DGX・HGX・MGXの違いは、NVIDIA(エヌビディア)がサーバーのどこまでを受け持つかです。DGXはNVIDIAが自ら売る完成品、HGXは8個のGPUを載せた基板、MGXはサーバーメーカーのための設計の型(参照設計)です。
机に置ける「DGX Spark」も、名前はDGXですが中身は別の形です。「DGX B300」と「HGX B300」はどちらも8GPU。違うのは、まわりを誰が作るかです。
先に見たい節 7つの視点の比較表/DGX B300とHGX B300/NVL72のラック/DGX Sparkとは
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AIデータセンターの5つの構成要素
計算(GPUサーバー) ←ココ
記憶(ストレージ)
通信(ネットワーク)
電力供給
排熱処理(冷却)
計算の積み上がり(下から上へ)
GPU(チップ)→GPUの基板(HGX) ←ココ→サーバー(DGX・各社) ←ココ→ラック(NVL72)→AIデータセンター
一言でいうと:DGX・HGX・MGXは、GPUチップとデータセンターの間にある「サーバーの作り方」の3つの形です。
DGX・HGX・MGXの違いとは
先に結論
DGX・HGX・MGXの違いは、DGXは NVIDIA が自ら売る「完成品のAIサーバー」、HGXは8個のGPUと NVLink のスイッチを載せた「GPUの基板(ベースボード)」、MGXはサーバーメーカーがAIサーバーを作るための「設計の型(参照設計)」という点にあります。
たとえば「DGX B300」と「HGX B300」は、どちらも Blackwell Ultra のGPUを8個載せ、GPUメモリは合計2.1TBです。違うのは、DGX はCPU・ネットワーク・ソフトまで NVIDIA が組み上げた1台(約14kW・10U)なのに対し、HGX はサーバーメーカーが自分の筐体に組み込む「中身の基板」で、CPUやメモリは各社の製品で決まる点です。MGX は、NVL72 のようなラック規模の製品まで含めて、各社が少ない手間で多くの型のサーバーを作るための共通の設計図です。
用語メモ:ベースボード
GPUのチップ(モジュール)を複数個載せ、GPUどうしをつなぐ配線やスイッチまで組み込んだ基板。サーバーの中心に置く「部品」です。
用語メモ:参照設計(リファレンスアーキテクチャ)
製品そのものではなく、「この部品をこう組めば動く」という設計の手本。メーカーはそれをもとに自社の製品を作ります。
3つの形を1つずつ:完成品・基板・設計の型
DGX:NVIDIA が自ら売る完成品
DGX は、NVIDIA の名前で売られるAIサーバーの完成品です。DGX B300 の場合、Blackwell Ultra のGPU8個に、Intel の Xeon 6776P のCPU、ネットワーク、そして DGX OS・NVIDIA Mission Control・NVIDIA AI Enterprise といった運用のソフトまでが1つにまとまっています。高さは10U、消費電力は約14kWです。DGX を何台もまとめて「すぐに使えるAIデータセンターの基盤」にしたものを、NVIDIA は DGX SuperPOD と呼んでいます。
HGX:サーバーの中心に置くGPUの基板
HGX は、8個のGPUと、GPUどうしをつなぐ NVLink のスイッチを1枚に載せた基板です。サーバーメーカーはこの基板を買い、自社の筐体・CPU・メモリ・電源・冷却と組み合わせて、自社ブランドのAIサーバーにします。NVIDIA の製品ページでも、HGX のCPUとメモリの仕様は「OEM(サーバーメーカー)の製品で決まる」と書かれています。
MGX:サーバーメーカーのための設計の型
MGX は、2023年5月に NVIDIA が発表した、システムメーカー向けのモジュール式の参照設計です。筐体(1U・2U・4U、空冷か液冷)、GPU、CPU、ネットワークの部品を組み合わせて、100を超える型のサーバーを作れるようにしたもので、発表の時点で ASRock Rack・ASUS・GIGABYTE・Pegatron・QCT・Supermicro が採用を表明しました。
DGX=完成品
NVIDIA ブランドの1台。GPU・CPU・ネットワーク・ソフトまで組み上げ済み。買ってすぐ使う。
HGX=GPUの基板
8個のGPUと NVLink のスイッチを載せた中身。各社のサーバーの心臓部になる。
MGX=設計の型
筐体や部品の組み合わせ方の手本。各社が多くの型を短い期間で作るための共通の設計図。
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DGX・HGX・MGXの違いを7つの視点で比較
| 視点 |
DGX |
HGX |
MGX |
| 1. ひとことで | 完成品のAIサーバー | 8GPUの基板(ベースボード) | サーバーの設計の型(参照設計) |
