AIインフラ月次レポート 2026年10月号は、10月30日の夜に証券口座やニュースの画面で半導体株の赤い数字を見て手が止まった人へ向けて組み直しました。インテルの株価が1日で28.6%下がり、キオクシアは決算の後の夜間取引で売られ、東京エレクトロンとアドバンテストも5%以上下げました。「AIバブルは終わったのか」と検索したくなる日だったと思います。
この連載は、その月にAIインフラで起きたことを、各社の発表文と決算短信の数字だけで1本にまとめます。月末の決算の波が主役です。2026年10月を3行で書くと、こうなります。
先に結論
崩れたもの:株価の「期待」です。インテル −28.6%(10月30日)、半導体株指数(SOX)は10月の1か月で −15.4%。下がったのは決算そのものではなく、次の3か月の会社予想が弱かったことへの反応でした。
崩れていないもの:お金と注文です。大手クラウド4社の7〜9月の設備投資は合計 約2,029億ドルで前年の約2.1倍。キオクシアと SK hynix の営業利益率は80%、東京エレクトロンは通期の予想を過去最高に上げました。
見るべき日:11月18日(日本時間)の朝、NVIDIA の決算です。データセンターの売上と、「供給」についての発言を見ます。
全部を読む必要はありません。気になる章だけ開いてください。数字はすべて各社の発表文・決算短信で確かめ、各章の終わりに出典を置いています。株価の理由は「挙げられた」までで止め、売買の判断は書きません。
この記事の位置:AIインフラ速報解説 > 月次レポート > 2026年10月号
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お金(設備投資)→計算・メモリ→電力→冷却→通信・光→半導体の工程
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一言でいうと:1か月のニュースを、お金→4つの壁→半導体の工程の地図に置き直すまとめです。
AIバブルは終わったのか:崩れたもの・崩れていないもの
答えは「株価の期待は崩れたが、お金の流れはまだ崩れていない」です。10月30日にインテルが28.6%下げ、SOX が7.2%下げた一方で、お金を出す側の Microsoft・Amazon・Alphabet の下げは1〜2%でした。会社の発表した数字を、崩れたものと崩れていないものに分けると、下の図と表になります。
崩れたもの:株価の「期待」
- インテル株は10月30日に −28.6%。決算は売上 +21% と好調で、弱かったのは10〜12月期の会社予想(1株利益 0.25ドル、7〜9月の半分以下)
- キオクシアは10月30日の東証で −7.1%(決算の発表前)。決算発表のあとの夜間取引(PTS)では東証の終値比で −8.5%(21:19 時点)から −12.4%(31日 4:48 時点)まで売られた。10〜12月期の会社見通し(営業利益 2兆円)が市場予想の約2兆3,500億円に届かなかったことと、NAND の値上がりの勢いが鈍ったことが理由に挙げられた(報道)。詳しくはキオクシアの速報
- 半導体株指数(SOX)は10月の1か月で −15.4%、日経平均は −5.2%
崩れていないもの:お金と注文
- 大手クラウド4社の7〜9月の設備投資は約2,029億ドル。前年同期の約2.1倍で、Amazon は2026年に約2,200億ドルの見込み
- インテルのデータセンターと AI 向けの売上は +78%。会社は「需要が供給を大きく上回る」と説明
- キオクシアの7〜9月期の営業利益率は80%、SK hynix も80%。東京エレクトロンは通期の予想を売上 3兆7,000億円・営業利益 1兆1,690億円の過去最高に
この2列を見比べます。下がった理由は「AI の需要が消えた」ではなく、「株価が先に走りすぎていて、次の3か月の見込みが期待に届かなかった」と読めます。インテル株は2025年末の36.90ドルから6月に140.94ドルまで約3.8倍になっていて、10月30日の65.76ドルは高値から53%安く、年初からはまだ78%高い位置です。期待で高く買われた株ほど、少しの弱い知らせで大きく下がる。それが10月30日でした。
