2026年10月の半導体決算は、国内の9社のうち8社が増収でした。減ったのはレーザーテックの1社だけ。それも会社の想定どおりの減り方です。
AI向けの需要は、半導体の「工場の道具」から「チップの土台」まで、順番に広がっています。川上から雨が流れるように、データセンターへの投資が、装置・検査・基板・材料の会社の売上に流れ込んだ形です。
この記事では、9社の決算短信の数字を1表にまとめ、工程の地図に置きました。予想を引き上げたイビデンとソシオネクストは、理由が正反対なので節を分けています。株を買うか売るかは書きません。
先に知りたい方は 9社の決算の一覧/予想を上げた会社/数字の読み違い
半導体9社の決算を1表で(2026年10月)
9社の決算は、東京エレクトロンの売上が前年より41.3%増、アドバンテストが60.5%増、イビデンが34.3%増と、AIに近い会社ほど大きく伸びました。前年より減ったのはレーザーテックだけです。
決算の期間は会社によって違います。3月決算の会社は4〜9月の半年、ルネサスは1〜9月、6月決算のレーザーテックは7〜9月の3か月です。伸び率は、どれも前の年の同じ期間との比較です。
※ルネサスは一時的な損益を除いた「Non-GAAP」の値です。会計基準どおりの営業利益は7,580億円(+466.0%)ですが、事業を売った利益が入っています(後の節で説明します)。億円未満は切り捨てています。
キオクシアも10月30日に決算を出しました。売上は伸びましたが、次の3か月の見通しが横ばいで、夜間の取引で株価が大きく下げました。中身は前日の速報で図にしています。
キオクシアの決算と夜間の急落。会社予想を上回ったのに売られた理由

AI向けの需要は、装置・検査・基板のどこに効いたか
AI向けの需要が最も強く出たのは、検査のアドバンテスト(営業利益+96.5%)と、基板のイビデン(電子事業の営業利益+96.7%)です。前工程の装置の東京エレクトロンとディスコがそれに続きます。
筆者は9社の決算短信を読み比べ、AIとデータセンターという言葉が出てくる文を拾いました。9社のうち8社が触れています。ただし効き方は工程ごとに違います。半導体ができる順番に、各社の説明を並べました。
並べると、AIの効き方に「時間差」が見えます。チップを作る装置(東京エレクトロン・SCREEN)と、できたチップを試す検査(アドバンテスト)は、工場が増えた分だけすぐ売上になります。早い組です。一方、ソシオネクストのような特注のチップの会社は、まず開発費を払い、量産の売上は後から来ます。
東京エレクトロン・ディスコ・アドバンテスト・イビデンの4社の伸びを、AIのチップ1つの絵の「どこを作る会社か」に重ねたショート動画です。

通期予想を上げた会社・据え置いた会社
通期の予想を引き上げたのはアドバンテスト・イビデン・ソシオネクストの3社です。東京エレクトロンとルネサスは今回初めて通期の数字を出し、SCREEN・レーザーテック・信越化学は期初の予想を据え置きました。
変化の%は、会社が出した前後の予想から筆者が計算しました。東京エレクトロンは2027年3月期から予想を半年ごとに出す方式に変えたため、通期の予想は今回が最初です。あわせて上限1,500億円の自己株買いも決めています。
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予想の出し方は会社ごとにかなり違います。ディスコは「1四半期先まで」しか出さず(4〜12月の売上3,895億円の予想)、ルネサスは幅で出します。「据え置き」が弱気とは限らない点に注意してください。