| 2. 誰が売るか | NVIDIA | NVIDIA(サーバーメーカーが買う) | NVIDIA が仕様を出し、各社が製品化 |
| 3. 誰が使うか | AIを動かす企業・研究機関 | サーバーメーカー(その先に使う企業) | サーバーメーカー |
| 4. GPUの数 | 製品で決まる(DGX B300 は8個、DGX GB300 は72個) | 8個(Blackwell・Blackwell Ultra・Rubin) | 型によって変わる |
| 5. CPU・メモリ | NVIDIA が決めて搭載 | サーバーメーカーの製品で決まる | x86 か Grace など、組み合わせを選ぶ |
| 6. 冷却 | 製品で決まる(8GPUの箱、液冷のラック) | サーバーメーカーが設計 | 空冷と液冷の両方の型がある |
| 7. 強み | 設計・検証・ソフトまで一体。すぐ動く | 各社の工夫を足せる。選択肢が多い | 開発の手間と期間を減らせる |
ポイント:3つは「どれが上か」ではなく、サーバーのどの段階を NVIDIA が受け持つかの違いです。DGX は最後まで、HGX は心臓部だけ、MGX は設計図だけを NVIDIA が出します。
注意:仕様は2026年10月時点の NVIDIA の製品ページの値です。新しい世代(Rubin など)が出るたびに中身が変わるので、最新の製品ページで確かめてください。
DGX B300 と HGX B300:同じ8GPUで何が違うか
いちばん混同しやすいのが、同じ世代の DGX と HGX です。GPUの中身は同じですが、どこまでが「製品」に入っているかが違います。
| 項目 |
DGX B300 |
HGX B300 |
| GPU | Blackwell Ultra SXM ×8 | Blackwell Ultra SXM ×8 |
| GPUメモリの合計 | 2.1TB | 2.1TB |
| NVLink の合計帯域 | 14.4TB/s | 14.4TB/s |
| CPU | Intel Xeon 6776P | サーバーメーカーの製品で決まる |
| 高さ・電力 | 10U・約14kW | サーバーメーカーの製品で決まる |
| ソフト | DGX OS・Mission Control・AI Enterprise | サーバーメーカー・使う側が用意 |
2.1TB
DGX B300・HGX B300 のGPUメモリの合計(8GPU)
出典:NVIDIA 製品ページ(2026年10月閲覧)
約14kW
DGX B300 1台のシステムの消費電力
出典:NVIDIA「DGX B300」
14.4TB/s
8GPUをつなぐ NVLink の合計帯域
出典:NVIDIA「HGX Platform」
つまり、各社が HGX B300 を使って作った8GPUのサーバーは、GPUの部分は DGX B300 と同じ心臓部を持ち、そのまわりの CPU・電源・冷却・ネットワーク・保守のしかたで各社が違いを出しています。
たとえるなら
車にたとえると、DGX はメーカー純正の完成車、HGX は同じエンジンとトランスミッションのセット、MGX は「この車体にこの部品をこう載せる」という共通の車台(プラットフォーム)です。同じエンジンを積んでいても、どの車体に載せ、どう仕上げるかはメーカーごとに違います。
NVL72 のラックは、どの形で作られるのか
8GPUのサーバーのほかに、いまのAIデータセンターではラックまるごとを1つの製品にした形が増えています。GB200 NVL72 は、36個の Grace CPU と72個の Blackwell GPU を、ラック規模・液冷の設計で1つにつないだものです。
このラックは、MGX から生まれています。NVIDIA は2024年10月、GB200 NVL72 のラックと、計算・スイッチのトレイ(液冷)の設計を、オープンな業界団体の OCP(Open Compute Project)に提供しました。その説明によると、ラック・トレイ・中の部品の設計は MGX から派生したもので、1つのラックに計算トレイ18枚・スイッチトレイ9枚が入ります。
この工程の役割
受け取るもの
MGX の設計の型
ラック・トレイの共通の設計図
→
NVL72 のラック
72個のGPUを1つの NVLink でつなぐ
液冷・ラック規模
→
次の工程へ渡すもの
各社の製品・DGX
サーバーメーカー各社の NVL72、NVIDIA の DGX GB300
NVIDIA 自身も、同じ考え方のラックを DGX として売っています。DGX GB300 は、72個の Blackwell Ultra GPU と36個の Grace CPU を載せた、液冷のラック規模のシステムで、MGX のラックに入るように作られています。つまり、ラックの時代になっても「DGX=NVIDIA の完成品」「MGX=各社が作るための共通の型」という役割分担は変わっていません。