ただし、言い切れないこともあります。AI バブルの終わりは1社の決算ではなく、いくつかの数字がそろって変わることで見えてきます。下の表は、筆者が11月以降も同じ物差しで見張ることにした5つのサインです(10月31日時点の整理)。
| サイン |
どうなったら注意か |
今(10月31日) |
| ① 設備投資の計画 | 大手クラウドが来年の計画を下げ始める | Microsoft が年の見込みを 1,750億→1,700億ドルに少し下げたと報道。ほか3社は維持か引き上げ |
| ② クラウドの伸び | Azure・Google Cloud・AWS の伸びが鈍る | +48%・約2倍・+39% |
| ③ 受注残 | 先の契約が減り始める | Google Cloud 約5,608億ドル(9月末) |
| ④ 品不足の解消 | 「作れない」から「売れ残る」に変わる | インテルは2027年も供給不足と説明。SK hynix は2030年まで需要超過の見込み |
| ⑤ お金の流れ | 投資が稼ぎを上回り続け、借金で賄う | Meta のフリーキャッシュフロー −21億ドル、Amazon は直近12か月で −424億ドル。注意して見る |
今は①と⑤に小さな注意の印があり、②〜④はまだ出ていません。ITバブルのときは、通信会社の設備投資が借金で膨らみ、その後に計画の削減が相次ぎました。同じ形が出るかを、次の決算で数字で確かめていきます。インテルの決算の詳しい中身は、当日の速報にまとめています。
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インテル株が28.6%下がった理由を、決算の数字と「終わりのサイン5つ」で
月末の決算の波:インテル・キオクシア・東エレク
10月29日〜30日は、インテル(米国)・東京エレクトロン・キオクシア(日本)の決算が2日に集まり、株価が一気に動いた2日間でした。インテルの発表は日本時間10月30日の朝5時。東京の取引の前です。そのため、日本の半導体株は朝から売られ、その夜にキオクシアと東京エレクトロンの決算が重なりました。
| 会社(発表日) |
決算の数字 |
株価の動き(10月30日の終値) |
市場で理由に挙げられたこと |
| インテル(10/29 米国) | 7〜9月期 売上 165.1億ドル(+21%)、データセンターと AI 向け +78%。10〜12月期の予想は売上 150億〜160億ドル・1株利益 0.25ドル | −28.6%(92.07→65.76ドル) | 10〜12月期の予想が市場の予想(0.4ドル台前半と報道)を大きく下回った。パソコン向けの減速と工場の利益率 |
| キオクシア(10/30 18:45) | 7〜9月期 売上収益 約2兆4,800億円(前年の約5.5倍)・営業利益率 80%。10〜12月期の会社予想は売上 2兆5,000億円(+0.8%) | 東証 −7.1%(14,505→13,470円、発表前)。夜の PTS では終値比 −8.5%〜−12.4%(31日 4:48 時点、Yahoo!ファイナンスと株探の表示) | 10〜12月期の営業利益の会社見通し 2兆円が、市場予想の約2兆3,500億円に届かなかったと報道。NAND の値上がりの勢いが前の四半期より鈍ったとの報道も。中間配当90円(初配) |
| 東京エレクトロン(10/30) | 上期 売上 1兆6,675億円(+41.3%)・営業利益 5,068億円(+67.2%)。通期の予想を売上 3兆7,000億円・営業利益 1兆1,690億円の過去最高に。自己株買い 上限1,500億円 | −5.2%(10,035→9,514円、発表前) | インテルの急落を受けた半導体株全体の売り(発表はその後) |
| アドバンテスト(10/28) | 7〜9月 売上 4,777億円(+81.7%)、通期を上方修正 | −5.9%(37,030→34,860円) | 同上 |
数字の読み方で1つ、迷ったことを書いておきます。キオクシアの「横ばい」は、7〜9月期の2兆4,800億円が10〜12月期に2兆5,000億円になる見込みという意味です。前年の同じ時期の約4,500億円から見れば5倍以上で、「悪い数字」ではありません。会社は「データセンター向けの需要は旺盛だが、為替の悪化を見込む」と説明しています。市場が見ていたのは水準ではなく、伸びの角度でした。角度が寝た。これは、インテルの1株利益 0.25ドルが「赤字ではないのに28.6%下がった」のと同じ形です。
