C-GISとGISの違いは、同じガス絶縁開閉装置を、変電所向けの大きなタンクの形で作るか(GIS)、建物の電気室に並べる列盤の形で作るか(C-GIS)の違いです。C はキュービクル(Cubicle)の頭文字です。
三菱電機がデータセンター向けに増産すると発表したのは C-GIS でした。電力会社の変電所にあるのは GIS。頭の C で何が変わるのかを、7つの視点の表で比べます。
先に読みたい節 7つの視点の比較表 /データセンターのどこに入るか /C-GISが選ばれる理由
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電気の流れ(発電所からGPUまで)
発電 → 送電 → 変電所 → DCの受変電 ←ココ → UPS → PDU・ラック → GPUの電源
この記事が扱う課題
容量(足りるか)
品質(止まらないか)
効率(ムダがないか)
脱炭素(何の電気か)
立地(どこに建てるか)
C-GISとGISの違いとは
先に結論
C-GISとGISの違いとは、同じ「ガス絶縁開閉装置」を、変電所向けの大きなタンクの形で作る(GIS)か、建物の電気室に並べる列盤の形で作る(C-GIS)か の違いです。Cはキュービクル(Cubicle)の頭文字で、C-GISは「キュービクル形ガス絶縁開閉装置」。三菱電機は、C-GISを「大容量電力を使用する施設内の電力配電系統に用いられる機器で、電流を開閉できる真空バルブを搭載し、事故が生じた際などに電流を遮断・保護・制御する、高電圧向けの配電盤」と説明しています。
GISは66kV以上の特別高圧を中心に電力会社の変電所や大きな受電点で使われ、C-GISは7.2kVから84kVまで、建物の中の受変電・配電で使われます(三菱電機の生産品目は7.2〜84kV)。データセンターでは、送電線から受ける入口にGISまたは大きなC-GIS、建物の中で電気を分けて守る場所にC-GISが入ります。床面積が収益に直結し、充電部が露出しない安全性と、工場で組んで運び込める工期の短さが求められるデータセンターで、C-GISは需要を伸ばしています。三菱電機は2025年8月、データセンターなどの需要拡大を理由に、2027年度までにC-GISの年間生産台数を従来比2倍にすると発表しました。
用語メモ:開閉装置(スイッチギヤ)
電気の通り道を入れたり切ったりする遮断器・断路器・接地開閉器と、それを収める盤やタンクをまとめた呼び名。事故のとき電気を切って設備と人を守ります。
用語メモ:特別高圧・高圧
電気設備の技術基準では、交流で600Vを超え7,000V以下が高圧、7,000Vを超えると特別高圧です(省令第2条)。
GISとは:遮断器などをガスの中に密閉した「守りの装置」
GIS(Gas Insulated Switchgear、ガス絶縁開閉装置)は、遮断器・断路器・接地開閉器・避雷器・計器用変成器といった機器を金属の容器に密閉し、絶縁ガス(主にSF6ガス)を充填した装置です。空気で絶縁すると機器どうしの間に大きな距離が要りますが、絶縁の強いガスの中に収めると、同じ電圧をはるかに小さな体積で扱えます。これがGISの出発点で、電力会社の変電所や、大規模なデータセンターの特別高圧の受電点で使われます。
GISの規格は電気学会のJEC-2350「ガス絶縁開閉装置」です。2016年の改正では、絶縁媒体としてSF6以外のガス(窒素・二酸化炭素・CF4・それらとSF6の混合ガス、ドライエア、真空)を対象に加え、さらに公称電圧66kV以上のキュービクル形開閉装置も対象にしました 。つまり規格の上でも、大きなC-GISはGISの仲間として扱われるようになっています。
遮断器が電流を切るときに出る火花(アーク)をどう消すか、真空・ガス・油・空気の方式ごとの違いは、同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net の遮断器の種類と特徴 で、変電所にどんな機器が並ぶかは変電所の役割と主要機器 で詳しく解説しています。本記事では、データセンターの受変電でGISとC-GISをどう使い分けるかに絞ります。
