CXLとは?サーバーのメモリを「増やす・分け合う」接続規格の仕組みと、AIで注目される理由

CXLとは何かを示す図解。CPUからCXLの線でメモリを足し、何台かのサーバーで分け合う様子のイラスト AIデータセンター・GPU
記事内に広告が含まれています。

CXL(Compute Express Link)とは、サーバーの CPU と、メモリや GPU などのアクセラレーターを、PCIe と同じ線の上でつなぐ業界の規格です。

メモリを後から足したり、何台ものサーバーで分け合ったりできます。AIの推論でメモリが足りなくなり、注目が集まりました。NVLink とは、つなぐ相手が違います。

先に読みたい節 PCIeとの関係/拡張・プール・共有の3つの使い方/NVLinkとの違い

あなたが今いる場所:AIインフラ > AIデータセンター入門 > CXLとは
AIデータセンターの5つの構成要素
計算(GPUサーバー) ←ココ 記憶(ストレージ) 通信(ネットワーク) 電力供給 排熱処理(冷却)
サーバーの中のつながり
GPUどうし(NVLink) CPUとメモリ(CXL) ←ココ サーバーどうし(ネットワーク)

CXLとは

先に結論

CXL(Compute Express Link)とは、CPUと、メモリ・アクセラレーターなどの機器を、PCIeと同じ線を使って、メモリとして直接読み書きできる形でつなぐ業界の規格です。

ふつう、サーバーのメモリはCPUのすぐ横のスロットに挿したDRAMだけで、スロットの数で上限が決まります。CXLを使うと、PCIeの線の先にメモリを足して容量を増やしたり(拡張)、何台ものサーバーで1つのメモリの池を分け合ったり(プール・共有)できます。AIの推論では、モデルや会話の途中のデータでメモリが足りなくなりやすく、CXLはその壁を越える手段の1つになっています。

用語メモ:PCIe

PCI Express。サーバーやパソコンの中で、CPUとGPU・SSD・ネットワークのカードなどをつなぐ標準の線。CXLは、このPCIeの線(物理層)をそのまま使います。

用語メモ:コヒーレント

CPUと機器が同じメモリの中身を見たときに、食い違いが起きないように保つこと。CXLの大きな特徴です。

CPUの横のメモリに加えて、CXLの線の先にメモリを足し、複数のサーバーで分け合う構成を示した概念図

CXLとPCIeの関係

CXLは、PCIeの線と端子をそのまま使い、その上に「メモリとして読み書きする」ための約束ごとを足した規格です。同じスロットに、ふつうのPCIeの機器も、CXLの機器も挿せます。

比べる点 PCIe CXL
線と端子PCIePCIeと同じ
つなぎ方機器とのデータのやりとり(入出力)入出力に加えて、メモリとして直接読み書き
CPUとの関係機器はCPUとは別の世界CPUと機器が同じメモリを食い違いなく見られる
主な機器SSD・ネットワーク・GPUメモリ拡張・アクセラレーター・スマートな入出力

CXL の中には、入出力のための CXL.io、機器がCPUのメモリを使うための CXL.cache、CPUが機器のメモリを使うための CXL.mem という3つのやりとりの方法があります。メモリを増やすときに使うのは、主に CXL.mem です。

たとえるなら

PCIeは「荷物を届ける宅配の道」、CXLはその同じ道を使って、隣の家の倉庫を自分の家の押し入れのように使えるようにする約束ごとです。

PCIeと同じ線の上に、入出力・キャッシュ・メモリの3つのやりとりを重ねたCXLの層の構造を示した図

メモリの拡張・プール・共有:3つの使い方

1. 拡張:1台のサーバーのメモリを増やす

CPUの横のスロットが埋まっていても、PCIeの線の先にCXLのメモリを足して、容量を増やせます。

2. プール:何台かで、メモリの池を分け合う

メモリをまとめた箱を置き、何台かのサーバーが必要な分だけ借りて使います。あるサーバーで余ったメモリを、別のサーバーに回せます。

3. 共有:同じデータを、何台かで一緒に見る

1つのメモリの中のデータを、何台かのサーバーが同時に読み書きします。データを1台ずつにコピーする手間が減ります。

データセンターでは、あるサーバーのメモリが余っている一方で、別のサーバーではメモリが足りない、ということがよく起きます。プールや共有を使うと、メモリをむだなく使えます。

