。データセンターとAI向けの部門(DCAI)は売上73億ドルで前年同期比78%増と、会社によればこの15年でいちばん高い伸びでした。
| 部門 |
2026年7〜9月期の売上 |
前年同期比 |
中身 |
| データセンターとAI(DCAI) | 73億ドル | +78% | サーバーのCPU(Xeon)など。AIのサーバーにもCPUは載る |
| Intel Foundry(製造) | 67億ドル | +58% | 工場の売上。多くは社内(インテル製品)向け |
| パソコン向け(CCPG) | 81億ドル | −5% | パソコンのCPU。メモリ高で台数が減っている |
会社は「サーバーのCPUの需要は、出せる量を大きく上回っている」「業界は2027年から2028年まで供給不足が続く」と説明しています。売れないのではありません。作れないのです。この点は、AI需要の強さを裏から示す話でもあります。AIのサーバーでCPUが何をしているかは、下の記事で図にしています。
あわせて読みたい
GPUサーバーとは?AIサーバーとの違いとCPUサーバーとの比較、主な種類を図解
GPUサーバーとCPUサーバーの違い。AIのサーバーにもCPUが要る理由
AIにお金を出す側:大手クラウド4社の設備投資は約2.1倍
AI需要の大もとは、データセンターを建てる大手クラウドの設備投資です。同じ時期に決算を出した4社の7〜9月の設備投資は、合計で約978億ドルから約2,029億ドルへ、1年で約2.1倍になりました。
| 会社 |
7〜9月の設備投資 |
クラウドの売上の伸び(前年同期比) |
今年の計画 |
| Alphabet(Google) | 514億ドル(前年 240億ドル) | Google Cloud 約2倍(307億ドル) | 1,950億〜2,050億ドルで据え置きと報道 |
| Microsoft | 394億ドル(前年 194億ドル) | Azure +48% | 年間の見込みを1,750億→1,700億ドルに下げたと報道 |
| Meta | 349億ドル(前年 194億ドル) | (クラウド事業なし) | 1,350億〜1,450億ドル(下限を上げた) |
| Amazon | 773億ドル(前年 351億ドル) | AWS +39% | 約2,200億ドル |
Google Cloud の受注残(契約済みでまだ売上になっていない分)は、9月末で約5,608億ドルありました。お金を出す側の数字からも、AIへの投資が止まった様子は見えません。
注意:ただし、心配の種もあります。Meta は7〜9月に、稼いだ現金より設備投資が多く、フリーキャッシュフロー(手元に残るお金)が −21億ドルでした。Amazon も直近12か月で −424億ドルです。投資の勢いが、稼ぐ力を追い越し始めていることは、次の節の「サイン⑤」で見ていきます。
あわせて読みたい
【完全図解】AIデータセンターとは?従来型との違いと、なぜ必要かをわかりやすく解説
AIデータセンターとは何か。従来のデータセンターとの違いから
バブル終焉なのか?この決算だけでは決められない
答えは「まだ分からない」です。今回の決算だけで、AIバブルが終わったとは言えません。下がったのは主に、パソコンと工場の事情を抱えたインテルで、AIにお金を出すクラウドの側の数字はまだ伸びています。
一方で、株価は先に大きく上がっていました。インテル株は2025年末の36.90ドルから、6月には140.94ドルと約3.8倍になっていました。10月30日の65.76ドルは、高値からは53%安く、年初からはまだ78%高い位置です。SOX指数も、6月の高値から27%下にありますが、年初より51%高い水準です。
期待で高く買われた株は、少しの悪い知らせでも大きく下がります。今回もその形です。今回の28.6%は「AIが終わった」という値動きというより、「上がりすぎた期待が、弱い見込みで一気にしぼんだ」と読むこともできます(筆者の整理)。どちらが正しいかは、まだ分かりません。
あわせて読みたい
半導体株はなぜ乱高下するのか|シリコンサイクルと過去の急落
半導体株はなぜ大きく上下するのか。シリコンサイクルと過去の急落
「終わりのサイン」を5つで見張る
バブルの終わりは、ふつう1社の決算ではなく、いくつかの数字がそろって変わることで見えてきます。この記事では次の5つを見張ることにしました。図の判定は2026年10月31日時点の筆者の整理です。
| サイン |
どうなったら注意か |
今(10月31日) |
| ① 設備投資の計画 | 大手クラウドが来年の計画を下げ始める | Microsoft が年の見込みを少し下げたと報道。ほか3社は維持か引き上げ |
| ② クラウドの伸び | Azure・Google Cloud・AWS の伸びが鈍る | +48%・約2倍・+39% |
