ワイヤーボンディングとは?髪の毛より細い金属線でチップをつなぐ仕組み

ワイヤーボンディングとは何かを示す図解。チップのふちから細い金属線が弧を描いて基板の端子へのびる様子 後工程
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ワイヤーボンディングとは、チップの電極とパッケージの端子を、髪の毛より細い金属の線でつなぐ後工程です。パッケージを開けると、チップのふちから細い線が何本も弧を描いてのびています。

AI向けの GPU は、つなぐ数が多いのでフリップチップでつなぎます。それでも多くのチップや、階段状に積むメモリ、パワー半導体では、今もワイヤが使われています。

先に読みたい節 ボールボンディングの5つのステップ/金・銅・銀・アルミのワイヤの違い/フリップチップとの違い

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前工程(ウェーハに回路を作る)
基板 成膜 露光 エッチング ドーピング CMP 洗浄 配線 計測
後工程(チップに切り分けて仕上げる)
ウェーハテスト バックグラインド ダイシング ボンディング ←ココ 封止 最終テスト 先端パッケージ
ワイヤーボンディングは「ボンディング」の工程の1つです。ダイシングで切り分けたチップを基板に貼ったあと、細い線で電気をつなぎ、そのあと樹脂で包みます(封止)。

ワイヤーボンディングとは

先に結論

ワイヤーボンディングとは、チップの表面にある電極(パッド)と、パッケージの基板や端子を、髪の毛より細い金属の線(ワイヤ)で1本ずつつなぐ後工程です。

ワイヤの先を丸い玉にしてチップのパッドに押しつけ、熱と圧力と超音波の振動でくっつけてから、弧を描いて基板側に引き、もう一方をくっつけて切ります。装置が安く、いろいろなチップに使えるため、いまも多くの半導体で使われています。一方、大量の信号を高速にやりとりするAI向けのGPUやHBMでは、チップの面全体でつなぐフリップチップなどの方式が主役です。

用語メモ:パッド

チップの表面に設けた、外と電気をやりとりするための小さな金属の電極。ワイヤやバンプをここにつなぎます。

用語メモ:キャピラリ

ワイヤを通して先端から送り出し、パッドに押しつける、細い筒の形をした道具。ワイヤーボンダーの「ペン先」にあたる消耗品です。

チップのパッドと基板の端子を弧を描くワイヤでつなぎ、熱・圧力・超音波で接合するワイヤーボンディングの構造図

ワイヤーボンディングは後工程のどこにあるのか

この工程の役割
受け取るもの
基板に貼ったチップ
ダイボンディングでチップを固定した状態
→
ボンディング
ワイヤーボンディング
細い線で電気をつなぐ
→
次の工程へ渡すもの
配線をつないだチップ
樹脂で包む封止の工程へ

後工程では、ダイシングで切り分けたチップを、まず基板やリードフレーム(金属の枠)に貼りつけます。これがダイボンディングです。そのあと、チップと外側をワイヤで電気的につなぐのがワイヤーボンディングです。

工程 やること つなぐもの
ダイボンディングチップを基板やリードフレームに貼りつけて固定するチップの裏と基板(機械的な固定・熱の逃げ道)
ワイヤーボンディングチップの表のパッドと外側を、細い線でつなぐチップの表と外側の端子(電気の通り道)
ポイント:ダイボンディングが「チップを置いて固定する」工程なら、ワイヤーボンディングは「チップに電気の通り道を引く」工程です。2つで1組になって、チップがはじめて外とつながります。
ダイボンディングでチップを固定し、ワイヤーボンディングで電気をつなぎ、封止で包む後工程の順番を示す図

仕組み:ボールボンディングの5つのステップ

いちばん広く使われているのが、ワイヤの先を丸い玉にしてつなぐ「ボールボンディング」です。1本のワイヤを張る手順は次のとおりです。

順番 ステップ やること
1玉を作るキャピラリから出たワイヤの先に電気の火花を当てて溶かし、小さな丸い玉にする
21か所目をつなぐ玉をチップのパッドに押しつけ、熱・圧力・超音波の振動でくっつける
3弧を描くキャピラリを動かして、ワイヤを決まった高さと形の弧(ループ)にする
42か所目をつなぐ基板側の端子にワイヤを押しつけてくっつけ、そのまま押し切る
5次の1本へ残ったワイヤの先に、また玉を作って次のパッドへ向かう
たとえるなら

ミシンで布を縫うようすに似ています。針(キャピラリ)が糸(ワイヤ)を送り出し、1か所目を留めて、弧を描いて2か所目を留め、また次へ進みます。ワイヤーボンダーは、これを目にもとまらない速さで、チップ1個につき何本もくり返します。

