MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは何か。答えの前に、ひとつの数字から入ります。AIサーバー1台に、1万〜2万個。
村田製作所の説明として報じられた、AIサーバーに載る小さな部品の数です。従来のサーバーは2,000個ほどでした。その部品がMLCC(積層セラミックコンデンサ)。米粒より小さい、電気を一瞬ためて出す部品です。
この記事は、MLCCが何かを図で示したあと、なぜAIサーバーでこれほど数が増えるのかを、GPUの電源の計算で確かめます。電源回路の設計をしてきた立場から、カタログの容量をそのまま信じると数え違える理由(DCバイアス)にも触れ、最後に作っている日本の会社を地図にします。
先に見たい方は AIサーバーで何個か/個数を計算で出す/DCバイアスの注意/日本企業マップ
MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは?

MLCCの構造:なぜ何百層も重ねるのか
仕組みは単純です。MLCCの容量は、電極が向かい合う面積と枚数に比例し、層の厚さに反比例します。式で書くと「容量 = 誘電率 × 電極の面積 × 層の数 ÷ 層の厚さ」。同じ大きさのまま容量を増やすには、層を薄くして、枚数を増やすしかありません。
2025年には、1.0mm×0.5mmという米粒より小さい大きさで47µFを作る製品が出ました。村田製作所は2025年7月に量産を始め、京セラも同じ大きさで47µFの開発を3月に発表しています。どちらも、同じ大きさの従来品22µFの約2.1倍です。

AIサーバーにMLCCは何個使われるのか
AIサーバーのMLCCは、従来のサーバーの5〜10倍です。EE Times Japan(2024年8月6日)は村田製作所の決算説明の図として、従来のサーバーは2,000個程度、AIサーバーは1万〜2万個程度と伝えています。
個数だけではありません。太陽誘電は統合報告書2025で「AIサーバーの電力アップにより、MLCCの総静電容量が拡大」し、搭載数と大容量化が同時に進んでいると書いています。数が増え、1個あたりの容量も上がる。部品の会社から見ると、二重に需要が伸びる形です。
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なぜAIサーバーはMLCCを大量に使うのか
理由はGPUの電源にあります。「大電流」で「急に変わる」のです。ラックには48Vや800Vで電気が届き、基板の上の電源回路(VRM)がGPU用の低い電圧に下げます。ところがGPUの計算が始まった瞬間、電流は一気に増え、電源回路の制御はすぐには追いつきません。
その一瞬に電圧が落ちると、GPUは誤動作します。だから、GPUのすぐそばにMLCCを何百個も並べ、ためておいた電気で穴を埋めます。この使い方がデカップリング。太陽誘電が2025年9月に出した22µFの製品も、用途はAIサーバーなどのIC電源ラインのデカップリングとされています。
入口の側も同じです。TDKは、AIサーバーなどで48V系の電源が広がり、電源ラインに使う100V定格のMLCCの需要が伸びているとして、1608サイズ・100Vで1µFの製品を2025年6月に量産しました。
ラックの給電を800Vの直流にする理由

MLCCの個数を計算で出してみる(例)
必要な容量は「電流の変化 × 時間 ÷ 許せる電圧の落ち込み」で桁がわかります。仮に、電流が100A増え、電源の制御が追いつくまで1µs(100万分の1秒)、電圧の落ち込みは0.03Vまでとします。
もう100個を超えました。1か所の電源だけで、です。GPUのまわりには電源がいくつもあり、メモリやネットワークの部品にも同じ考え方が要ります。1台で数千〜数万個という桁は、この計算を重ねると納得がいきます。
この記事に計算を入れたのは、「1万個」という数字が大げさに聞こえるからです。式に当てはめると、1か所で百個単位になるのは自然な結果だとわかります。

DCバイアスとは?カタログどおりの容量は出ない
DCバイアスとは、高誘電率系のMLCCに直流の電圧をかけると、容量が公称値より下がる性質です。村田製作所のFAQは、主成分のチタン酸バリウムで自発分極の向きが固定されるためと説明し、実際の回路と機器の条件で確かめるよう勧めています。
電源回路の設計の立場から言うと、筆者ならMLCCの個数を数える前に、まず「その電圧・その温度での実際の容量」を部品の特性データで見ます。理由は、公称値で数えると、前の節の計算のように個数が半分しか足りないことが起こりうるからです。品質保証の目で見ても、試作では動いたのに高温の試験で電圧が落ちる、という不具合の入口になりやすいところです。

MLCCとほかのコンデンサの違い
MLCCとほかのコンデンサの違いは、小ささと速さの代わりに、電圧と温度で容量が動くことです。AIサーバーでは、性質の違うコンデンサを組み合わせて使います。
2025年に太陽誘電が出した22µFの製品は「基板内蔵対応」で、部品を基板の表面ではなく中に埋め込む使い方を想定しています。GPUの真下に置ければ、電気の通り道が短くなり、一瞬の変化に強くなります。表面の場所が足りなくなったAIサーバーならではの工夫です。
MLCCの日本企業マップ:村田・TDK・太陽誘電・京セラ
MLCCは日本の会社が多く作る部品です。下の表は、AIサーバー向けで2025年に出た製品を各社の発表から並べたもの。シェアや売上は、会社の資料で同じ基準の数字を確かめられなかったので入れていません。
需要の大きさの目安になる数字もあります。村田製作所は2026年10月30日の決算説明会の資料で、データセンター関連の売上が2026年4〜9月に1,649億円、前年同期比101.8%増だったと示しました。2027年3月期の通期は4,250億円の見込みで、7月の3,706億円から上げています。ただしこれは会社の推計で、MLCCのほかに電源モジュールや電池も含む数字です。
太陽誘電も2026年11月5日に、通期の業績予想を上げました。営業利益は8月の予想450億円から540億円へ(+20%)。MLCCが中心の「コンデンサ」の7〜9月の売上は833億円で、前年同期比26.4%増です。受注を売上で割ったBBレシオは1.83で、1を超えると、売上より注文が多い状態です。会社は理由に、AIサーバー向けなど高付加価値なハイエンド品の需要拡大を挙げ、来期はAIサーバー向けコンデンサの生産能力を今期の2倍以上にする予定としています。
株価や業績の見方は、この記事では扱いません。電源の部品をまとめて見たい方は、データセンター電源の関連銘柄の記事(予約中)で整理する予定です。

よくある誤解
まとめ
よくある質問
MLCCが支えるAIサーバーの電源を、データセンター全体の設備の中で見たい方に。本書(幻冬舎メディアコンサルティング)は、日米で20年以上の実績を持つデータセンターコンサルタントが、建物・IT機器・運用システムといったデータセンターの構造から、抱える課題と未来像までを解説した入門書です。





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