もう1つ、東京エレクトロンの決算は、株価が5.2%下げた「あと」に出ました。中身は上期・通期とも過去最高の見込みで、来年の装置市場(WFE)を2,100億ドル以上と見ています。10月30日の下げは、この会社の数字を見て売られたものではありません。日付と時刻を並べると、何が何に反応したのかが分かります。
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10月のお金の流れ:クラウドから装置まで
10月の出来事を1枚に置くと、お金がクラウド4社から GPU・メモリ・装置の順に流れ、その全部の下に電力と冷却がある形になります。下の図は、このブログの地図に今月の数字を置いたものです。
見方のコツは、左から右へ読むことです。クラウドが設備投資を増やすと、まず GPU とメモリの注文が増える。次に、それを作る装置と、出荷前に確かめる検査の注文が増える。10月の決算は、この順番どおりに数字が出ました。順に並べます。クラウド4社の設備投資 約2,029億ドル、メモリの営業利益率80%、東京エレクトロンとアドバンテストの通期予想の引き上げ、です。
この地図で見ると、10月30日の株価の下げが「右側(半導体)」に集中し、「左側(お金を出す側)」の下げが小さかったことの意味が分かります。上流が止まらない限り、下流の注文は続きます。逆に、上流の計画が下がり始めたら、この地図の全部が影響を受けます。だから、見張るのは上流の数字。
10月の重大ニュース10本
10月に起きたことのうち、AIインフラの地図を動かした10本です。日付の順ではなく、大きさの順に並べました。1本ずつ「何が起きた」「なぜ大事」「ひとこと」の3行で読めます。
1 10月29日〜30日
月末の決算の波。インテル株が1日で28.6%安、半導体株指数は7.2%安
何が起きた:インテルの7〜9月期は売上 +21% と好調でしたが、10〜12月期の会社予想(1株利益 0.25ドル)が市場の予想を大きく下回り、翌日の株価は28.6%下がりました。東京でも東京エレクトロン −5.2%、アドバンテスト −5.9%。
なぜ大事:AI 向けの売上は +78% で、会社は「需要が供給を上回る」と説明しています。弱かったのはパソコン向けと工場の利益率。1社の事情と、AI の需要を分けて読む必要があります。
ひとこと:決算が良くても、「次の3か月」が期待に届かないと株は大きく下がる。
2 10月21日〜29日
大手クラウド4社の設備投資、7〜9月は合計 約2,029億ドル
何が起きた:Alphabet・Microsoft・Meta・Amazon の決算が出そろい、3か月の設備投資の合計が前年の約2.1倍になりました(筆者の合計。章「AIデータセンター」)。
なぜ大事:GPU・メモリ・電源・冷却のすべての注文の元が、このお金です。Amazon は2026年の現金の設備投資を約2,200億ドルと見込んでいます。Microsoft が年の見込みを少し下げたと報じられた点だけ、注意の印です。
ひとこと:AIの「工事費」は、まだ増え続けている。
3 10月28日〜30日
メモリが稼ぎ頭に。キオクシアと SK hynix は営業利益率80%、Samsung のメモリは過去最高
何が起きた:キオクシアの7〜9月期は売上収益 約2兆4,800億円で営業利益率80%、初めての配当(中間90円)も決めました。SK hynix も営業利益率80%、Samsung はメモリ事業が四半期の売上・利益とも過去最高でした。
なぜ大事:AI サーバーに積む HBM と NAND が足りず、値段の交渉力がメモリの会社に移っています。ただしキオクシアは10〜12月期を横ばいと見込み、夜間取引(PTS)では東証の終値比で一時12%超安まで売られました。夜間取引は出来高が東証の1日の約2%と少なく、週明けの東証の値は違うことがあります。
ひとこと:今のAIで一番もうかっている部品はメモリ。ただ、伸びの角度は市場に見られている。
4 10月30日
東京エレクトロンが通期の予想を過去最高に。来年の装置市場は2,100億ドル以上と見る
何が起きた:上期の売上 1兆6,675億円(+41.3%)・営業利益 5,068億円(+67.2%)。通期の予想を売上 3兆7,000億円・営業利益 1兆1,690億円に上げ、1,500億円を上限に自社株買いも決めました。
