CCL(銅張積層板)とは、ガラスクロスに樹脂をしみこませて重ね、両面に銅箔を貼って固めた板です。この銅を削って配線を作ると、プリント基板になります。
AIサーバーでは信号がとても速くなり、板の材料で性能が変わるようになりました。パナソニック インダストリーの MEGTRON のような低損失の材料が注目されるのは、そのためです。
先に読みたい節 プリント基板になるまで/速い信号で材料が効く理由/パッケージ基板(ABF)との違い
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サーバーの積み上がり(下から上へ)
ガラスクロス・樹脂・銅箔
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パッケージ基板(ABF)
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CCL(銅張積層板)とは
先に結論
CCL(Copper Clad Laminate、銅張積層板)とは、ガラスクロスに樹脂をしみこませたシートを重ね、両面に銅箔を貼って熱と圧力で固めた、プリント基板の素材の板です。
この板の銅を、配線の形に残して削り、何枚も重ねると、プリント基板ができます。AIサーバーでは、GPUやスイッチの間を非常に速い信号が行き来するので、板の中で信号が弱まったり遅れたりしにくい「低損失」のCCLが欠かせません。損失を減らすために、樹脂・ガラス・銅箔の3つの材料をそれぞれ改良しており、業界では M8・M9 のような呼び方で、より損失の少ない材料の段階を表しています。
用語メモ:プリント基板(PCB)
電子部品を載せて、銅の配線でつなぐ板。サーバーのマザーボードやスイッチの基板もプリント基板です。
用語メモ:伝送損失
信号が配線を通るあいだに弱まること。信号が速いほど、損失が大きくなりやすい。
CCLの中身と、プリント基板になるまで
この工程の役割
受け取るもの
ガラスクロス+樹脂
プリプレグ(半分固めたシート)
→
積層・プレス
プリプレグを重ねて両面に銅箔
熱と圧力で固める
→
次の工程へ渡すもの
CCL(銅張積層板)
プリント基板の材料
| 材料 |
役目 |
| ガラスクロス | 板の骨組み。伸び縮みを抑え、硬さを出す |
| 樹脂 | ガラスクロスを固めて、配線のあいだを絶縁する |
| 銅箔 | 削って配線にする。電気の通り道 |
プリント基板は、CCLの銅を、写真の焼き付けと薬品で配線の形に残して削り(エッチング)、その上にプリプレグと銅箔を重ねて、何層にも積み上げて作ります。層と層の配線は、穴を開けて銅をめっきしてつなぎます。
たとえるなら
CCL は、料理でいう「下ごしらえ済みの生地」です。基板メーカーは、この生地を切り、模様をつけ、重ねて、プリント基板という料理に仕上げます。生地の質が悪いと、どんなに腕のいい料理人でも、良い料理は作れません。
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速い信号では、なぜ板の材料が効くのか
配線を通る電気の信号は、銅の中だけでなく、そのまわりの樹脂やガラスの中にも電気の場を広げながら進みます。そのため、まわりの材料の性質で、信号の速さや弱まり方が変わります。
| 性質 |
意味 |
低いと |
| 誘電率(Dk) | 材料が電気をためこむ度合い | 信号が速く伝わり、配線の設計がしやすい |
| 誘電正接(Df) | 材料の中で信号のエネルギーが熱に変わる度合い | 信号が弱まりにくい |
信号が速くなるほど、Df による損失は大きくなります。AIサーバーでは、GPUどうしやスイッチの間を非常に速い信号が行き来するので、Dk と Df の低い材料が必要です。
パナソニック インダストリーは、AIサーバーなどに向けた多層基板の材料 MEGTRON8 で、前の世代の MEGTRON7 より伝送損失を約30%改善した(28GHz)としています。
約30%
パナソニック インダストリーの MEGTRON8 の伝送損失の改善(MEGTRON7 との比較、28GHz)
出典:パナソニック インダストリーの製品紹介
たとえるなら
ぬかるんだ道と舗装した道のちがいです。同じ車(信号)でも、ぬかるみ(損失の大きい材料)では速く走れず、エネルギーも失います。速く走るほど、道の差が効いてきます。
損失を減らす3つの工夫:樹脂・ガラス・銅箔
1. 樹脂:電気をためこみにくい樹脂へ
ふつうのエポキシ樹脂から、誘電率と誘電正接の低い樹脂に変えていきます。
2. ガラス:低誘電のガラスクロスへ
ガラスクロスも、ふつうのガラスから、誘電率の低い特殊なガラスに変えます。TrendForce は、次の世代の材料として Low-Dk2 や Q-glass(石英のガラス)を挙げています。
3. 銅箔:表面をなめらかに
信号が速いほど、電流は銅の表面近くを流れます(表皮効果)。銅箔の表面の凹凸が大きいと、そのぶん道のりが長くなって損失が増えるので、表面の凹凸を小さくした銅箔(HVLP など)を使います。
用語メモ:表皮効果
電流の周波数が高くなるほど、電流が導体の表面近くに集まって流れる現象。表面の凹凸が損失に効いてきます。
この3つを組み合わせて、損失の少なさの段階が上がっていきます。業界では、この段階を M8・M9 のような呼び方で表すことが多く、TrendForce も M8U 級・M9 級という呼び方を使っています。
AIサーバーで、CCLの格が上がっている