たとえるなら

拡張は「自分の家に物置を足す」、プールは「近所で共同の倉庫を借りて、必要な分だけ使う」、共有は「みんなで同じ本棚を見る」に近いイメージです。

1台のサーバーにメモリを足す拡張、何台かでメモリの池を分け合うプール、同じデータを一緒に見る共有の3つを並べた図

CXL 1.0から4.0まで:世代の進化

世代 主な追加 速さ(1レーンあたり)
CXL 1.0・1.1CPUと機器を1対1でつなぐ(拡張)PCIe 5.0 と同じ
CXL 2.0(2020年)スイッチを使い、メモリのプールが可能にPCIe 5.0 と同じ
CXL 3.0(2022年)ファブリック(多段のつながり)、共有の改善、PCIe 6.0 に対応64GT/s
CXL 4.0(2025年)帯域を倍増、ポートを束ねる機能、メモリの信頼性の強化128GT/s

CXL の規格を作る団体(CXL Consortium)は、2025年11月に CXL 4.0 を公開し、帯域を64GT/sから128GT/sに倍増させ、遅延は増やさないとしています。新しい世代は、前の世代の機器ともつながる(後方互換)ように作られています。

128GT/s
CXL 4.0 の帯域(1レーンあたり)。CXL 3.x の64GT/s から倍増
出典:CXL Consortium(2025年11月18日)
このブロックの参照データ
・CXL Consortium「CXL 4.0 Specification」の発表(2025年11月18日) 128GT/s に倍増、bundled port、メモリの RAS 強化、後方互換
・CXL Consortium「CXL 3.0 Specification」の発表(2022年8月2日) ファブリック、共有とプールの改善、64GT/s、PCIe 6.0
用語メモ:GT/s

1秒間に何ギガ回の信号を送れるかの単位。1レーンあたりの速さで、レーンの数を掛けると全体の速さになります。

CXL 1.0・2.0・3.0・4.0の4つの世代で、つながり方が1対1からスイッチ・ファブリックへ広がり、帯域が倍増していく流れを示した図

AIで、なぜCXLが注目されるのか

AIの推論では、モデルそのものに加えて、会話の途中の計算結果や、検索で使うデータを、メモリに置いておく必要があります。同時に使う人や、扱う文章の長さが増えるほど、メモリが足りなくなります。

1. GPUのメモリは高くて増やしにくい

GPUのそばのHBMは速いですが、容量に限りがあり高価です。あふれたデータを置く場所が要ります。

2. CPUの横のメモリも、スロットで上限がある

サーバーのDRAMはスロットの数で上限が決まります。CXLなら、その外にメモリを足せます。

3. 使わないメモリを、むだにしない

プールで分け合えば、サーバーごとに余るメモリを減らせます。メモリの値段が上がる中で、むだを減らす意味が大きくなっています。

メモリのメーカーも、CXLのメモリモジュールを用意しています。SK hynix は2025年4月、CXL 2.0 に対応した96GBのメモリモジュール(CMM-DDR5)の顧客での検証を終えたと発表しました。

このブロックの参照データ
注意:CXLのメモリは、CPUの横のメモリより遠い分、読み書きに少し時間がかかります。いちばん速さが要るデータはHBMやCPUの横のメモリに置き、あふれた分をCXLのメモリに置く、という使い分けになります。
SOCAMMとは?HBM・LPDDRとの違いを図解|SOCAMM2とNVIDIA Vera Rubinでの使い分け
あわせて読みたい
SOCAMMとは?HBM・LPDDRとの違いを図解|SOCAMM2とNVIDIA Vera Rubinでの使い分け