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GPUサーバーの比較:形・GPUの世代・メモリ・つなぎ方で比べる
「GPUサーバー 比較」と調べる方のために、GPUサーバーを比べるときの軸を表にします。まず「GPUをどう載せるか(形)」で大きく3つに分かれ、そのうえでGPUの世代を比べます。各社の製品の価格は一次の資料がないため、ここでは書きません。
形で比べる:PCIeのカード・8GPUの基板・ラック
| 形 | GPUの載せ方の例 | GPUどうしのつなぎ方 | 冷却 | 向いている使い方 |
| PCIeのカードのサーバー | RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition(1枚にGDDR7のメモリ96GB、最大600W)をサーバーに差す | PCIe(Gen 5) | 空冷の品と液冷の品がある | 推論、画像・動画の処理、企業のデータセンター |
| 8GPUのサーバー(HGX・DGX) | HGX B300(Blackwell Ultra を8基、GPUのメモリの合計2.1TB) | NVLink のスイッチ(合計14.4TB/s) | 製品による(DGX B300 は1台で約14kW) | 大きなAIの学習と推論 |
| ラック規模(NVL72) | GB200 NVL72(Blackwell 72基・Grace 36基) | 72基を1つの NVLink でつなぐ | 液冷 | いちばん大きな学習・推論の基盤 |
GPUの世代で比べる:8GPUの基板(HGX)の仕様
| 世代 | GPUのメモリ | NVLink | ネットワーク | FP4の性能(疎) |
| H200(Hopper) | 1基141GB(HBM3e) | 1基900GB/s | — | —(製品ページに FP4 の値なし) |
| HGX B200(Blackwell) | 8基で1.4TB | 合計14.4TB/s | 0.8TB/s | 144PFLOPS |
| HGX B300(Blackwell Ultra) | 8基で2.1TB | 合計14.4TB/s | 1.6TB/s | 144PFLOPS(密は108PFLOPS) |
| HGX Rubin NVL8(Rubin) | HBM4 | 合計24TB/s | 1.8TB/s | 400PFLOPS |
注意:値は2026年10月時点の NVIDIA の製品ページの表記です。H200 は1基あたりの値(8基のサーバーの合計は製品ページに書かれていません)。FP4 は小さな数で計算する方式で、新しい世代ほど速くなります。
ポイント:比べる順番は、①何に使うか(学習か推論か)→ ②形(カード・8GPU・ラック)→ ③GPUの世代とメモリ → ④電力と冷却がデータセンターの設備に合うか、です。形が決まると、必要な電源と冷却の設備がほぼ決まります。
買う側・作る側から見た、3つの形の選び方
3つの形は、誰の立場から見るかで意味が変わります。
| 立場 |
よく関わる形 |
理由 |
| AIを使う企業・研究機関 | DGX か、各社の HGX・MGX のサーバー | すぐ動くことを重視するなら完成品、価格・保守・調達先を比べたいなら各社の製品 |
| サーバーメーカー | HGX と MGX | HGX で心臓部を、MGX で筐体や組み合わせ方の手間を省く |
| データセンターの事業者 | ラック(NVL72 など) | 1ラックあたりの電力と液冷の設備を、ラックの単位で用意する |
データセンターの設備の側から見ると、8GPUの箱か、液冷のラックかで、必要な電源と冷却がまったく変わります。DGX B300 は1台で約14kWです。これがラックに何台入るか、あるいはラックまるごとの液冷の製品にするかで、受電・配電・冷却の設計が決まります。
ポイント:製品の名前に「DGX」とあれば NVIDIA の完成品、「HGX」とあればGPUの基板(と、それを使った各社のサーバー)、「MGX」とあれば設計の型(と、それに沿った各社の製品やラック)、と読むと迷いません。
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DGX Sparkとは:机に置くDGX
DGX Sparkとは、NVIDIA が2025年10月に出荷を始めた、机の上に置ける小さなAI用のコンピューターです。GB10 Grace Blackwell Superchip を1つ載せ、CPUとGPUが共有する128GBのメモリで、最大2,000億パラメータのモデルの推論を手元で動かせます。
