GAAとは、Gate-All-Around(ゲート・オール・アラウンド)の略で、電気の通り道(チャネル)を、スイッチの役目のゲートで上下左右の四方から囲んだトランジスタの形です。FinFET は3面を囲む形でした。囲む面を増やすほど、スイッチを切ったときの電気の漏れを止められます。
2nm世代のチップは、この形で作られ始めています。TSMC(台湾積体電路製造)・Samsung(サムスン)・Intel(インテル)・Rapidus(ラピダス)の4社が名前を変えて同じ方向に進んでいる。形が変わる理由と、作り方の難しさを順に見ます。
先に見たい節 FinFETとの違い/GAAの作り方/4社の量産の時期
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ウェーハテスト
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ダイシング
ボンディング
封止
最終テスト
先端パッケージ
GAAは工程の名前ではなく、前工程で作るトランジスタの「形」です。薄い膜を交互に積む「成膜」、細く削り出す「エッチング」、不純物を入れる「ドーピング」を組み合わせて作ります。
GAAとは
先に結論
GAA(Gate-All-Around、ゲート・オール・アラウンド)とは、電気の通り道(チャネル)を、スイッチの役目をするゲートで上下左右の四方から囲んだトランジスタの形です。通り道は薄い板(ナノシート)を何枚か積み重ねた形で作るのが主流です。
トランジスタは小さくするほど、スイッチを切っても電気が漏れやすくなります。ゲートで通り道を囲む面を、平面型の1面、FinFETの3面と増やしてきて、GAAで4面すべてを囲みました。囲むほど電気をしっかり止められます。Samsungが2022年に3nmで、TSMCが2025年第4四半期に2nmで量産を始め、IntelやRapidusも続いています。
用語メモ:トランジスタ
電気を流したり止めたりする、チップの中の小さなスイッチ。AIのチップには、これが何百億個も入っています。
用語メモ:ゲートとチャネル
チャネルは電気の通り道、ゲートはその通り道を開け閉めする「つまみ」。ゲートに電圧をかけると、チャネルに電気が流れます。
まず、トランジスタの「スイッチ」の仕組み
チップの中のトランジスタは、ソース(入口)とドレイン(出口)の間を流れる電気を、ゲートで開け閉めするスイッチです。
| 部分 |
役割 |
たとえ |
| ソース | 電気の入口 | 水道の元栓の側 |
| ドレイン | 電気の出口 | 蛇口の先 |
| チャネル | ソースとドレインの間の、電気の通り道 | ホース |
| ゲート | チャネルを開け閉めするつまみ | ホースを握る手 |
たとえるなら
ホースの水を手で握って止めるのに似ています。ホースの片側だけを指で押さえても、水は少し漏れます。ホースを手のひら全体で、ぐるりと握れば、水をしっかり止められます。ゲートがチャネルをどれだけ広く囲めるかが、トランジスタの性能の大きな分かれ目です。
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GAAとFinFETの違い:囲む面の数
トランジスタは小さくなるほど、ゲートが通り道を押さえる力が弱くなり、スイッチを切っても電気が漏れる(リーク)ようになります。そこで、ゲートが通り道を囲む面を増やす方向に、形が変わってきました。
| 世代 |
形 |
ゲートが囲む面 |
特徴 |
| 平面型(プレーナー) | 平らな通り道の上にゲートを置く | 上の1面 | 作りやすいが、小さくすると漏れが増える |
| FinFET | 通り道を魚のひれ(フィン)のように立てて、ゲートでまたぐ | 上と左右の3面 | 長く主流。漏れを大きく減らした |
| GAA | 薄い板(ナノシート)を積み重ね、ゲートで四方を囲む | 上下左右の4面 | 最もしっかり止められる。2nm世代の主役 |
ポイント:FinFETでは、電流を増やしたいときにフィンの数を増やすしかありませんでした。GAAでは、積み重ねる板の幅を変えることで、流せる電流を細かく調整できるため、設計の自由度も上がります。
用語メモ:ナノシート
厚さが数ナノメートルほどの、とても薄いシリコンの板。GAAでは、これを数枚、すき間をあけて縦に積み、その周りをゲートで囲みます。
なぜGAAが必要になったのか
漏れを止める
小さくなるほど、スイッチを切っても電気が漏れます。四方から囲むと、通り道をしっかり閉じられ、待っている間の無駄な電力が減ります。
小さく詰め込む
同じ性能を、より小さな面積で出せます。チップに入れるトランジスタの数を増やし続けるのに欠かせません。
低い電圧で動かす
通り道をしっかり制御できるため、低い電圧でもスイッチを確実に切り替えられ、消費電力を下げられます。
AIのチップは、何百億個ものトランジスタを、限られた電力の中で休みなく動かします。1個あたりの漏れと消費電力を下げることは、データセンター全体の電力を左右します。GAAは、「より多く、より省電力で」を続けるための、トランジスタの作り替えです。
パワー半導体のスイッチでも、オフのときに流れる漏れ電流は、待機電力と発熱の見積もりに必ず入れる値です。1個あたりは小さくても、数が増えれば効いてくる。何百億個のトランジスタを載せるAIのチップが、形を変えてまで漏れを止めにいく理由は、電源の設計者の目から見るとここにあります。
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GAAの作り方:積んで、削って、取り除く
GAAの作り方は、FinFETよりずっと複雑です。代表的な流れは次のとおりです。
| 順番 |
やること |
| 1 | シリコンと、シリコンゲルマニウム(SiGe)の薄い膜を、交互に何層か積む(エピタキシャル成長) |
| 2 | 積んだ膜を、細い柱の形に削り出す(エッチング) |
