チラーとは、冷媒を回すサイクルで冷たい水(冷水)を作り続ける冷凍機です。データセンターやビル、工場の屋上や機械室に置かれ、空調や冷却の設備に冷水を送っています。
AIデータセンターでは、このチラーをできるだけ使わない設計が広がり始めました。液冷なら、温かい水でも GPU を冷やせるからです。電気を食う設備なので、減らせると効きます。
先に読みたい節 冷凍サイクルの4つのステップ/空冷式と水冷式の違い/クーリングタワー(冷却塔)との違い
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熱の流れ(発熱源から外へ)
GPU→コールドプレート→CDU→施設の冷水→チラー ←ココ→冷却塔→外気
サプライチェーン(上流から下流へ)
冷媒・部品
チラー・冷却塔のメーカー
空調工事
データセンター事業者
チラーとは
先に結論
チラーとは、冷媒(冷やすための液体とガス)を圧縮・凝縮・膨張・蒸発させるサイクルを回して、冷たい水(冷水)を作り続ける冷凍機です。作った冷水は、空調機やデータセンターの冷却設備に送られ、熱を吸い取って戻ってきます。
チラーは、水から奪った熱を、冷却水や空気に捨てます。冷却水に捨てる「水冷式」では、その熱を最後に冷却塔(クーリングタワー)が外に逃がします。チラーは圧縮機を電気で動かすため、データセンターの電力を食う大きな設備の1つです。AIデータセンターでは、液冷によって温かい水でもGPUを冷やせるようになり、チラーの出番を減らす、またはなくす設計が広がっています。
用語メモ:冷媒
冷凍機の中を回る、熱を運ぶための物質。低い温度で蒸発するときに周りの熱を奪い、圧縮されて高い温度になると熱を放出します。
用語メモ:冷水と冷却水
冷水は、チラーが作って冷やす相手に送る冷たい水。冷却水は、チラーが奪った熱を冷却塔へ運ぶための水。名前が似ていますが、役割は逆です。
チラーの仕組み:冷凍サイクルの4つのステップ
チラーの中では、冷媒が4つの部品を順番に回りながら、熱を「冷水の側」から「捨てる側」へ運んでいます。家庭のエアコンや冷蔵庫と同じ原理です。
| 順番 |
部品 |
やること |
| 1 | 蒸発器 | 低温の冷媒が蒸発し、冷水から熱を奪う。冷水が冷たくなる |
| 2 | 圧縮機 | 冷媒のガスを圧縮して、高い温度・高い圧力にする。電気を使う |
| 3 | 凝縮器 | 高温の冷媒が、冷却水や空気に熱を放出して液に戻る |
| 4 | 膨張弁 | 冷媒の圧力を下げて、また低温にし、蒸発器に戻す |
ポイントは、熱は放っておくと温かい所から冷たい所へしか流れないのに、チラーは電気の力で、冷たい冷水から熱をくみ上げて、温かい外へ捨てていることです。このため、チラーは「熱のポンプ」とも呼ばれます。
たとえるなら
スポンジで水をくみ出す作業に似ています。スポンジ(冷媒)を部屋の中で水に浸して吸わせ(蒸発)、外で強くしぼって(圧縮・凝縮)水を捨て、また部屋に戻ります。しぼる力に当たるのが、電気で動く圧縮機です。
空冷式と水冷式の違い
チラーは、冷水から奪った熱をどこに捨てるかで、2つに分かれます。
| 比較項目 |
空冷式チラー |
水冷式チラー |
| 熱の捨て先 | ファンで外の空気に直接捨てる | 冷却水に捨て、冷却塔で外へ逃がす |
| 必要な設備 | チラーだけで完結しやすい | 冷却塔・冷却水のポンプと配管が必要 |
| 水の使い方 | 冷却のための水をほとんど使わない | 冷却塔で水が蒸発するので、補給の水が要る |
| 向いている場所 | 中小規模、水を確保しにくい場所 | 大規模な設備(効率を重視する場合) |
水冷式は、冷却塔で水の一部を蒸発させるときに大きな熱を奪えるため、暑い日でも凝縮器を冷やしやすく、大きな設備で使われてきました。そのかわり、蒸発した分の水を補給し続ける必要があります。
注意:チラーの能力は、熱を捨てる側の温度に左右されます。冷却水の温度が高すぎると、凝縮器で冷媒が液に戻りにくくなり、チラーの能力が下がります。真夏に冷房の効きが落ちるのと同じ理屈です。
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チラーとクーリングタワー(冷却塔)の違い
チラーと冷却塔は、セットで語られることが多い設備です。役割ははっきり分かれています。
チラー=冷水を作る
電気で冷凍サイクルを回し、冷たい水を作る装置。冷水の温度を、外の気温より低くできます。
冷却塔=熱を外に捨てる
冷却水の一部を蒸発させて、残りの水を冷やす装置。外の空気の湿り具合で決まる温度より低くは冷やせません。
2つで1組
水冷式では、チラーが冷水から奪った熱を冷却水に移し、冷却塔がそれを外へ逃がします。
冷却塔だけでは、外の空気の条件で決まる温度より冷たい水は作れません。それより冷たい水が必要なときに、チラーが登場します。逆にいえば、冷たい水が必要なくなれば、チラーを使わずに冷却塔などだけで熱を捨てられるということです。これが、AIデータセンターでチラーを減らす考え方の出発点です。
データセンターの中で、チラーはどこにあるのか
従来の空冷のデータセンターでは、チラーが作った冷水を、サーバー室の空調機(冷水を使って空気を冷やす機械)に送り、冷えた空気でサーバーを冷やしてきました。
| 段階 |
設備 |
やること |
| 1 | サーバー | 電気を使って熱を出す |
| 2 | 空調機(または CDU) | サーバーの熱を、冷水に移す |
| 3 | チラー | 温まって戻ってきた冷水を、また冷たくする |
| 4 | 冷却塔(水冷式の場合) | チラーの熱を、外の空気へ捨てる |
チラーは圧縮機を電気で動かすため、サーバー以外でデータセンターの電気を使う設備の中でも大きな割合を占めます。データセンターの電力効率を表すPUEを良くするには、チラーの電気をどれだけ減らせるかが大きなカギになります。