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C-GIS(Cubicle-type Gas Insulated Switchgear、キュービクル形ガス絶縁開閉装置)は、GISと同じ発想を、建物の電気室に並べる「盤」の形で実現した装置です。1面ずつの箱(キュービクル)の中に、真空遮断器(VCB)、接地開閉装置付きの断路器(DS/ES)、母線を収めた母線タンク、計器用変成器(VCT)を収め、箱の中を絶縁ガスやドライエアで満たします。箱を横に並べて(列盤)、受電回路・変圧器回路・配電回路を構成します。
この工程の役割
受け取るもの
送電線・変電所からの電気
特別高圧または高圧で受ける
→
C-GIS の役割
受けて・分けて・守る
受電盤 → 母線 → 各回路の遮断器
→
次の工程へ渡すもの
変圧器・UPS・配電へ
電圧を下げてサーバー室へ
「キュービクル」という言葉は、日本では6.6kVで受電する中小ビルの高圧受電設備(箱に入れた気中絶縁の設備)を指すことが多いので、混同しやすいところです。C-GISのCも同じ「箱」の意味ですが、中身はガス(またはドライエア)で絶縁し、遮断器は真空式 という点が、空気で絶縁する一般のキュービクルと違います。そのぶん、同じ電圧でも盤が小さく、充電部が露出しません。
真空遮断器(VCB)
電流を切る主役。真空の中でアークを消す。C-GIS の中では JEC-2300 に準拠した VCB を使う(三菱電機・明電舎のカタログ)。
DS/ES(接地開閉装置付き断路器)
点検のときに回路を切り離し、接地して安全を確かめる。母線タンクの中に収める。
母線タンク・固体絶縁母線
盤どうしをつなぐ母線をガスや固体で絶縁して収める。三菱電機は固体絶縁母線で盤をさらに小さくした。
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比較項目
GIS(ガス絶縁開閉装置)
C-GIS(キュービクル形ガス絶縁開閉装置)
電圧クラス 特別高圧が中心(66kV以上。電力会社の変電所では数百kVまで) 7.2kV〜84kV(三菱電機の生産品目)。高圧から特別高圧の受電まで
絶縁の媒体 主に SF6 ガス。規格改正で窒素・CO2・混合ガス・ドライエア・真空も対象 SF6 ガス、またはドライエア(乾燥空気を加圧)。遮断器は真空(VCB)
構造 機器を円筒形の金属タンクに収め、タンクどうしをつなぐ。屋外にも置く 1面ずつの箱(盤)に機器を収め、横に並べる列盤。建物の電気室に置く
準拠する規格 JEC-2350「ガス絶縁開閉装置」(66kV以上のキュービクル形も対象) JIS C 62271-200(2025年3月に JEM 1425 から移行)。72/84kV 級は JEM-1499 など、メーカーのカタログで確かめる
広さ(小型化の競争) 気中絶縁より大幅に小さいのが出発点 各社が従来機種比で縮小を競う:三菱電機 24kV は据付面積80%、明電舎 72/84kV は設置スペース69%、三菱電機 36kV は12面→5面
保守 ガスの管理が中心。大型で据付・更新は工事の規模が大きい 盤ごとに点検・更新。三菱電機 24kV は駆動用コンデンサと操作制御基板を15年で交換推奨
脱SF6の対応 規格が SF6 以外のガスを対象に(JEC-2350:2016) ドライエア絶縁の機種が製品化(三菱電機 24kV)。洋上風力向けでもドライエアの新機種を開発中
いちばん大事なのは、7つの違いの根っこが1つだということです。GISは「電力会社の変電所の大きな電圧を、タンクの中で小さく扱う」ために生まれ、C-GISは「建物の中の受変電・配電を、盤の形で小さく安全に」するために生まれました。目的の違いが、電圧クラス・構造・規格・置き場所の違いになっています。
注意: 「広さ」の縮小率は、各社が自社の従来機種と比べた値です。GISとC-GISを同じ条件で比べた数字ではないので、「C-GISはGISより◯%小さい」とは読まないでください。規格の名前も、電圧クラスや製品で異なります。導入のときは、そのメーカーのカタログで準拠規格を確かめてください(2026年10月時点)。
データセンターの受変電で、GISとC-GISはどこに入るのか
大規模なデータセンターは、電力会社の送電線から特別高圧で電気を受け、建物の中で段階的に電圧を下げてサーバーまで届けます。この流れの中で、GISとC-GISは次のように分かれます。
段階
電圧
開閉装置
何を守るか
特高受電(入口) 特別高圧(66kV・77kV級など、電力会社との契約で決まる) GIS、または 72/84kV 級の C-GIS 送電線からの受電点。事故のとき系統から切り離す