用語メモ:超音波接合

人の耳に聞こえない高い周波数の振動を加えて、金属どうしの表面をこすり合わせ、くっつける方法。熱と圧力と組み合わせると、低い温度でもしっかりつながります。

玉を作る、パッドにつなぐ、弧を描く、端子につなぐ、次へ、のボールボンディングの5ステップを並べた図

ワイヤは何でできているのか:金・銅・銀・アルミ

ワイヤの材料は、電気の通しやすさ、くっつけやすさ、さびにくさ、値段のバランスで選ばれます。

材料 長所 注意点 主な使い道
金さびにくく、やわらかくてつなぎやすい。実績が長い値段が高い高い信頼性が求められるチップ
銅電気を通しやすく、金より安い硬く、さびやすい。つなぐ条件が難しいコストを下げたい多くのチップ
銀(銀の合金)電気を通しやすく、金より安い使う環境によって変化しやすいLEDなど
アルミ太い線にしやすく、安い玉を作るボールボンディングには向かないパワー半導体(太いワイヤ)

金の値段が上がったことをきっかけに、銅や銀のワイヤへの切り替えが進みました。日本の田中電子工業は、金のワイヤに加えて、銅や銀のワイヤも手がけています。

このブロックの参照データ
・田中貴金属グループ ニュースリリース(2013年1月10日) 田中電子工業の銅ボンディングワイヤ
・Kulicke & Soffa「Form 10-K」(2016年度) ボールボンダーが金や銅のワイヤでパッドとリードをつなぐこと
金・銅・銀・アルミの4種類のボンディングワイヤを並べ、長所と注意点と使い道を比べた図

もう1つの方法:太いワイヤのウェッジボンディング

ボールボンディングのほかに、ワイヤの先を玉にせず、くさび(ウェッジ)形の道具で押しつぶしてつなぐ「ウェッジボンディング」があります。

ボールボンディング

細い金や銅のワイヤを、玉にしてからつなぐ。速く、どの方向にも線を引ける。多くのICやメモリで使う。

ウェッジボンディング

アルミなどのワイヤを、くさび形の道具で押しつぶしてつなぐ。太いワイヤでも扱える。

パワー半導体では

大きな電流を流すパワー半導体のモジュールでは、太いアルミのワイヤや、板状の金属でつなぐ方法が使われます。

電気自動車やデータセンターの電源に使うパワー半導体は、細い信号ではなく大きな電流を運びます。そのため、つなぐ線も「太く・短く・熱に強く」が求められ、ワイヤーボンディングの中でも別の技術が育っています。

細いワイヤを玉にしてつなぐボールボンディングと、太いワイヤを押しつぶしてつなぐウェッジボンディングの比較図

フリップチップとの違い:AI半導体はどちらを使う?

チップと外をつなぐ方法は、ワイヤーボンディングだけではありません。チップを裏返して、表面に並べた小さな金属の突起(バンプ)で基板に直接つなぐ「フリップチップ」もあります。

比較項目 ワイヤーボンディング フリップチップ
つなぐ場所チップのふちのパッドだけチップの面全体に並べたバンプ
つなげる数ふちの長さで限られる面全体を使えるので多い
信号の通り道ワイヤの長さのぶん長い短い
コスト装置も材料も比較的安いバンプを作る工程が増える

大量のデータを高速でやりとりするAI向けのGPUは、つなぐ数が多く、信号の通り道を短くしたいので、フリップチップや、それを発展させた先端パッケージが使われます。HBMのチップを積み重ねるときも、ワイヤではなく、チップを縦に貫く電極(TSV)と小さなバンプでつなぎ、熱と圧力でくっつけるTCボンダーや、銅どうしを直接貼り合わせるハイブリッド接合が使われています。

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ワイヤーボンディングは古い技術なのか

AI向けの最先端のチップではフリップチップが主役ですが、ワイヤーボンディングがなくなるわけではありません。

1. 多くのチップは、ワイヤで十分

家電や自動車、産業機器に使われる多くのマイコンやアナログのチップは、つなぐ数がそれほど多くありません。装置が安く、どんな形のチップにも使えるワイヤーボンディングは、コストの面で強みがあります。

2. メモリを階段状に積んで、ワイヤでつなぐ

スマートフォンやSSDに使うNANDフラッシュのように、チップを少しずつずらして階段状に積み、それぞれのチップのふちからワイヤでつなぐ方法もあります。積み重ねる時代にも、ワイヤの出番は残っています。