なぜ大事:装置の注文は、クラウドのお金が半導体の工場に届いた「結果」です。会社は WFE 市場を2026年に1,600億ドル程度、2027年に2,100億ドル以上と見ており、来年も増える前提です。
ひとこと:装置の会社が「来年も増える」と言った。お金はまだ下流まで届いている。
5 10月21日
NVIDIA が基板・光・検査の増産を発表。イビデンの大野工場は3倍に
何が起きた:NVIDIA が取引先と組み、パッケージ基板を3年で2.5倍、CPO の光エンジンを2027年半ばまでに15倍に増やすと発表しました。検査の KYEC には11億ドルの前払いで生産の枠を押さえました。
なぜ大事:GPU を作れても、載せる基板や出荷前の検査が足りなければ製品になりません。足かせが GPU の外へ移ったことを、NVIDIA 自身が示しました。インテルも「基板の不足」をリスクに挙げています。
ひとこと:「GPU 不足」の次は「周りの部品不足」。
6 10月15日
TSMC の7〜9月期は売上467.2億ドル。会社予想を上回る
何が起きた:米ドルで前年同期比+41.2%、売上総利益率は66.4%。10〜12月期の予想は523億〜543億ドルです。
なぜ大事:世界の AI 半導体の多くを作る会社の数字で、AI の需要の強さを測る物差しになります。11月10日に10月の売上が出ます。
ひとこと:AI 半導体の工場は、まだフル回転。
7 10月13日〜15日
月の半ばにも揺れた。キオクシア13%安、日経平均は1日で3,318円安
何が起きた:10月13日にメモリ株が売られ、キオクシアは前日比−13.28%。10月15日は米コアウィーブの社債の急落を受け、日経平均が3,318円下げました。
なぜ大事:業績が強くても、GPU を借金で買って貸し出す会社の資金繰りへの不安が、売りの理由の1つに挙げられました。月末の下げと合わせ、10月は「中身と値動きを分けて見る」月でした。
ひとこと:決算が良いことと、株価が上がることは別の話。
8 10月6日
Google と Constellation、既存の原発の出力を上げて890MW
何が起きた:原子炉11基の出力を少しずつ上げ(出力増強)、新しく生まれる890MW を Google が20年買う契約です。最初の分は2028年の見込みです。
なぜ大事:原発を新しく建てるより早く電気を増やす方法として、データセンター向けの電源の型が1つ増えました。
ひとこと:新しい発電所を待たずに、今ある原発を少し強くする。
9 10月12日〜15日
OCP の会議で、800Vの直流の電源ラックと2.5MWの液冷
何が起きた:データセンターの機器の標準を話し合う会議 OCP Global Summit で、Delta が NVIDIA の次の GPU(Vera Rubin)向けに、出力660kW の800V 直流の電源ラックと、冷やす力2.5MW の液冷装置を示しました。
なぜ大事:ラック1本の電力が大きくなり、昔の54V では電流が太くなりすぎます。電圧を上げて電流を減らす流れが、製品の数字になりました。
ひとこと:電気も冷やし方も、AI 用に作り替えが進む。
10 10月12日・20日
光の配線で2つの動き。差し込み型の新しい形と、NTT の光電融合
何が起きた:NVIDIA と Cisco が1レーン400Gb/s の差し込み型の光モジュール「USFP」を提案。NTT の光電融合デバイスの量産技術の開発は、国(NEDO)の事業に採択されました。
なぜ大事:GPU どうしをつなぐ配線を電気から光へ移すと、電力が下がります。差し込み型と、チップの隣に光を置く CPO の2つの道が並んで進んでいます。
ひとこと:データセンターの中の配線は、銅から光へ。
半導体・メモリ:7〜9月期の決算
10月の決算で見えたのは、メモリが利益の中心に来たことと、装置・検査・受託製造がそろって伸びていることです。下の図は、7〜9月期の売上が前年同期からどれだけ増えたかを並べたものです。キオクシアの+453%は、前年の同じ時期の売上が約4,500億円と小さかったためで、伸び率の大きさより営業利益率80%のほうを見ています。
| 会社 |
7〜9月期の売上 |
前年同期比 |