特高の母線・変圧器一次側 特別高圧 C-GIS(36kV・72/84kV 級) 受電した電気を複数の変圧器へ分け、変圧器ごとに守る
高圧配電(建物の中) 高圧(6.6kV〜) C-GIS(7.2kV・12kV・24kV 級)、または気中のキュービクル 変圧器の二次側から、UPS・冷却設備・各フロアの配電へ分けて守る
低圧配電 低圧 低圧の配電盤・PDU UPS からサーバーラックへ
明電舎の72/84kV C-GISは公称電圧66/77kVの受電に、三菱電機の36kV C-GISは「国内特高受配電設備」に、三菱電機の24kV C-GISは建物の受配電に向けた製品です。つまりデータセンターの電気の入口から建物の中まで、電圧クラスごとにC-GISの製品がそろっている のが今の姿です。
GISとC-GISの境目は、はっきりした線ではありません。規格の上でも、66kV以上のキュービクル形はGISの規格(JEC-2350)の対象に入りました。実務では、受電電圧・設置する場所(屋外か電気室か)・面積・将来の増設の予定で、タンク形のGISにするか、列盤のC-GISにするかを決めます。
データセンターでC-GISが選ばれる4つの理由
床面積
データセンターは床がそのまま収益を生む建物。電気室を小さくできる C-GIS は、サーバー室を広くとるのに直接効く。各社が従来比で縮小を競っているのはこのため。
安全
充電部がガスや箱の中に密閉され、露出しない。人が近づく電気室で、感電や火災の心配を減らす。
工期
工場で盤として組み立て、試験してから運び込む。現地では並べて母線をつなぐ作業が中心になり、気中の設備を現地で組むより短い期間で据え付けられる。
保守・更新
盤ごとに点検・交換ができる。三菱電機は、消耗部品を減らした操作機構や、長寿命のグリースで保守の手間を減らしたと説明している。
この4つは、データセンターだけの事情ではありません。三菱電機のリリースでも、C-GISの主な適用先はこれまで「変電所や駅、ビル等の施設」で、そこに「データセンターなど大容量電力が必要な施設の増加」が加わって需要が拡大したと書かれています。駅やビルで培われた「狭い所に安全に置く」技術が、データセンターの要求にそのまま合った、という流れです。
たとえるなら
GISは変電所という「専用の広い倉庫」に合わせて作った大型の金庫、C-GISはオフィスビルの一室に並べられる「書庫型の金庫」です。どちらも中身を守る点は同じですが、置く場所が決まれば、選ぶ形はほぼ決まります。データセンターは「ビルの中」に近いので、列盤のC-GISが主役になります。
C-GISを増産する会社と、脱SF6の流れ
三菱電機は2025年8月7日、受配電システム製作所(香川県丸亀市)にC-GISの新工場棟を建てると発表しました。データセンターなどの需要拡大を理由に、2027年度までに年間生産台数を従来比2倍にし、絶縁ガスの充填作業を自動化してガス充填時間を約40%削減するとしています。新工場棟は2026年6月竣工・同年10月稼働予定、投資額は約28億円です。
2倍
三菱電機 C-GIS の年間生産台数の目標(2027年度まで、従来比)
出典:三菱電機 ニュースリリース(2025年8月7日)
約40%
絶縁ガスの充填時間の削減(自動化ライン)
出典:三菱電機 ニュースリリース(2025年8月7日)
7.2〜84kV
新工場棟の主な生産品目(C-GIS の電圧クラス)
出典:三菱電機 ニュースリリース(2025年8月7日)
もう1つの流れが脱SF6です。SF6ガスは絶縁の性能が高い一方、地球温暖化係数が高いガスです。規格(JEC-2350:2016)がSF6以外のガスやドライエア・真空を対象に加え、三菱電機の24kV C-GISは乾燥空気を加圧して絶縁する「脱SF6」の製品になっています。同社は洋上風力向けでもドライエア絶縁の新機種を開発中で、欧州や北米の環境規制を背景に需要の拡大を見込んでいます。明電舎の72/84kV C-GISは、真空遮断器の採用と設置スペースの削減でSF6の量を従来機種比85%に抑えたとしています。
C-GIS・GIS を作る
三菱電機 (6503):7.2〜84kV の C-GIS。丸亀の新工場棟で2027年度までに生産2倍。ドライエア絶縁の24kV 機
明電舎 (6508):72/84kV の新縮小 C-GIS(BG-70)。設置スペース従来比69%
