データセンターの非常用発電機とは、停電したときに自動で起動し、燃料で電気を作ってサーバーと冷却の設備を何時間も動かし続ける発電機です。起動までの数秒〜数十秒は、電池で電気を送る UPS(無停電電源装置)がつなぎます。
多くは軽油で動くディーゼルで、大きな出力にはガスタービンも使われます。AIのデータセンターは1か所の電力が大きく、並べる台数も増えました。発電機の注文が世界で積み上がっています。
知りたいところから 停電から戻るまでの5段階 /UPSとの役割分担 /ディーゼルとガスタービン /AIで足りなくなる理由
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電気の流れ(送電線からGPUへ)
送電線
受変電設備
非常用発電機 ←ココ
UPS
PDU・ラック
GPU
停電への備え
UPS(数分)
非常用発電機(数時間〜) ←ココ
燃料の補給
データセンターの非常用発電機とは
先に結論
データセンターの非常用発電機とは、停電したときに自動で起動し、燃料で電気を作って、設備を長い時間動かし続ける発電機 です。
発電機は、起動して電気を送れるようになるまでに数秒〜数十秒かかります。そのすき間を、電池で電気を送る UPS が受け持ち、発電機が立ち上がったら電源を切り替えます。UPS は「数分をつなぐ」、発電機は「何時間も支える」という役割分担です。多くは軽油で動くディーゼルエンジンで、大きな出力にはガスタービンも使われます。AIのデータセンターは使う電力が大きいので、1か所に置く発電機の数も増え、世界で発電機の需要が急増しています。
用語メモ:UPS
無停電電源装置。電池をためておき、停電の瞬間から電気を途切れなく送る装置。動かせるのは数分〜十数分ほどで、発電機が立ち上がるまでをつなぎます。
用語メモ:ATS
自動切替スイッチ。電力会社の電気と発電機の電気を、自動で切り替える装置です。
停電から電気が戻るまでの流れ
1. 停電の瞬間:UPSが電気を送る
電力会社の電気が止まった瞬間から、UPS の電池が途切れなく電気を送ります。サーバーは停電に気づかないまま動き続けます。
2. 数秒後:発電機が起動する
停電を感知すると、発電機が自動で起動します。エンジンが回り、電圧が安定するまで待ちます。
3. 切り替え:発電機から電気を送る
発電機の電圧が安定したら、自動切替スイッチ(ATS)で電源を発電機に切り替えます。UPS の電池は役目を終え、充電に戻ります。
4. 運転を続ける:燃料を補給する
停電が続くあいだ、発電機は燃料を燃やして電気を作り続けます。長引くときは、燃料を補給して運転を続けます。
5. 復電:電力会社の電気に戻す
電力会社の電気が戻って安定したら、電源を戻し、発電機を止めます。
三菱重工は、データセンター向けの非常用発電設備の起動時間を10秒としています。消防用の設備の非常電源としての自家発電設備には、停電から電圧が確立して電気を送り始めるまで40秒以内という基準があります(その間を基準に合う蓄電池で補う場合などを除く)。
UPSと非常用発電機の役割分担
比べる点
UPS
非常用発電機
電気のもと ためておいた電池 燃料(軽油・ガスなど)
電気を送り始めるまで 途切れなし(瞬時) 数秒〜数十秒
動かせる時間 数分〜十数分ほど 燃料があるかぎり、何時間も
役目 停電の瞬間を受け止め、発電機までつなぐ 停電が続くあいだ、設備全体を支える
守る範囲 主にサーバー(IT機器) サーバーに加え、冷却などの設備も
UPS だけでは、電池がなくなった時点でサーバーが止まってしまいます。発電機だけでは、起動までの数秒の間にサーバーが止まってしまいます。2つを組み合わせて、初めて「電気を一瞬も止めない」ことができます。
電源の設計者の目で見ると、この切り替えで気になるのは容量より「負荷の変わり方」です。発電機はエンジンで回すので、負荷が急に増えると回転が一瞬落ち、電圧と周波数が揺れます。AIの学習では多くのGPUの負荷が一斉に上下するため、UPS は停電のつなぎに加えて、この揺れを受け止める役も担う、と筆者は読んでいます。
たとえるなら
UPS は「リレーの第1走者」、発電機は「長距離を走る第2走者」です。第1走者が全力で数分を走るあいだに、第2走者が準備を整えてバトンを受け取ります。
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ディーゼルとガスタービンの違い
比べる点
ディーゼルエンジン
ガスタービン
しくみ ピストンを動かすエンジンで発電機を回す 高温のガスで羽根車を回して発電機を回す
燃料 主に軽油・重油 軽油・ガスなど
得意な出力 1台あたり数MWまでが中心 1台で大きな出力を出しやすい
大きさ・重さ 出力のわりに大きく重い 出力のわりに小さく軽い
冷却水 必要な機種が多い 空気で冷やす機種が多い
データセンターでは、起動が速く、実績の多いディーゼルエンジンの発電機が広く使われています。三菱重工は、データセンター向けの非常用発電設備として、ディーゼルとガスタービンの発電システムを、1台あたり0.4〜2.4MWの範囲でそろえています(三菱重工の製品紹介)。
用語メモ:kVA と kW
発電機の大きさを表す単位。kVA は見かけの電力、kW は実際に使える電力で、力率(多くは0.8)を掛けると kW になります。力率の意味は、同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net の力率とは で詳しく解説しています。
止めないための工夫:冗長化と燃料
1. 予備の発電機を置く(冗長化)
必要な台数(N)に予備を1台足す「N+1」や、まるごと2系統そろえる「2N」で、1台が故障しても電気を送り続けます。
2. 燃料を敷地にためる