| 3 | 仮のゲートと、絶縁の壁(スペーサー)を作り、ソースとドレインを成長させる |
| 4 | SiGe の層だけを選んで取り除き、シリコンの板を宙に浮いた状態にする |
| 5 | 浮いた板の周りに、ゲートの絶縁膜と金属を、原子の層で積んで巻き付ける(ALD) |
板と板のすき間は、ナノメートルの単位です。そのすき間の奥まで、膜を均一に巻き付けるために、原子1層ずつ積むALDが欠かせません。また、SiGe だけを取り除くエッチングや、板の厚さをそろえる成膜など、工程ごとに新しい精度が求められます。
注意:GAAでは、測ったり検査したりするのも難しくなります。板は縦に積み重なって隠れているため、上から見ただけでは形がわかりません。装置メーカー各社が、作る装置と測る装置の両方で新しい技術を競っています。
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GAAの量産はいつから?4社の動き
| 会社 |
GAAの名前 |
動き |
| Samsung | MBCFET | 2022年6月30日、GAAを使った3nmの初期生産を開始。GAAの量産は業界で初めて |
| TSMC | ナノシートトランジスタ | 2nm(N2)で第1世代のナノシートを採用。2025年第4四半期に予定どおり量産を開始 |
| Intel | RibbonFET | Intel 18A で、裏面電源(PowerVia)と組み合わせて採用。最初の製品は Panther Lake |
| Rapidus | 2nm GAA | 2025年7月18日に2nm GAAトランジスタの動作に成功。北海道千歳で2027年の量産を予定 |
同じGAAでも、各社で名前と細かな作り方が違います。量産を始めた時期と、実際にたくさんの良品を作れるか(歩留まり)は別の話で、各社の競争は「作れるか」から「たくさん良く作れるか」に移っています。
4社の発表を並べるとき、筆者が迷ったのは世代の数字でした。Samsung は「3nm」で GAA を始め、TSMC は「2nm」で始めています。nm の数字は線の太さではなく各社の世代の呼び名なので、同じ物差しでは比べられません。そこでこの表は、各社が発表で使った名前と時期のまま並べています。
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GAAの次は?トランジスタの形はさらに変わる
GAAで通り道を四方から囲んだあとも、トランジスタの作り替えは続きます。各社の研究で語られている方向は、主に2つです。
裏面から電源を送る
電源の配線をチップの裏側に移し、表側を信号の配線に使います(BSPDN)。Intel 18A は GAA と裏面電源を組み合わせています。
n型とp型を縦に重ねる
2種類のトランジスタ(n型とp型)を、横に並べるのではなく縦に重ねる形(CFET)が研究されています。面積をさらに小さくできます。
トランジスタは、平らに置く → 立てる(FinFET) → 囲む(GAA) → 重ねる(CFET)と、平面から立体へ進んでいます。チップを積み重ねる先端パッケージと同じく、トランジスタの中でも「縦に使う」発想が広がっています。
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GAAを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:成膜・エッチング・洗浄・検査のどの担当でも、GAAではすき間の奥の加工と、隠れた形を測ることが新しい課題になっていると知っておくと、前後の工程の話が通じやすくなります。
投資家の方へ:「2nmの量産開始」のニュースは、ファウンドリだけでなく、ALD・選択的エッチング・エピタキシャル成長・計測の装置の需要につながります。量産の開始と歩留まりは別だという点にも注意すると、位置づけがわかりやすくなります。
学生・就活中の方へ:GAAは、固体物理・材料・プロセスが交わる技術です。電気電子・物理・材料系の学生にとって、授業で習う MOSFET の理屈が、最先端の形で生きている例です。
よくある誤解
誤解1:GAAは工程の名前
GAAはトランジスタの形の名前です。成膜・エッチング・ドーピングなど、いくつもの工程を組み合わせて作ります。
誤解2:2nmの「2」は、ゲートの長さが2nmということ
いまの「2nm」「3nm」は世代の呼び名で、実際の部品の寸法とは一致しません。数字の意味は、ノードの記事で整理します。
誤解3:GAAになれば、どの会社でも同じ性能
同じGAAでも、各社で作り方や使う材料が違い、性能や歩留まりに差が出ます。
まとめ
- GAAは、電気の通り道をゲートで四方から囲んだトランジスタの形
- 平面型(1面)→ FinFET(3面)→ GAA(4面)と、囲む面を増やして漏れを減らしてきた
- 薄い板(ナノシート)を積んで囲むので、電流を細かく調整できる
- 作り方は複雑で、選択的なエッチングやALDが欠かせない
- Samsung・TSMC・Intel・Rapidus が量産と歩留まりを競っている
よくある質問
Q. GAAとは何ですか?
A. 電気の通り道(チャネル)を、スイッチの役目をするゲートで四方から囲んだトランジスタの形です。2nm世代で使われています。
Q. GAAとFinFETの違いは何ですか?
A. FinFETはゲートが通り道を3面から囲み、GAAは4面すべてを囲みます。GAAのほうが電気の漏れを減らせます。
Q. なぜGAAが必要なのですか?
A. トランジスタを小さくすると、スイッチを切っても電気が漏れやすくなるからです。四方を囲むとしっかり止められます。
Q. GAAはどの会社が量産していますか?
A. Samsung が2022年に、TSMC が2025年第4四半期に量産を始めました。Intel と Rapidus も続いています。
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