次の四半期の会社予想 |
| キオクシア | 約2兆4,800億円(営業利益率80%) | +453%(筆者の計算) | 10〜12月期 2兆5,000億円(+0.8%) |
| SK hynix | 104.6兆ウォン(営業利益率80%) | +328% | HBM4 が HBM3E を出荷量・売上で上回る見込み |
| Samsung | 195.3兆ウォン(半導体の DS 部門 147.1兆) | — | メモリは四半期の売上・利益とも過去最高 |
| TSMC | 467.2億ドル | +41.2%(米ドル) | 523億〜543億ドル |
| Lam Research | 82.2億ドル | +54% | 86億ドル±4億ドル |
| KLA | 41.4億ドル | +28.9%(筆者の計算) | 47億ドル±2億ドル |
| Intel | 165億ドル(データセンターと AI 73億ドル) | +21% | 150億〜160億ドル |
| ASML | 116.6億ユーロ | — | 2026年の売上 440億〜450億ユーロ |
数字の読み方で、1つ迷ったことがあります。キオクシアの7〜9月期の単独の値は、決算短信には累計しか載っていないので、中間期から第1四半期を引いて筆者が計算しました。SK hynix の+328%はウォン建ての前年比で、前年の同じ時期がまだ HBM の量産の立ち上がりだったので極端に大きく出ます。この記事では「伸び率」より、営業利益率80%(売上の8割が利益)を、メモリの交渉力の強さの印として読みました。
キオクシアは決算と同じ日に、初めての配当と、余った資金の100%を株主に返す方針、岩手の子会社の吸収合併(AI データセンター向けの需要が背景)も発表しました。10〜12月期の「横ばい」の見通しは、11月号で実績と照らします。
HBM の会社別の取り分は、四半期ごとに更新している定点観測の記事で追えます。
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AIデータセンター:設備投資は1年で約2.1倍
大手クラウド4社(Alphabet・Microsoft・Meta・Amazon)の7〜9月の設備投資は、合計 約2,029億ドルで、前年同期の約978億ドルの約2.1倍でした(各社の決算発表の値を筆者が合計)。10月30日の株価の下げの中でも、この4社の下げは1〜2%にとどまりました。
| 会社 |
7〜9月の設備投資 |
クラウドの売上 |
会社が示した見通し |
| Alphabet | 513.6億ドル | Google Cloud 307.1億ドル(約2倍)、受注残 約5,608億ドル | 年間 1,950億〜2,050億ドルで据え置きと報道 |
| Microsoft | 393.7億ドル | Microsoft Cloud 639億ドル(+30%)、Azure +48% | 年間の見込みを 1,750億→1,700億ドルに下げたと報道 |
| Meta | 349.1億ドル(リースの元本支払いを含む) | (クラウド事業はない) | 2026年 1,350億〜1,450億ドル。7〜9月のフリーキャッシュフロー −21億ドル |
| Amazon | 772.6億ドル | AWS 459.8億ドル(+39%) | 2026年 約2,200億ドル(現金)。直近12か月のフリーキャッシュフロー −424億ドル |
合計には迷いが残ります。Meta の値はファイナンスリースの元本の支払いを含み、ほかの3社は現金で設備を買った額です。Microsoft はリースで借りるデータセンターも多く、リースを含めた額はもっと大きいと報じられています。ただ、会社の発表文に載っていないので、この記事では使いませんでした。合計は「同じ物差しでそろえた数字」ではなく、桁と勢いを見るための目安として読んでください。
もう1つ、見逃せないのは「お金の流れ」の列です。Meta と Amazon は、稼いだ現金より設備投資のほうが多く、フリーキャッシュフローがマイナスになりました。設備投資が止まらないことは安心の材料ですが、それを何で賄っているかは、章「AIバブルは終わったのか」のサイン⑤として見張ります。