名前は DGX ですが、データセンターに並べる DGX B300 とは別物です。中に HGX の8GPUの基板は入っていません。この記事の3つの形でいえば、NVIDIA が自ら売る「完成品」の仲間で、2025年10月の発表では Acer・ASUS・Dell・GIGABYTE・HP・Lenovo・MSI も同じ GB10 を載せた製品を出すとされました。
| 項目 |
DGX Spark |
DGX B300 |
| 置き場所 | 机の上 | データセンターのラック |
| 中身 | GB10 Grace Blackwell Superchip ×1 | Blackwell Ultra GPU ×8・Intel Xeon 6776P |
| メモリ | CPUとGPUで共有 128GB(LPDDR5X) | GPUメモリ合計 2.1TB |
| 電力 | 電源アダプター 240W | システム 約14kW |
| 大きさ | 150×150×50.5mm・1.2kg | 10U |
| 台数を増やすとき | 2台を直接つないで最大4,000億パラメータ | 8GPUを NVLink でつなぎ、さらにラックで並べる |
筆者が製品ページの仕様の表を DGX B300 のページと並べると、単位がまず違いました。片方は W、片方は kW。電源の設計者の目で見ると、240W は日本の家庭のコンセント1口(100V・15A)に収まる大きさで、約14kW のサーバーはふつうの部屋の電源では受けられません。同じ DGX の名前でも、必要な設備がまるで違うということです。
価格は書きません。NVIDIA の製品ページに価格がなく、2026年10月には64GBのメモリの構成が各社から出るなど、売り方も変わっているためです。買う前には、NVIDIA と各社の販売ページで確かめてください。
DGX・HGX・MGXの違いを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:サーバー・設備・営業のどの担当でも、資料に出てくる型番の頭の3文字で「完成品か、基板か、設計の型か」がわかると、誰がどこまでを設計し、どこで各社の違いが出るのかが読めるようになります。設備の担当なら、8GPUの箱か液冷のラックかで、電源と冷却の話が変わる点が要です。
投資家の方へ:NVIDIA の決算や発表で「DGX」「HGX」「MGX」が出たら、NVIDIA が完成品を売っているのか、基板や設計の型を通じて各社に広げているのかを分けて読むと、サーバーメーカー各社とのつながりが見えます。推奨ではなく、ニュースの読み方の話です。
学生・就活中の方へ:情報系・電気電子系・機械系の学生にとって、同じGPUでも「部品・製品・設計の型」で売り方が変わるのは、ハードウェアの産業構造を学ぶよい例です。サーバーメーカーの設計職を考えるなら、HGX と MGX はまさに仕事の入口になります。
よくある誤解
誤解1:HGX は DGX の安い版
HGX は製品の格ではなく「GPUの基板」です。各社の HGX のサーバーは、同じ世代なら DGX と同じ8GPUの心臓部を持っています。
誤解2:MGX はサーバーの製品名
MGX は設計の型(参照設計)の名前です。MGX に沿って作られた各社のサーバーやラックが製品になります。
誤解3:DGX は8GPUの箱だけ
DGX GB300 のように、72個のGPUを載せた液冷のラックまるごとの DGX もあります。
まとめ
- DGX は NVIDIA が自ら売る完成品のAIサーバー(DGX B300 は8GPU・約14kW・10U)
- HGX は8個のGPUと NVLink のスイッチを載せた基板。サーバーメーカーが自社の製品に組み込む
- MGX はサーバーメーカー向けの設計の型。2023年5月に発表され、100を超える型を作れる
- NVL72 のラックの設計は MGX から生まれ、NVIDIA は DGX GB300 としてもラックを売っている
- 違いは性能の上下ではなく、NVIDIA がサーバーのどこまでを受け持つか
よくある質問
Q. DGXとHGXの違いは何ですか?
A. DGX は NVIDIA が売る完成品のAIサーバー、HGX は8個のGPUを載せた基板で、サーバーメーカーが自社の製品に組み込みます。
Q. MGXとは何ですか?
A. NVIDIA がサーバーメーカー向けに出しているモジュール式の参照設計(設計の型)です。各社はそれをもとに、多くの型のサーバーを作ります。
Q. HGXのサーバーとDGXの性能は違いますか?
A. 同じ世代なら、GPUの部分は同じ8GPUの基板です。違いはCPU・電源・冷却・ネットワーク・ソフトなど、まわりの作りに出ます。
Q. NVL72はDGX・HGX・MGXのどれですか?
A. ラックの設計は MGX から生まれました。NVIDIA の完成品としては、ラックまるごとの DGX GB300 もあります。
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