3. パワー半導体の需要

データセンターの電源や電気自動車で使うパワー半導体のモジュールでは、太いワイヤでつなぐ技術が使われています。電力の需要が増えるほど、この分野の重みも増しています。

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ワイヤーボンディングを支える企業:装置・材料・使う側

ワイヤーボンディングは、装置(ワイヤーボンダー)と、ワイヤ・キャピラリという消耗品の組み合わせで成り立っています。

装置メーカー

  • Kulicke & Soffa(KLIC):米国のNASDAQに上場し、シンガポールに本社を置くワイヤーボンダーの大手。キャピラリなどの消耗品も手がける
  • ASMPT(0522.HK):香港に本社を置く後工程の装置の大手。ワイヤーボンダーも手がける
  • 新川:ワイヤーボンダーを手がけてきた日本のメーカー。2019年にヤマハ発動機(7272)のグループに入った

材料メーカー(ワイヤ)

  • 田中電子工業(田中貴金属グループ):金・銅・銀のボンディングワイヤを手がける

使う側(組み立てる会社)

  • ASE(3711.TW)・Amkor(AMKR):後工程を受託する会社(OSAT)
  • キオクシア(285A):NANDフラッシュ
  • ローム(6963):パワー半導体やアナログのチップ

ワイヤとキャピラリは、つなぐたびに消費されます。装置の販売とあわせて、消耗品の継続的な売上が生まれる構造です。各社の比べ方は、別の記事で整理します。

ワイヤーボンダー、ワイヤとキャピラリ、組み立てる会社の3つの立場をつないだサプライチェーン図

ワイヤーボンディングを知ると、何が見えてくるか

あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:製品の故障解析では、ワイヤの断線や、つないだ部分のはがれがよく調べられます。設計や品質の担当でも、パッドの配置やワイヤの長さが、組み立てやすさと信頼性に影響することを知っておくと、後工程の担当と話がしやすくなります。
投資家の方へ:後工程の装置は、AI向けの先端パッケージだけでなく、家電・自動車・パワー半導体など幅広い需要で動きます。ワイヤーボンダーの需要は、スマートフォンや自動車などの数量の動きとも関係するため、AI向けの装置とは分けて見るのが大切です。
学生・就活中の方へ:ワイヤーボンディングは、機械(精密な動き)・材料(金属の接合)・電気(信号の通り道)が交わる分野です。機械系や材料系の学生にとって、授業で習う知識がそのまま生きる工程です。

よくある誤解

誤解1:ワイヤーボンディングは、もう使われていない古い技術

最先端のAI向けのGPUでは主役ではありませんが、多くのマイコン・アナログ・メモリ・パワー半導体で、いまも使われています。コストと使いやすさで選ばれ続けている方法です。

誤解2:ワイヤははんだでくっつけている

ボールボンディングでは、はんだを使わず、熱・圧力・超音波の振動で金属どうしを直接くっつけます。

誤解3:HBMもワイヤでチップを積み重ねている

HBMは、チップを縦に貫く電極(TSV)と小さなバンプで上下をつなぎます。ワイヤで積み重ねるのは、NANDフラッシュなどの別の積み方です。

まとめ

  • ワイヤーボンディングは、チップのパッドと外側の端子を、細い金属の線でつなぐ後工程
  • ボールボンディングでは、玉を作り、熱・圧力・超音波でくっつけ、弧を描いて2か所目につなぐ
  • ワイヤは金・銅・銀・アルミを、値段と信頼性で使い分ける
  • AI向けのGPUやHBMでは、フリップチップやTCボンダー・ハイブリッド接合が主役
  • それでも多くのチップやパワー半導体で使われ続け、装置と消耗品の両方で需要がある

よくある質問

Q. ワイヤーボンディングとは何ですか?

A. チップの表面の電極とパッケージの端子を、髪の毛より細い金属の線で1本ずつつなぐ後工程です。

Q. ボンディングワイヤには何が使われますか?

A. 金・銅・銀・アルミが使われます。さびにくさと信頼性なら金、コストを下げるなら銅というように使い分けます。

Q. ワイヤーボンディングとフリップチップの違いは何ですか?

A. ワイヤーボンディングはチップのふちから線でつなぎ、フリップチップはチップを裏返して面全体の突起で基板につなぎます。

Q. ワイヤーボンディングで超音波を使うのはなぜですか?

A. 振動で金属どうしの表面をこすり合わせると、熱と圧力だけより低い温度で、しっかりくっつけられるからです。

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この記事で見たワイヤーボンディングについて、本書(技術評論社)では「電気的に接続するワイヤーボンディング装置のしくみ」の節があり、材料の章では「ボンディングワイヤーの役割と最新動向」も取り上げられています。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。

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