HBM・LPDDR・SOCAMM、AI時代のメモリの使い分け

GPUのHBM、CPUの横のDRAM、CXLのメモリ、SSDを速さと容量の階段に並べ、あふれたデータをCXLのメモリに置く様子を示した図

CXLとNVLinkの違い

サーバーの中の「つなぐ技術」には、いくつか種類があります。CXLと名前が並ぶことの多い NVLink とは、つなぐ相手がちがいます。

比べる点 CXL NVLink
主につなぐものCPUとメモリ・アクセラレーターGPUどうし(NVIDIAのGPU)
規格の形業界の団体が作るオープンな規格NVIDIAの技術
線PCIeと同じ専用
ねらいメモリを増やす・分け合うたくさんのGPUを1台のように動かす
【完全図解】NVLinkとは?「1台の巨大GPU」を作る技術とスケールアップ/スケールアウトの違い
あわせて読みたい
【完全図解】NVLinkとは?「1台の巨大GPU」を作る技術とスケールアップ/スケールアウトの違い

「1台の巨大GPU」を作る技術、NVLink

CPUとメモリをつなぐCXLと、GPUどうしをつなぐNVLinkの、つなぐ相手と役割の違いを並べた図

CXLを支える企業

CPU

  • Intel(INTC)・AMD(AMD):CXLに対応したサーバーのCPU

メモリ

  • SK hynix(000660.KS):CXLのメモリモジュール(CMM-DDR5)
  • Samsung(005930.KS)・Micron(MU):CXLのメモリモジュール

つなぐ部品

  • Astera Labs(ALAB):CXLのメモリをつなぐ制御チップ・リタイマー

CXLは業界の規格なので、CPU・メモリ・つなぐ部品の会社がそろって初めて使えます。メモリの会社にとっては、DRAMの新しい売り先にもなります。

【図解】SK Hynix・Samsung・Micronを比較|HBM市場シェアと投資家が知るべき勢力図
あわせて読みたい
【図解】SK Hynix・Samsung・Micronを比較|HBM市場シェアと投資家が知るべき勢力図

SK hynix・Samsung・Micron、メモリの勢力図

CXLを知ると、何が見えてくるか

あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:サーバー・インフラの仕事では、メモリが足りないときに「サーバーを増やす」以外の選択肢として、CXLでメモリを足す・分け合う方法があると知っておくと、設計の幅が広がります。
投資家の方へ:AIの推論が広がるほど、メモリの需要はHBMだけでなく、サーバーのDRAMやCXLのメモリにも広がります。メモリの会社の売り先が増える流れとして見ておくと役立ちます。
学生・就活中の方へ:CXLは、コンピューターの仕組み(メモリの階層・キャッシュ)と、通信(線の上の約束ごと)の両方がわかるテーマです。情報・電気電子系の学生にとって、サーバーの設計の入口になります。

よくある誤解

誤解1:CXLは新しいメモリの種類

CXLはメモリそのものではなく、メモリや機器をつなぐ規格です。中に入っているのはふつうのDRAMです。

誤解2:CXLのメモリはCPUの横のメモリと同じ速さ

少し遠い分、読み書きに時間がかかります。速さが要るデータと、あふれたデータで使い分けます。

誤解3:CXLとNVLinkは同じもの

CXLは主にCPUとメモリ、NVLinkはNVIDIAのGPUどうしをつなぎます。

まとめ

  • CXLは、CPUとメモリ・機器を、PCIeと同じ線でメモリとして直接つなぐ業界の規格
  • 使い方は、メモリの拡張・プール(分け合う)・共有の3つ
  • CXL 2.0でプール、3.0でファブリック、4.0で帯域が128GT/sに倍増(CXL Consortium)
  • AIの推論でメモリが足りない中、あふれたデータの置き場所として注目
  • CPUの横のメモリより少し遅いので、速さに応じて使い分ける

よくある質問

Q. CXLとは何ですか?

A. CPUとメモリ・アクセラレーターなどを、PCIeと同じ線を使って、メモリとして直接読み書きできる形でつなぐ業界の規格です。

Q. CXLとPCIeの違いは?

A. CXLはPCIeの線をそのまま使い、その上にメモリとして読み書きするための約束ごとを足しています。

Q. CXLでメモリを分け合うとは?

A. メモリをまとめた箱を何台かのサーバーで共有し、必要な分だけ借りて使うことです(メモリプール)。

Q. CXLはAIで何に使われますか?

A. 推論でGPUやCPUのメモリからあふれたデータの置き場所として、メモリを増やしたり分け合ったりするのに使われます。

この記事のテーマを、本でもっと深くPR(アフィリエイト広告)