計算の側の動きもありました。10月27日、NVIDIA と Oracle は、Oracle のクラウドで次の GPU「Vera Rubin」のラックを「数ギガワット規模」に広げると発表しました。規模を GPU の数ではなく電力(GW)で語る言い方が、もう普通になっています。
電力・冷却・光:800Vの直流と光の配線
電力では、「電気をどこから持ってくるか」と「建物の中でどう配るか」の両方に10月は動きがありました。
| 日付 |
できごと |
数字 |
| 10月1日 | JERA が Dell などと覚書。千葉火力発電所の敷地にAIデータセンター | 最大40万kW、2028年頃 |
| 10月6日 | Google と Constellation、既存の原発11基の出力増強 | 新しい容量890MW・20年の契約 |
| 10月9日 | 米 FERC、PJM の大口需要の接続の案の大半を退ける(報道) | 大口需要の定義と登録は承認 |
| 10月15日 | Delta、800V 直流の電源ラックと液冷の CDU(OCP) | 電源ラック660kW・CDU 2.5MW |
建物の中では、ラックへの電気を800Vの直流で配る流れが、製品の数字になりました。Delta の DC/DC 電源は1台90kW で、800V を50V に下げる効率が最大98.5%です。
電源の設計者の目では、この98.5%を「残りの1.5%がどれだけの熱になるか」で読みます。90kW の1.5%は1.35kW。仮に効率が97%なら2.7kW で、熱は2倍です。失った電気はすべて冷却の仕事に回るので、効率の小数点の差が、冷却の設備の大きさに効いてきます。
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光・通信:差し込み型と光電融合
GPU どうしをつなぐ配線では、光の部品を「差し込む」道と、チップの隣に「載せる」道(CPO)が、10月にどちらも前へ進みました。
| 日付 |
誰が |
何を |
中身 |
| 10月12日 | NVIDIA・Cisco | 差し込み型の新しい形「USFP」を提案 | 1レーン400Gb/s、16レーンで最大12.8Tb/s。帯域の密度は4倍、電力効率は約1.3倍(1レーン200Gb/s の型と比べて) |
| 10月20日 | NTTイノベーティブデバイスほか | 光電融合デバイスの量産技術の開発 | NEDO の事業に採択。ジャパンセミコンダクター・古河電工・新光電気が参加。生産性10倍以上をめざす |
| 10月21日 | NVIDIA・SPIL | CPO の光エンジンの増産 | 2027年半ばまでに15倍 |
差し込み型は、壊れたら抜いて替えられるのが強みです。CPO は、電気の配線を短くして電力を下げられる代わりに、交換が難しくなります。どちらが勝つかではなく、当面は両方が使われるというのが、3つの発表を並べて読んだ筆者の見方です。
日本企業:装置・基板・検査が主役に
10月の日本企業の決算で目立ったのは、装置(東京エレクトロン)・基板(イビデン)・検査(アドバンテスト)です。3社とも通期の予想を上げ、どれも NVIDIA の増産の話とつながっています。
| 会社 |
10月に出た数字 |
AI について会社が書いたこと |
| 東京エレクトロン | 上期 売上1兆6,675億円(+41.3%)・営業利益5,068億円(+67.2%)。通期の予想を売上3兆7,000億円・営業利益1兆1,690億円の過去最高に。自己株買い 上限1,500億円 | 生成 AI に加えエージェント型 AI の普及が先端半導体の需要を加速。WFE 市場は2027年に2,100億ドル以上 |
| アドバンテスト | 7〜9月 売上4,777億円(+81.7%)・営業利益2,668億円(+146.0%)。通期の予想を売上1兆8,630億円に上方修正 | AI 関連の高性能半導体の生産数量が増加 |
| イビデン | 上期 売上2,625億円(+34.3%)・営業利益601億円(+84.6%)。通期の予想を上方修正、設備投資 約1,510億円 | 生成 AI 用サーバー向けを中心に受注が増加(NVIDIA の発表では大野工場を3倍に) |
| キオクシア | 7〜9月期 売上収益 約2兆4,800億円・営業利益率80%。初めての配当、岩手の子会社を吸収合併 | データセンター・エンタープライズ向けは AI 用途サーバー向けの需要が増加。スマホ・PC 向けは鈍化 |