AIサーバーでは、GPUのボード、スイッチのトレイ、それらをつなぐ基板と、多くのプリント基板が使われます。世代が進むほど、信号は速く、基板の層は多くなっています。
TrendForce は2025年11月、NVIDIA の Rubin 世代のサーバーではケーブルを減らした設計になり、スイッチトレイは M8U 級の材料で24層、ミッドプレーンなどの基板は M9 級の材料で最大104層になるとし、サーバー1台あたりのプリント基板の価値は前の世代の2倍を超えるとしました。
| 基板 |
材料の段階(TrendForce) |
層の数 |
| スイッチトレイ | M8U 級(Low-Dk2 のガラス+HVLP4 の銅箔) | 24層(HDI) |
| ミッドプレーン・CX9/CPX の基板 | M9 級(Q-glass+HVLP4 の銅箔) | 最大104層 |
2倍超
Rubin 世代のサーバー1台あたりのプリント基板の価値(前の世代との比較)
出典:TrendForce(2025年11月20日)
注意:サーバーの設計や採用される材料は、世代や会社によって変わります。ここで示したのは、調査会社の報告にもとづく一例です。
CCLとパッケージ基板(ABF)の違い
CCLから作るプリント基板と、チップのすぐ下のパッケージ基板は、どちらも「基板」ですが、作り方と役目がちがいます。
| 比べる点 |
プリント基板(CCLから作る) |
パッケージ基板(ABF 基板) |
| 置かれる場所 | サーバーのマザーボード・スイッチ | チップのすぐ下 |
| 配線の細かさ | 比較的粗い | とても細かい |
| 主な材料 | CCL(ガラスクロス+樹脂+銅箔) | 芯の CCL の上に、ABF の絶縁フィルムと銅を積む |
| 大きさ | 大きい(数十cm) | 小さい(数cm) |
パッケージ基板の芯の部分にも、CCL と同じようなガラスクロス入りの板が使われます。どちらの基板でも、AIで材料の要求が上がっています。
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CCLを支える企業
CCL(基板の材料)
- パナソニック インダストリー(パナソニック HD 6752 のグループ):多層基板の材料 MEGTRON
- レゾナック(4004):基板の材料
- 台光電子(EMC)(2383.TW)・台燿科技(TUC)(6274.TW):台湾の CCL メーカー
材料の材料
- 日東紡績(3110):低誘電・低熱膨張のガラスクロス
- 三井金属(5706):基板用の銅箔
CCLのメーカーは、ガラスクロス・樹脂・銅箔のメーカーから材料を買い、プリント基板のメーカーに板を納めます。AIサーバーの材料の格上げは、この流れのすべての会社に影響します。
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CCLを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:基板・回路・部品のどの仕事でも、AIサーバーの性能の一部は「板の材料」で決まると知っておくと、材料の選び方や、調達の難しさの背景が見えてきます。
投資家の方へ:AIサーバーの世代が進むたびに、基板の層は増え、材料の段階は上がっています。CCL、ガラスクロス、銅箔のメーカーの動きは、AIの需要が材料にまで広がっていることを示しています。
学生・就活中の方へ:CCLは、電磁気(信号の伝わり方)・材料(樹脂とガラス)・製造(積層とめっき)が交わるテーマです。電気電子・材料系の学生にとって、高速の回路の入口になります。
よくある誤解
誤解1:CCLとプリント基板は同じもの
CCLはプリント基板の素材の板です。その銅を削って配線を作り、層を重ねてプリント基板にします。
誤解2:基板の性能は配線の形だけで決まる
速い信号では、配線のまわりの樹脂やガラス、銅箔の表面の性質で、信号の弱まり方が大きく変わります。
誤解3:CCLとガラスクロスは同じもの
ガラスクロスはCCLの材料の1つです。CCLは、ガラスクロスと樹脂と銅箔を合わせた板です。
まとめ
- CCLは、ガラスクロス+樹脂を重ね、両面に銅箔を貼ったプリント基板の素材の板
- 速い信号では、誘電率(Dk)と誘電正接(Df)の低い材料が要る
- 損失を減らす工夫は、樹脂・ガラス・銅箔(表面のなめらかさ)の3つ
- AIサーバーでは材料の段階が M8・M9 級へ上がり、基板の層も増えている(TrendForce)
- CCLのメーカーは、材料のメーカーと基板のメーカーの間をつなぐ
よくある質問
Q. CCLとは何ですか?
A. 銅張積層板のことで、ガラスクロスに樹脂をしみこませて重ね、両面に銅箔を貼ったプリント基板の素材の板です。
Q. CCLとプリント基板の違いは?
A. CCLは素材の板で、その銅を削って配線を作り、何層にも重ねたものがプリント基板です。
Q. AIサーバーでなぜ低損失のCCLが必要ですか?
A. GPUやスイッチの間を非常に速い信号が行き来するので、板の中で信号が弱まりにくい材料が必要だからです。
Q. M8やM9とは何ですか?
A. 業界で使われる、CCLの損失の少なさの段階の呼び方です。数字が大きいほど、損失の少ない材料を指します。
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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
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