発電機が長く動けるよう、燃料のタンクを敷地に置きます。消防用の設備の非常電源としての基準では、決めた連続運転の時間に使う量以上の燃料を持つか、ガス会社のガスで安定して供給することが求められます。
3. 定期的に動かして確かめる
いざというときに起動しないのが最大のリスクです。定期的に起動して負荷をかけ、確かめます。
データセンターの信頼性の基準を定める Uptime Institute のティアの考え方では、上位の Tier III・Tier IV で、電力会社ではなく発電機を主な電源として扱い、発電機が負荷を連続で支えられることを求めています。電力会社の電気は止まることがある、という前提で設計するということです。
注意: 燃料の軽油は危険物で、ためられる量や置き方は消防法などの決まりに従います。地域や建物によって条件が違います。
何時間分の燃料をためるのが標準か、という数字は、この記事では書いていません。消防の基準は「決めた連続運転の時間に使う量以上」という書き方で、時間そのものは建物の条件と事業者の設計で決まるからです。
AIのデータセンターで、発電機が足りなくなる理由
非常用発電機の台数は、データセンターが使う電力の大きさで決まります。AIのデータセンターは、GPUのラック1本あたりの電力が大きく、施設全体の電力も大きいので、1か所に何十台もの発電機を並べることになります。
1. 施設の電力が大きくなった
必要な発電機の台数と出力が増えました。冷却の設備も止められないので、その分の発電機も要ります。
2. 建設の数が増えた
世界中でデータセンターの建設が続き、発電機の注文が集中しています。
3. 停電の備えから、常用の電源へ
電力会社の送電線がすぐに引けない場所では、発電機やガスのエンジンを常用の電源として使う例も出てきました。
米国の建設機械の大手キャタピラー(Caterpillar)は、発電機やエンジン、ガスタービンを売る電源・エネルギーの事業が、最大で最も伸びている部門になったと発表しました。データセンター向けの需要が、その大きな理由です。2026年4〜6月期の決算では、この部門の売上が82.38億ドルと前の年の同じ時期より17%増え、発電の分野で伸びたのは主にデータセンター向けの大型のエンジンとタービンだと説明しています。
510億ドル
キャタピラーの受注残(2025年末、過去最高)。データセンター向けの発電機などの需要が押し上げた
出典:Caterpillar 2025年第4四半期の決算説明会(2026年1月29日)
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非常用発電機を支える企業
発電機・エンジン
三菱重工業 (7011):データセンター向けのディーゼル・ガスタービンの非常用発電設備
キャタピラー (CAT):発電機・ガスのエンジン・ガスタービン
カミンズ (CMI):発電機とエンジン
切り替え・電気設備
富士電機 (6504)・明電舎 (6508):受変電設備・UPS
非常用発電機は、エンジンと発電機の本体に加えて、切り替えのスイッチ、燃料の設備、排気の設備まで含めた「システム」として納められます。
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非常用発電機を知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ: 設備・電気・運用のどの仕事でも、停電のときは「UPSが数分つなぎ、発電機が何時間も支える」という順番を知っておくと、訓練や点検の意味がわかりやすくなります。
投資家の方へ: AIのデータセンターの建設が続くかぎり、発電機とエンジンの需要は増えます。非常用だけでなく、常用の電源としての使い方が広がるかどうかも、注目点です。
学生・就活中の方へ: 非常用発電機は、エンジン(機械)・発電機(電気)・制御(切り替え)・燃料(化学と法規)が交わる設備です。機械・電気のどちらの学生にも身近なテーマです。
よくある誤解
誤解1:停電したら、発電機がすぐに電気を送る
発電機は起動に数秒〜数十秒かかります。そのすき間を UPS が埋めています。
誤解2:UPSがあれば発電機はいらない
UPS の電池で動けるのは数分〜十数分ほどです。長い停電には発電機が要ります。
誤解3:非常用発電機は、めったに動かない
いざというときに動くよう、定期的に起動して確かめています。
まとめ
非常用発電機は、停電のときに燃料で電気を作り、設備を長く動かし続ける
UPS が停電の瞬間を受け止め、数秒後に起動した発電機にバトンを渡す
データセンターではディーゼルが広く使われ、大きな出力にはガスタービンも
予備の台数(N+1・2N)、燃料のタンク、定期的な確認で、止めない仕組みを作る
AIで施設の電力が大きくなり、発電機の需要が世界で急増している
よくある質問
Q. データセンターの非常用発電機とは何ですか?
A. 停電したときに自動で起動し、燃料で電気を作って、サーバーや冷却の設備を長い時間動かし続ける発電機です。
Q. UPSと非常用発電機の違いは?
A. UPS は電池で停電の瞬間から数分をつなぎ、発電機は燃料で何時間も電気を作ります。2つを組み合わせて使います。
Q. 非常用発電機は何秒で起動しますか?
A. 機種によりますが、データセンター向けでは起動時間10秒の製品があります(三菱重工)。その間は UPS が電気を送ります。
Q. なぜAIで発電機が足りなくなるのですか?
A. AIのデータセンターは使う電力が大きく、1か所に置く発電機の台数と出力が増え、建設の数も増えているためです。
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メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
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