| 信越化学工業 | 上期 売上1兆4,207億円(+10.6%)・営業利益3,859億円(+15.6%) | いくつかの製品群で供給が逼迫 |
| ディスコ | 上期 売上2,571億円(+32.1%)・営業利益1,166億円(+47.9%) | 先端ロジックや HBM 向けの需要が高い水準 |
| Rapidus | インドの HCLTech と協業、ベンガルールとフブリに開発センター(10月26日) | 2nm の量産に向けた設計の人手 |
検査の話は、品質保証の仕事から見ても納得がいきます。出荷前の試験は、作る工程より後から能力を足しにくい工程です。試験の装置と時間が足りなければ、作ったものが倉庫で待つことになります。NVIDIA が検査の会社に前払いまでして枠を押さえた。その待ちを避けるための手、というのが筆者の読みだ。
東京エレクトロンの説明会資料には、エッチング・成膜・プローバの製品ごとに「量産の受注が順調」「今期・来期とも200台以上」と書かれています。装置の会社は半導体の工場より先に注文を受けるので、来年の半導体の増産を今の受注で見ていることになります。会社ページで事業の全体を確かめられます。
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東京エレクトロンとは?何の会社か・AIインフラのどこにいるか
数字で見る10月:株価指数と主な数字
10月の半導体株は、月初の高値から2段階で下げて終わりました。9月30日から10月30日までの終値で、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は−15.4%、日経平均は−5.2%です。1段目は10月13〜15日(メモリ株の急落とコアウィーブの社債)、2段目は10月30日(インテルの決算)でした。
| 指標 |
数字 |
いつ・何の数字か |
| SOX | 12,628.62 → 10,688.80(−15.4%) | 9月30日 → 10月30日の終値。10月30日だけで −7.2%、月の安値は10月22日の10,731.98 |
| 日経平均 | 66,753.72 → 63,290.11(−5.2%) | 9月30日 → 10月30日の終値。10月15日は1日で−3,318.34円、10月30日は−1,369.36円 |
| インテル株 | 92.07 → 65.76ドル(−28.6%) | 10月29日 → 10月30日の終値 |
| クラウド4社の設備投資 | 約2,029億ドル(約2.1倍) | 7〜9月の合計。筆者の計算 |
| キオクシアの営業利益率 | 80% | 7〜9月期(Non-GAAP。筆者の計算) |
| 東京エレクトロンの通期予想 | 売上 3兆7,000億円・営業利益 1兆1,690億円 | 10月30日に修正。過去最高の見込み |
| TSMC の9月の売上 | 約5,118.6億台湾ドル(+54.6%) | 10月8日の発表。前年同月比 |
| 原発の出力増強 | 890MW | Google と Constellation の契約 |
決算の数字は強いのに、指数は下がる。このずれは10月の大きな特徴でした。株価の理由を1つに決めることはできません。ここでは、10月13日・15日・30日という日付のはっきりした3つの出来事を図に印として置くだけにしています。
11月の予定:この日に、この数字を見る
11月に見るべき予定は、11月18日(日本時間)の朝、NVIDIA の決算が中心です。NVIDIA は10月28日に、11月17日(米国時間)に決算説明会を開くと発表しました。10月の決算で出た「崩れたもの・崩れていないもの」の答え合わせを、下の表の「見る数字」でします。
| 日付(日本時間) |
予定 |
この数字を見る |
何が分かるか |
| 11月4日 7:00 | AMD の7〜9月期の決算 | データセンター向け GPU の売上と10〜12月期の予想 | インテルの弱い予想が1社の事情か、CPU・GPU 全体か |
| 11月6日 | キオクシアの半期報告書 | NAND の数量と価格の内訳 | 「横ばい」の見通しの中身 |
| 11月10日 | ソフトバンクグループの決算(予定) | AI への投資の金額と資金の手当て | お金の流れのサイン⑤ |