CXLのようなサーバーの技術を、データセンターの全体の中で知りたい方に。本書(幻冬舎メディアコンサルティング)は、日米で20年以上の実績を持つデータセンターコンサルタントが、建物・IT機器・運用システムといったデータセンターの構造から、抱える課題と未来像までを解説した入門書です。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。

次に読むべき記事

ここまでで、CXLが「メモリを増やす・分け合う」ためのつなぎ方の規格で、AIのメモリ不足を補う手段になっていることがわかりました。次は、メモリの種類と、サーバーの中のほかのつながりを読むと、全体がつながります。

【完全図解】AIデータセンターの中身とは?5つの構成要素を地図で理解する
まずはここから
【完全図解】AIデータセンターの中身とは?5つの構成要素を地図で理解する

AIデータセンターの5つの構成要素を、1枚の地図で見渡せる

全体像を見る →
この記事の続きはこちら

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめての方にもわかるように図解で書いています。

AIデータセンターをもっと深く
【完全図解】NVIDIA Vera Rubinとは?Blackwellの次のAI基盤を、6つのチップとラックの中身から解説
同じ分野
【完全図解】NVIDIA Vera Rubinとは?Blackwellの次のAI基盤を、6つのチップとラックの中身から解説

Blackwellの次のAI基盤、NVIDIA Vera Rubin

続きを読む →
【完全図解】GPUサーバーとは?AIサーバーとの違いを初心者向けにやさしく解説
同じ分野
【完全図解】GPUサーバーとは?AIサーバーとの違いを初心者向けにやさしく解説

チップを積んだ箱。GPUサーバーとAIサーバーの違い

続きを読む →
【完全図解】InfiniBandとEthernetの違いとは?AIデータセンターのネットワークを1から理解する
同じ分野
【完全図解】InfiniBandとEthernetの違いとは?AIデータセンターのネットワークを1から理解する

GPUどうしをつなぐネットワーク。InfiniBand と Ethernet

続きを読む →
【完全図解】GPUラックとは?「高密度化」でデータセンターが変わる理由
同じ分野
【完全図解】GPUラックとは?「高密度化」でデータセンターが変わる理由

GPUサーバーを積み上げたラックが、なぜ高密度になるのか

続きを読む →
【完全図解】AIデータセンターとは?従来型との違いと構造を解説
同じ分野
【完全図解】AIデータセンターとは?従来型との違いと構造を解説

従来のデータセンターと、AIデータセンターの違い

続きを読む →
つまずきやすい「違い」を解決
あわせて知りたい、隣のテーマ
【完全図解】HBMとは?GPUの隣にある「AI最重要メモリ」を初心者向けに解説
隣の工程
【完全図解】HBMとは?GPUの隣にある「AI最重要メモリ」を初心者向けに解説

GPUの隣にある「AI最重要メモリ」、HBM

続きを読む →
【完全図解】SK Hynix(000660)はなぜHBMで独走できるのか?高い利益率と株価の振れ幅を構造で解説
担う企業
【完全図解】SK Hynix(000660)はなぜHBMで独走できるのか?高い利益率と株価の振れ幅を構造で解説

SK hynixはなぜHBMで独走できるのか

企業を見る →
キオクシア株はなぜストップ高になったのか?NAND専業の構造と急騰の理由を投資家向けに解説
担う企業
キオクシア株はなぜストップ高になったのか?NAND専業の構造と急騰の理由を投資家向けに解説

NAND専業のキオクシア。構造と株価の動き

企業を見る →
【決定版】NVIDIA AI半導体のサプライチェーン全マップ|15社で読み解く"AI帝国"の構造
担う企業
【決定版】NVIDIA AI半導体のサプライチェーン全マップ|15社で読み解く”AI帝国”の構造

NVIDIAのAI半導体のサプライチェーン全マップ

企業を見る →

コメント

タイトルとURLをコピーしました