中に入る機器・材料
真空遮断器(VCB) :JEC-2300 に準拠。C-GIS の中で電流を切る主役
絶縁ガス・ドライエア :SF6 から、ドライエアや SF6 以外のガスへ
使う側
データセンター事業者・電気工事会社 :受電電圧・電気室の広さ・増設計画で GIS と C-GIS を選ぶ
注意: この2社以外にも開閉装置のメーカーはありますが、本記事ではカタログで仕様を確かめた2社だけを載せました。市場シェアの数字は一次情報で確かめられなかったので書いていません。会社の比較と電力インフラの銘柄は、企業マップの記事にまとめています。
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C-GISとGISの違いを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ: 電気・設備・建設の仕事では、図面の「GIS」「C-GIS」「キュービクル」を見分けられると、受電電圧・電気室の広さ・工事の進め方がすぐにつながります。脱SF6の機種を選ぶかは、環境方針と保守体制の話になるので、早めに決めておくと後の変更が少なくなります。
投資家の方へ: 重電メーカーのニュースで「C-GIS増産」と出たら、見るべきは電圧クラス(どの段階の設備か)・適用先(データセンターか洋上風力か)・絶縁方式(SF6かドライエアか)の3つです。開閉装置は会社全体の中では一部の事業なので、売上に対する大きさも確かめてください。推奨ではなく、構造の話です。
学生・就活中の方へ: 開閉装置は、高電圧工学(絶縁・アーク)、機械(操作機構)、材料(絶縁ガス・固体絶縁)、環境(温暖化係数)が1つの盤に集まる分野です。電気の専攻はもちろん、機械・化学の専攻からもつながります。
よくある誤解
誤解1:C-GISは小型のGIS、というだけ
大きさではなく、形と使い道が違います。タンク形で変電所に置くのがGIS、盤の形で建物の電気室に並べるのがC-GISです。72/84kV級のC-GISのように、電圧クラスが重なる製品もあります。
誤解2:キュービクル=C-GIS
一般に「キュービクル」と呼ぶ高圧受電設備は空気で絶縁した箱です。C-GISはガスやドライエアで絶縁し、真空遮断器を使う点が違います。
誤解3:脱SF6で、ガス絶縁開閉装置はなくなる
なくなるのはSF6で、ガス絶縁という考え方は残ります。規格はSF6以外のガス・ドライエア・真空を対象に加え、ドライエア絶縁のC-GISが製品化されています。
誤解4:データセンターの受変電は全部GIS
特高の入口はGISか大型のC-GIS、建物の中の受変電・配電はC-GISというように、段階ごとに使い分けます。
まとめ
GISとC-GISは同じ「ガス絶縁開閉装置」。GISは変電所向けのタンク形、C-GISは建物向けの列盤(キュービクル形)
C-GISは7.2〜84kV(三菱電機の生産品目)で、高圧から特高受電まで。規格はJIS C 62271-200(JEM 1425から移行)、66kV以上のキュービクル形はJEC-2350の対象にも
データセンターでは、特高の入口にGISまたは大型のC-GIS、建物の中の受変電・配電にC-GISが入る
選ばれる理由は床面積・安全(充電部が露出しない)・工期(工場で組んで運ぶ)・保守
三菱電機は2027年度までにC-GISの生産を2倍に。SF6からドライエアへの転換も進む
よくある質問
Q. C-GISとGISの違いは何ですか?
A. 同じガス絶縁開閉装置を、変電所向けのタンクの形で作るのがGIS、建物の電気室に並べる列盤の形で作るのがC-GISです。
Q. C-GISのCは何の略ですか?
A. Cubicle(キュービクル、箱)の頭文字です。1面ずつの箱に真空遮断器や断路器を収め、横に並べて使う形を表しています。
Q. データセンターにはGISとC-GISのどちらが使われますか?
A. 送電線から受ける特高の入口にはGISか大型のC-GIS、建物の中で電気を分けて守る受変電・配電にはC-GISが使われます。
Q. キュービクルとC-GISは同じものですか?
A. 違います。一般のキュービクルは空気で絶縁した高圧受電設備で、C-GISはガスやドライエアで絶縁し、真空遮断器を使う装置です。
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