| 11月10日 | TSMC の10月の売上 | 前年同月比 | 10〜12月期の出だしが会社予想(523億〜543億ドル)のペースか |
| 11月13日 6:30 | Applied Materials の決算 | 装置の受注と次の四半期の予想 | 東京エレクトロンの「2027年も増える」と合うか |
| 11月18日 7:00 | NVIDIA の決算(8〜10月期) | データセンターの売上、次の四半期の予想、「供給」についての発言 | お金が GPU まで届いているか。基板・検査の不足が続いているか |
| 11月30日〜12月3日 | NVIDIA GTC Washington, D.C. | 次の GPU と800V 直流の電源の話 | 電力・冷却の作り替えの速さ |
ほかの会社の決算日は、記事の最後の章から決算スケジュールの一覧へ進めます。11月号は12月1日ごろに、同じ地図の上で11月の出来事を置きます。
筆者の所感:値動きより、電気と熱の帳尻
10月の発表を読み比べて、筆者が一番強く感じたのは、AIインフラの足かせが「チップ」から「チップを製品にして、電気を通して、冷やす」側へ広がったことです。月末の株価の下げは大きかったのですが、決算短信に書かれた注文の中身は、その広がりを裏づける方向でした。
この連載を始めたのは、毎日のニュースを1本ずつ追うと、その「広がり」が見えにくいからです。10月は、決算短信と発表文を合わせて40本ほど読みました。10月31日の朝にキオクシアと東京エレクトロンの短信を足して読み直すと、NVIDIA の増産の発表、イビデン・アドバンテスト・東京エレクトロンの上方修正、Delta の電源ラックが、同じ1枚の地図の上でつながっていました。
電源の設計の仕事から見ると、800Vの直流も液冷も、新しい技術というより「電気と熱の帳尻を合わせる」ための作り直しです。電圧を上げれば電流が減り、配線の熱が減る。変換の段を減らせば、捨てる熱が減る。地味ですが、この帳尻が合わないと GPU は定格で回せません。
一方で、言えないこともあります。株価が下がった理由を1つに決めること、設備投資がいつ鈍るかを当てること、インテルやキオクシアの株をどうするかは、この記事ではしません。10月30日の下げを「終わりの始まり」と呼ぶ記事も、「絶好の機会」と呼ぶ記事も見かけましたが、どちらも会社の発表の外にある話です。会社の発表と数字の範囲で、来月も同じ地図の上に置いていきます。
ポイント:次にやることを1つだけ。11月18日の朝、NVIDIA の発表文で「データセンターの売上」と、説明会での「供給(supply)」の言葉を探してください。売上が伸び、供給が足りないと言っていれば、お金はまだ GPU まで届いています。この2つが変わったときが、この地図を描き直すときです。
今月のAIインフラLabの記事
10月に公開した記事を、分野ごとに並べました(10月31日の昼まで)。ニュースで出てきた言葉の意味は、ここから確かめられます。
速報・会社ページ(16本)
前工程・後工程(16本)
メモリ・基板・GPU(5本)
電力・冷却・通信(9本)
ほかの会社の決算日は、毎月1日ごろに直している半導体の決算スケジュール一覧にまとめています。記事末のカードの速報(インテルの急落・キオクシアのメモリ株の急落・TSMC の決算・DeepSeek)も10月の記事です。
参考にした資料
この記事の数字は、次の一次資料で確かめました(確認日 2026年10月30日・31日)。各章の終わりの「このブロックの参照データ」にも同じ資料を置いています。
免責事項:本記事はAIインフラの産業と各社の動きの構造を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。業績などの数値は2026年10月31日時点の公開情報に基づき、将来の成果を保証しません。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)に基づいて行ってください。
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
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