| ③ 受注残 | 先の契約が減り始める | Google Cloud 約5,608億ドル |
| ④ 品不足の解消 | 「作れない」から「売れ残る」に変わる | インテルは2027年も供給不足と説明 |
| ⑤ お金の流れ | 投資が稼ぎを上回り続け、借金で賄う | Meta・Amazon で現金の流出。注意して見る |
今は①と⑤に小さな注意の印が出ていて、②〜④はまだ出ていません。2000年のITバブルでは、通信会社の設備投資が借金で膨らみ、その後に計画の削減が相次ぎました。同じ形が出てくるかを、次の決算で数字で確かめていきます。
ポイント:値動きの大きさではなく、「お金を出す側(クラウド)の計画と売上」を見る。ここが崩れない限り、AI向けの半導体の需要の土台は残ります。
不安なときの読み方:会社の事情と業界の流れを分ける
急落を見たときは、「その会社だけの事情」と「業界全体の流れ」を分けて見ると、慌てずに済みます。今回で言えば、パソコンの縮小・工場の停止・利益率はインテルの事情、AIの設備投資は業界の流れです。
| 見ること |
インテルの事情 |
業界全体の流れ(AI) |
| 今回の数字 | 10〜12月期の予想が弱い(利益率38%・1株利益0.25ドル) | クラウドの設備投資は約2.1倍、クラウドの売上も伸びている |
| 理由 | パソコンの縮小・メモリ高・基板不足・工場の停止 | AIのサーバーの需要が供給を上回る |
| 次に確かめる日 | 1月下旬(10〜12月期の決算の見込み) | 11月4日 AMD・11月18日 NVIDIA の決算(日本時間7:00) |
このブログは、株を買うか売るかを勧めません。同じ数字を見ても、持っている期間やお金の事情で答えは人によって違います。数字の出どころを確かめて、ご自身で判断してください。
| 日時(日本時間) |
予定 |
見るところ |
| 11月4日(水)7:00 | AMD 7〜9月期の決算 | データセンター向けのGPU・CPUの売上と次の四半期の予想 |
| 11月18日(水)7:00 | NVIDIA 8〜10月期の決算 | データセンターの売上と、クラウドの設備投資の受け皿として伸びが続くか |
| 1月下旬(見込み) | インテル 10〜12月期の決算 | 今回の予想(売上150億〜160億ドル・利益率38%)に対する結果と、パソコンの見通し |
ほかの会社の決算日と、速報を出す予定は、決算カレンダーにまとめています。
あわせて読みたい
AIインフラ・半導体の決算カレンダー【2026年10月〜2027年1月】TSMC・ASML・NVIDIA・東京エレクトロンなどの決算日と速報の予定
AIインフラ・半導体の決算日と速報の予定を1枚で
このブログで読む3本
インテルの急落を、会社と技術の側から読み解くための3本です。
あわせて読みたい
Intelとは?何の会社か・決算はいつか・AIインフラのどこにいるか(インテル、INTC)|基本データと関連記事・最新の速報
インテルの基本データ・決算の読み方・部門の分け方を1ページで
あわせて読みたい
【図解】Intel 18A vs TSMC A16|裏面給電で先行したのはどっち?「技術で勝って商売で苦戦」の構造
インテルの工場の切り札 18A と、TSMC の A16 の比較
あわせて読みたい
イビデン(4062)とは?AI半導体の「土台」ABF基板で世界首位|事業構造を図解
足りないと言われる「基板」をつくるイビデン
追記・訂正
追記・訂正があれば、日時を添えてここに書きます(新しいものを上に)。
よくある質問
Q. インテルの株価はなぜ下がったのですか?
A. 10〜12月期の会社予想が、市場の予想を大きく下回ったことが理由に挙げられています。7〜9月期の結果は好調でした。
Q. インテルの決算でAI需要は落ちていましたか?
A. 落ちていません。データセンターとAI向けの売上は大きく伸び、弱かったのはパソコン向けと工場の利益率です。
Q. AIバブルは終わったのですか?
A. 今回の決算だけでは決められません。クラウドの設備投資の計画など5つのサインが、そろって悪くなるかを見ます。
免責事項:本記事は、技術と産業の構造を理解するための情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。社名・証券コードや、株価・業績などの数値は、記事中に示した時点の公開情報にもとづきます。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)にもとづいて行ってください。
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめての方にもわかるように図解で書いています。
決算と半導体株の動きをもっと深く
つまずきやすい「違い」を解決
あわせて知りたい、隣のテーマ
コメント