アドバンテストとTeradyneの違いは、事業の形です。Teradyneの読みはテラダイン。どちらも半導体のテスタ(検査装置)の2強で、AI向けのチップやHBMのテスタを手がけます。アドバンテストはテストにほぼ集中し、Teradyneはテストのほかにロボットと電子機器の検査も持っています。
2026年7〜9月の3か月は、2社とも売上が前年の約1.7〜1.8倍に伸びました。筆者は2社の決算短信と決算発表を並べて読みました。決算期も通貨も違うので、売上の大きさで順位はつけません。それぞれの前の年との伸びと、事業の中身で比べます。
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前工程(ウェーハに回路を作る)
基板
成膜
露光
エッチング
ドーピング
CMP
洗浄
配線
計測
後工程(チップに切り分けて仕上げる)
ウェーハテスト
バックグラインド
ダイシング
ボンディング
封止
最終テスト ←ココ
先端パッケージ
テスタは「最終テスト」と、薄い色の「ウェーハテスト」の両方で使われる装置です。この記事では、テスタを作る2強の会社を比べます。
アドバンテストとTeradyneの違い
先に結論
アドバンテストとTeradyneは、どちらも演算のチップ(SoC)とメモリの両方のテスタを手がける2強ですが、事業の形が違います。アドバンテストはテストの装置とサービスにほぼ集中した会社で、Teradyneは半導体のテストのほかに、電子機器の検査やロボットの事業も持っています。
2社ともAI向けの需要で業績を伸ばしています。アドバンテストは2026年3月期の売上高が1兆1,286億円と前年度比44.7%増え、AI関連の高性能半導体向けのテスタの需要が大幅に拡大したと説明しています。Teradyneは2025年後半、AI関連の需要が売上の大半を占め、メモリではHBMとDRAMの最終テストでシェアを伸ばしたとしています。
直近の2026年7〜9月の3か月も、2社とも売上が前年の約1.7〜1.8倍に増えました。アドバンテストは2027年3月期の売上高の予想を1兆8,630億円に上げています。
用語メモ:SoC
System on a Chip の略。CPU・GPU・AIの演算回路など、多くの機能を1つのチップにまとめたもの。テスタの世界では、メモリ以外の演算のチップをまとめてこう呼びます。
なぜテスタは2強に集中するのか
半導体のテスタは、ごく少数の会社しか作っていません。Teradyneは年次報告書で、半導体のテストの競合として、アドバンテスト・SPEA・Cohuなどを挙げています。テスタが少数の会社に集中する理由は、主に3つあります。
1. テストのプログラムの資産
チップごとに作るテストのプログラムは、テスタの種類に合わせて書かれます。チップメーカーは、使い慣れたテスタとソフトウェアを変えにくくなります。
2. 最先端のチップに追いつく開発
新しいチップは、より速く、より多くの端子を持ちます。それを確かめるには、チップと同じ速さで新しいテスタを開発し続ける必要があります。
3. 世界中での支え
テスタは世界中の工場やテスト会社で使われます。故障したときにすぐ直し、プログラムの相談に乗れる体制が欠かせません。
ポイント:テスタは、装置そのものに加えて、テストのプログラムやソフトウェアの環境、世界中のお客さまの使い慣れが強みになる装置です。一度選ばれると、次の世代でも選ばれやすくなります。
2社の基本データを並べて見る
2社は決算期も通貨も違うため(アドバンテストは3月期・円、Teradyneは12月期・ドル)、売上の数字をそのまま比べて順位をつけることはできません。ここでは、それぞれの最新の公表値を紹介します。
| 比較項目 |
アドバンテスト |
Teradyne |
| 本社 | 日本(東京) | 米国(マサチューセッツ州) |
| 証券コード | 6857(東証) | TER(NASDAQ) |
| 最新の通期の売上高 | 1兆1,286億円(2026年3月期、前年度比44.7%増) | 31億9,000万ドル(2025年12月期) |
| テストの事業の売上 | テストシステム事業部門:1兆194億円(2026年3月期) | 半導体テスト:8億8,300万ドル(2025年第4四半期) |
| 直近の3か月(2026年7〜9月) | 売上高 約4,777億円(筆者の計算) | 売上高 13億600万ドル(前年比70%増) |
| 主な事業 | テストシステム(SoC・メモリのテスタ、ハンドラ、インタフェース、システムレベルテスト)、サービス | 半導体テスト、電子機器の検査(Product Test)、ロボット |
事業の形の違い:テスト専業と、ロボットも持つ会社
2社のいちばん大きな違いは、テスト以外の事業があるかどうかです。
| 比較項目 |
アドバンテスト |
Teradyne |
| 事業の区分 | テストシステム事業部門と、サービス他部門 | 半導体テスト、Product Test(電子機器の検査)、Robotics(ロボット) |
| テスト以外の事業 | サポート・サービス・消耗品が中心 | 協働ロボットなどのロボット事業を持つ |
| 業績の動き方 | 半導体のテストの需要にほぼ連動する | 半導体のテストに加え、ロボットや電子機器の需要の影響も受ける |