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AIデータセンターで、チラーを減らす流れ
チラーが電気を食う理由は、外の気温より冷たい水を、電気の力で作っているからです。では、そもそも冷たい水がいらなくなったらどうなるでしょうか。
液冷で、水が温かくてもよくなった
GPUに冷却液を直接当てる液冷では、空気を介さないぶん、冷却液の温度が比較的高くてもGPUを冷やせます。
温かい水なら、チラーがいらない
必要な水の温度が外の気温より高ければ、冷却塔やドライクーラー(空気で冷やす熱交換器)だけで熱を捨てられ、チラーを動かす電気が減ります。
冷水の温度を上げるだけでも
チラーを使う場合でも、冷水の出口の温度を、使い方の許す範囲で上げると、チラーの電気を節約できます。
NVIDIA は2025年4月、液冷によって、データセンターはより温かい水の温度で運転でき、機械式チラーの必要を減らすか、なくせると説明しています。熱は CDU の液と液の熱交換器を通って、施設の冷却の回路に渡されます。NVIDIA は、GB200 NVL72 の液冷の構成が、従来の空冷の構成より水の効率で300倍としています。
300倍
GB200 NVL72(液冷)の水の効率。従来の空冷の構成との比較
出典:NVIDIA Blog(2025年4月22日)
注意:チラーがすぐに不要になるわけではありません。夏の暑い日の予備として残したり、空冷のままの機器のために使い続けたりするデータセンターも多くあります。地域の気候と、冷やす機器の種類で、チラーの使い方は変わります。
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チラーを支える企業:メーカー・施工・使う側
チラー・冷却設備のメーカー
- ダイキン工業(6367):空調の世界大手。データセンター向けのチラーなどの冷却設備
- 三菱重工業(7011):グループの三菱重工サーマルシステムズがターボ冷凍機を手がける
- Trane Technologies(TT)・Carrier Global(CARR)・Johnson Controls(JCI):米国などの大手。チラーを含む空調設備
- Vertiv(VRT):データセンターの電源・冷却設備。チラーや CDU も手がける
空調の設計・施工
- 高砂熱学工業(1969):データセンターの空調・冷却設備の設計と施工
使う側
- データセンター事業者:NTTデータ・KDDI・さくらインターネットなど
液冷が広がると、チラーの役割は「主役の冷却装置」から「補助や予備」へと変わる場面が増えます。一方で、CDU・熱交換器・ポンプなど、液冷の回路の設備の出番が増えます。冷却設備のメーカーは、チラーと液冷の両方を手がける形に動いています。
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あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:データセンターの電気・設備・IT のどの担当でも、「冷却の電気」の大部分がチラーから来ていると知っておくと、PUE の話や、液冷を入れるかどうかの判断の意味が見えてきます。
投資家の方へ:液冷の広がりは、チラーの需要を減らす方向と、CDU や熱交換器の需要を増やす方向の両方に働きます。冷却関連のニュースは「冷水を作る側」か「熱を運ぶ側」かを分けて読むと、位置づけがわかりやすくなります。
学生・就活中の方へ:チラーは、熱力学の冷凍サイクルがそのまま形になった装置です。機械系・建築設備系の学生にとって、授業で習う理論が巨大な設備として動いている例です。
よくある誤解
誤解1:チラーとクーリングタワーは同じもの
チラーは電気で冷凍サイクルを回して冷たい水を作る装置、冷却塔は水を蒸発させて熱を外へ捨てる装置です。水冷式では、2つがリレーのように働きます。
誤解2:チラーは冷たい空気を出す
チラーが作るのは冷たい水です。その水を空調機に送って空気を冷やしたり、熱交換器に送って液冷の冷却液を冷やしたりします。
誤解3:液冷にすればチラーは全くいらない
温かい水で冷やせるぶん、チラーの出番は大きく減らせますが、暑い日の予備や空冷の機器のために残す設計も多くあります。
まとめ
- チラーは、冷凍サイクルを回して冷たい水を作り続ける冷凍機
- 蒸発・圧縮・凝縮・膨張の4ステップで、冷水の熱を外へくみ出す
- 空冷式は空気へ、水冷式は冷却水と冷却塔を通して熱を捨てる
- 圧縮機を電気で動かすため、データセンターの冷却の電気の大きな部分を占める
- 液冷で温かい水でもよくなり、AIデータセンターではチラーを減らす流れがある
よくある質問
Q. チラーとは何ですか?
A. 冷媒を圧縮・凝縮・膨張・蒸発させるサイクルを回して、冷たい水を作り続ける冷凍機です。空調や冷却設備に冷水を送ります。
Q. チラーとクーリングタワーの違いは何ですか?
A. チラーは電気で冷たい水を作る装置、クーリングタワーは水を蒸発させて熱を外へ捨てる装置です。水冷式では2つを組み合わせます。
Q. 空冷式チラーと水冷式チラーの違いは何ですか?
A. 空冷式は外の空気に直接熱を捨て、水冷式は冷却水に熱を移して冷却塔で外へ逃がします。水冷式は補給の水が必要です。
Q. なぜAIデータセンターでチラーを減らせるのですか?
A. 液冷では温かい水でもGPUを冷やせるため、外の気温より冷たい水を電気で作るチラーの出番を減らせるからです。
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