イビデンの上方修正と増配:AIサーバーの基板が伸びた
イビデンは10月29日、通期の売上の予想を5,500億円から5,650億円へ、営業利益を1,270億円から1,330億円へ引き上げました。中間配当も1株7円50銭の予想から10円に増やしています。
イビデンが作るのは、GPUやCPUのチップを載せる「パッケージ基板」です。チップを家に例えると、基板は家を建てる土台にあたります。AIのチップは大きく、電気もたくさん使います。だから層の多い大きな土台が要ります。
決算短信の数字では、電子事業の売上が1,725億円(+52.0%)、営業利益が500億円(+96.7%)でした。会社全体の営業利益601億円のうち、8割を電子事業が稼いだ計算です。修正の理由には「生成AI用サーバー向けを中心とする高付加価値製品の受注増加」と製品構成の良化、円安が挙げられています。
同じ日に、岐阜県大垣市の河間事業場(Cell6)を中心に約1,510億円の設備投資も決めました。狙いはCPU向けの高機能ICパッケージ基板で、会社は「AIが学習型から推論型、そしてエージェントAIへと進化していく中で」需要が増えると説明しています。GPUだけでなく、AIのサーバーに載るCPUの土台も増やす、という判断です。
パワエレの回路設計では、電流の大きい部品ほど基板の層と配線の太さに余裕を取るのが普通です。AIのチップの電流は桁違いなので、基板が「数」だけでなく「1枚の大きさと層の数」でも伸びるのは、設計の目線からも自然に見えます。
イビデンの基本データと決算の読み方

ソシオネクストの上方修正:理由はAIではなく為替
ソシオネクストは通期の予想を、売上2,150億円から2,250億円へ、営業利益140億円から155億円へ引き上げました。ただ、会社が挙げた理由は為替です。上期の実際の為替が、予想の前提より円安だったためです。
一方で、4〜9月の営業利益は16億円で、前の年より55.7%減りました。売上は14.0%増えたのに、利益は半分以下です。ちぐはぐに見えます。
理由は、北米のデータセンター向けや車向けの新しいチップの量産を下期に控え、試作と開発にお金を使っているからです。研究開発費は338億円(+16.8%)に増えました。種をまく時期です。刈り取りはこれからです。
見ておきたいのは、下期の為替の前提が1ドル130円と、上期の平均159.4円よりかなり円高に置かれていることです。予想を上げた中身が為替だけなら、次の決算で見るべきは為替より「北米データセンター向けの量産が予定どおり始まったか」の方です。

決算の数字を読むときの3つの落とし穴
今回の9社には、表の数字だけを見ると読み違えやすい会社が3つあります。ルネサスの営業利益466%増、レーザーテックの減収、ディスコの「1四半期先」の予想です。
ルネサスの営業利益466%増は、事業を売った利益
ルネサスの会計基準どおりの営業利益は7,580億円で、前の年の5.7倍です。ただし中身は別物です。「タイミング事業」を売った利益が入っています。本業の強さを見るなら、一時的な損益を除いたNon-GAAPの営業利益4,087億円(+46.5%)の方です。それでも十分に強く、データセンター向けが伸びた産業・インフラ・IoT向けは営業利益が+95.1%でした。
レーザーテックの減収は、想定どおりの谷
レーザーテックの7〜9月の売上は25.5%減りましたが、会社は「概ね当初の想定通り」と書き、通期の予想(売上+25.8%)を変えていません。装置は完成して検収されたときに売上になります。だから四半期ごとに山と谷ができます。お客さまから先に受け取る前受金は427億円増えました。
ディスコの予想は「次の3か月」まで
ディスコは、お客さまの投資意欲の変化が激しいことを理由に、予想を1四半期先までしか出しません。今回の4〜12月の予想(売上3,895億円・+28.2%)は、通期の予想ではありません。代わりに「出荷額」(4〜12月で4,342億円の予想)を見ると、装置の勢いが先に分かります。

次に見る日付:11月18日のNVIDIAの決算
国内の決算の次に見るのは、日本時間11月18日(水)朝のNVIDIAの決算です。国内9社の売上を押し上げたAIの投資が、来年も続くかどうかの手がかりが、ここで出ます。
このブログでは、NVIDIAの決算日と日本時間の発表時刻を決算カレンダーにまとめています。1月の決算の時期にも、同じ形でまとめる予定です。
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東京エレクトロンの基本データ。決算は半期ごとの予想
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