アドバンテストの2026年3月期は、売上高1兆1,286億円のうち、テストシステム事業部門が1兆194億円を占めました。Teradyneの2025年第4四半期は、売上高10億8,300万ドルのうち、半導体テストが8億8,300万ドルでした。どちらも半導体のテストが中心ですが、Teradyneにはロボットという別の柱があります。
最新の数字でも形は同じです。アドバンテストの2026年4〜9月は、売上高8,452億円のうちテストシステム事業部門が7,702億円で約9割。Teradyneの2026年7〜9月は、13億600万ドルのうち半導体テストが10億7,200万ドルで約8割、ロボットは9,600万ドルでした。Teradyneは、ロボットが7〜9月期として最高の売上で黒字になったと説明しています。
注意:「テスタの会社」の業績を見るときは、テスト以外の事業の比重を確かめる必要があります。同じAIの追い風でも、テストにほぼ集中した会社と、別の事業を持つ会社では、全体の業績への効き方が違います。
SoCのテスタと、メモリのテスタ
テスタは、確かめるチップの種類で、SoC(演算のチップ)向けとメモリ向けに大きく分かれます。2社とも両方を手がけています。
| 比較項目 |
SoCのテスタ |
メモリのテスタ |
| 確かめる相手 | CPU・GPU・AIの演算回路など | DRAM・HBM・NANDフラッシュ |
| 求められること | 複雑な回路を、多くの端子で、高速に確かめる | たくさんのチップを同時に、効率よく確かめる |
| アドバンテストの説明(2026年3月期) | HPCやAI関連の半導体向けの売上が大幅に増加 | 高性能DRAM向けが堅調。不揮発性メモリ向けも増加 |
| Teradyneの主な製品 | UltraFLEXplus(複雑な演算のチップ)、J750 | Magnum(フラッシュ・DRAM・HBMの量産テスト)、Magnum EPIC(最終テストまで) |
Teradyneは、2025年のメモリのテストで、HBMとDRAMの最終テストでシェアを伸ばしたと説明しています。HBMは、積み重ねる前と後の両方で、たくさんのチップを確かめる必要があり、メモリのテスタの新しい需要になっています。
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AI需要で、2社の業績はどう動いたか
2社とも、AI向けの需要で売上が大きく伸びています。2026年7〜9月の3か月は、アドバンテストが前年の約1.8倍、Teradyneが約1.7倍でした。
60.5%増
アドバンテストの2026年4〜9月の売上高の伸び
出典:アドバンテスト 中間期決算短信(2026年10月)
1兆8,630億円
アドバンテストの2027年3月期の売上高の予想
出典:アドバンテスト 中間期決算短信(2026年10月)
70%増
Teradyneの2026年7〜9月期の売上の伸び
出典:Teradyne 2026年7〜9月期の決算発表
| 比べる点 |
アドバンテスト |
Teradyne |
| 直近の決算 | 2026年4〜9月(中間期) | 2026年7〜9月(第3四半期) |
| 売上 | 8,452億円(前年同期比60.5%増) | 13億600万ドル(前年同期比70%増) |
| 7〜9月の3か月 | 約4,777億円(前年の約1.8倍。筆者の計算) | 13億600万ドル(前年の約1.7倍) |
| 会社の見通し | 通期の売上高1兆8,630億円(7月の1兆7,140億円から上方修正) | 10〜12月期の売上12億5,000万〜13億5,000万ドル |
| 伸びた分野 | AI向けSoCのテスタ、DRAM向けのメモリのテスタ | メモリとシステムのテストが過去最高、ロボットは黒字 |
アドバンテストの7〜9月の数字は、中間期(4〜9月)から第1四半期(4〜6月)を引いて筆者が出しました。決算短信には3か月だけの表がないためです。会社は、暦年2026年の半導体テスタの市場が過去最大になるとみています。一方で、メモリなどの主要な部品は需要が供給を上回っており、生産能力の増強を急ぐとしています。
注意:ここの数字は2026年11月5日時点の公表資料です。次の決算は、2社とも2027年1月下旬〜2月の見込みです。
その前の年度を見ると、アドバンテストは2026年3月期の売上高が1兆1,286億円、営業利益が4,991億円と、いずれも過去最高を更新しました。主にAI関連の高性能半導体向けのテスタの需要が大幅に拡大したことが理由です。4月の時点では2027年3月期の売上高を1兆4,200億円と予想し、その後2度上方修正しました。さらに、資金の使い道として、SoCのテスタの生産能力を年間7,500台規模に増やす計画を示しています。
Teradyneも、2025年第4四半期の成長はAI関連のコンピュートとメモリの需要がけん引したとし、2025年後半はAI関連の需要が売上の大半を占めたと説明しています。
注意:AI向けの需要は、限られた大口のお客さまの投資計画に左右されやすい面があります。2社とも、需要の見通しの変化で業績が大きく動く可能性があることは、ニュースを読むときに意識しておく必要があります。
なぜAIでテストの需要がこれほど増えるのか
| 理由 |
内容 |
| チップが大きく複雑 | 回路が大きく、確かめる項目が多いため、1個あたりのテストの時間が長くなる |
| チップの数が増える | GPUのそばにHBMを何個も並べ、HBMの中でもチップを何枚も積み重ねる。確かめるチップの数が増える |
| 確かめる回数が増える | 組み立てる前(ウェーハ・積み重ねる前)と後の両方で確かめ、高価なパッケージのむだを防ぐ |
| 実際の動きで確かめる | 決められた信号だけでなく、実際の使い方に近いシステムレベルテストも加わる |
チップの製造が増えるだけでなく、1個あたりにかけるテストの量も増えています。この「量×1個あたりの量」の両方が伸びていることが、テスタの需要が大きく増えた理由です。
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テスタのメーカー
- アドバンテスト(6857):SoC・メモリのテスタ、ハンドラ、システムレベルテスト
- Teradyne(TER):UltraFLEX・J750・Magnumなどのテスタ
周辺の装置・部品
- Cohu(COHU):テストハンドラなど
- 山一電機(6941):テストソケット、バーンインソケット
- 日本マイクロニクス(6871):ウェーハテストで使うプローブカード
使う側
- NVIDIA(NVDA):AI向けGPU
- SK hynix(000660.KS)・Samsung Electronics(005930.KS):HBM
- テラプローブ(6627)・ASE(3711.TW):テストを請け負う会社
テスタは、ソケット・プローブカード・ハンドラといった周辺の装置や部品とセットで使われます。テスタの需要が増えると、これらの周辺の会社の需要も増える関係にあります。
2社の違いを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:テストのプログラムは、使うテスタの種類に合わせて作られます。担当するチップがどちらの会社のテスタで確かめられているかを知っておくと、テストの条件やプログラムの話がしやすくなります。
投資家の方へ:2社は、決算期・通貨・事業の構成が違います。売上の大きさで比べるより、半導体テストへの集中度、SoCとメモリの比重、AI向けの大口の需要への依存度で比べると、ニュースの意味がわかります。
学生・就活中の方へ:テスタの会社は、高速の電気回路・ソフトウェア・精密な機械・データ分析の技術者が集まる会社です。電気電子系・情報系の学生にとって、AI半導体の最前線に関われる分野です。
よくある誤解
誤解1:アドバンテストとTeradyneは、売上の大きさで比べればよい
決算期も通貨も違ううえ、Teradyneにはロボットなどの事業もあります。半導体テストの部分と、事業の構成を分けて比べる必要があります。
誤解2:テスタはどの会社のものでも同じように使える
テストのプログラムやソフトウェアの環境は、テスタの種類ごとに違います。チップメーカーは使い慣れたテスタを変えにくく、それが2強の強みにもなっています。
誤解3:AIブームが続けば、テスタの需要は必ず伸び続ける
AI向けの需要は、限られた大口のお客さまの投資計画に左右されます。需要の見通しが変われば、業績が大きく動く可能性があります。
まとめ
- アドバンテストとTeradyneは、SoCとメモリの両方のテスタを手がける2強
- テスタは、テストのプログラムの資産・開発の速さ・世界中での支えで、少数の会社に集中する
- アドバンテストはテストに集中、Teradyneはテストに加えてロボットや電子機器の検査も持つ
- AI向けのチップとHBMで、2社とも業績を伸ばしている
- テスタの需要は「チップの数×1個あたりのテストの量」で増え、周辺の部品の会社にも波及する
よくある質問
Q. アドバンテストとTeradyneの違いは何ですか?
A. どちらも半導体テスタの大手ですが、アドバンテストはテストに集中し、Teradyneはロボットなどの事業も持っています。
Q. 半導体テスタとは何ですか?
A. チップに電気の信号を送り、返ってきた答えが正しいかを高速で判定する検査装置です。ウェーハテストと最終テストで使います。
Q. なぜAIでテスタの需要が増えているのですか?
A. AI向けのチップは大きく複雑で1個あたりのテストが長く、HBMなど確かめるチップの数も増えているからです。
Q. テスタが少数の会社に集中するのはなぜですか?
A. テストのプログラムがテスタごとに作られて変えにくく、最先端に追いつく開発と世界中での支えが必要だからです。
免責事項:本記事は半導体テスタの業界の構造を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。業績などの数値は2026年11月5日時点の公開情報に基づき、将来の成果を保証しません。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)に基づいて行ってください。
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