MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは?AIサーバーで1万個以上使われる理由と、村田・TDK・太陽誘電の日本企業マップ

MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは何かを示すアイキャッチ。GPUのまわりに小さなコンデンサがびっしり並ぶ基板の写真風のイラスト 電力・電源
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MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは何か。答えの前に、ひとつの数字から入ります。AIサーバー1台に、1万〜2万個。

村田製作所の説明として報じられた、AIサーバーに載る小さな部品の数です。従来のサーバーは2,000個ほどでした。その部品がMLCC(積層セラミックコンデンサ)。米粒より小さい、電気を一瞬ためて出す部品です。

この記事は、MLCCが何かを図で示したあと、なぜAIサーバーでこれほど数が増えるのかを、GPUの電源の計算で確かめます。電源回路の設計をしてきた立場から、カタログの容量をそのまま信じると数え違える理由(DCバイアス)にも触れ、最後に作っている日本の会社を地図にします。

先に見たい方は AIサーバーで何個か/個数を計算で出す/DCバイアスの注意/日本企業マップ

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電気がGPUに届くまで(上から下へ)
受変電→UPS・BBU→ラックの給電(48V・800V)→基板の電源(VRM)→GPUのすぐそばのMLCC ←ココ
一言でいうと:MLCCは、GPUの足元で電圧が一瞬落ちるのを防ぐ「小さな水たまり」です。

MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは?

先に結論

MLCC(積層セラミックコンデンサ、Multilayer Ceramic Capacitor)とは、薄いセラミック(誘電体)の層と電極の層を何百枚も交互に重ねて焼き固めた、小さなコンデンサです。電気を一瞬ためて、必要なときにすぐ出せます。

AIサーバーで数が増える理由は、GPUが大きな電流を急に出し入れするからです。電源の装置が追いつくまでの一瞬を、GPUのすぐそばに並べたMLCCが受け持ちます。村田製作所の説明として、搭載数は従来のサーバーの約2,000個から、AIサーバーでは1万〜2万個になると報じられています。

用語メモ:コンデンサ(キャパシタ)

2枚の電極の間に電気をためる部品。電池のように長くはためられませんが、一瞬で出し入れできるのが取りえです。

このブロックの参照データ
・EE Times Japan「村田製作所、24年Q1は増収増益 AIサーバ需要が旺盛」(2024年8月6日) 村田製作所の決算説明の図:サーバ1台あたりの搭載数
・太陽誘電「統合報告書2025」p.37〜41 AIサーバーの電力アップで MLCC の総静電容量が拡大
MLCC(積層セラミックコンデンサ)とは何かを示す図。セラミックと電極を何百層も重ねた構造と、GPUのまわりに大量に並ぶ様子

MLCCの構造:なぜ何百層も重ねるのか

仕組みは単純です。MLCCの容量は、電極が向かい合う面積と枚数に比例し、層の厚さに反比例します。式で書くと「容量 = 誘電率 × 電極の面積 × 層の数 ÷ 層の厚さ」。同じ大きさのまま容量を増やすには、層を薄くして、枚数を増やすしかありません。

部分 役目 AIサーバーで効くところ
誘電体(セラミック)電気をためる層。高誘電率系はチタン酸バリウムが主成分薄くできるほど大容量。ただし電圧で容量が下がる
内部電極誘電体をはさむ薄い金属の層枚数を増やすほど大容量
外部電極両端の端子。基板にはんだで付く基板に埋め込む型では平らさが求められる

2025年には、1.0mm×0.5mmという米粒より小さい大きさで47µFを作る製品が出ました。村田製作所は2025年7月に量産を始め、京セラも同じ大きさで47µFの開発を3月に発表しています。どちらも、同じ大きさの従来品22µFの約2.1倍です。

たとえるなら

MLCCは、薄い紙(誘電体)とアルミ箔(電極)を交互に何百枚も重ねたミルフィーユです。同じ厚さのケーキなら、1枚を薄くして枚数を増やすほど、たくさんの電気をためられます。

MLCCの容量の進化を示す図。同じ1.0×0.5mmの大きさで22µFから47µFへ約2.1倍(村田製作所・京セラ 2025年)

AIサーバーにMLCCは何個使われるのか

AIサーバーのMLCCは、従来のサーバーの5〜10倍です。EE Times Japan(2024年8月6日)は村田製作所の決算説明の図として、従来のサーバーは2,000個程度、AIサーバーは1万〜2万個程度と伝えています。

約2,000個
従来のサーバー1台
出典:EE Times Japan(村田製作所の説明)
1万〜2万個
AIサーバー1台
出典:EE Times Japan(村田製作所の説明)
約2.1倍
1.0×0.5mmの容量(22→47µF)
出典:村田製作所・京セラ 2025年

個数だけではありません。太陽誘電は統合報告書2025で「AIサーバーの電力アップにより、MLCCの総静電容量が拡大」し、搭載数と大容量化が同時に進んでいると書いています。数が増え、1個あたりの容量も上がる。部品の会社から見ると、二重に需要が伸びる形です。

注意:個数は時点と数え方で変わります。GPUの世代が新しくなるほど増えるという報道もありますが、この記事では会社の説明として確かめられた範囲(2024年の図)だけを書きました。
AIサーバーのMLCCの搭載数を示す棒グラフ。従来のサーバー約2,000個に対しAIサーバーは約1万〜2万個

なぜAIサーバーはMLCCを大量に使うのか

理由はGPUの電源にあります。「大電流」で「急に変わる」のです。ラックには48Vや800Vで電気が届き、基板の上の電源回路(VRM)がGPU用の低い電圧に下げます。ところがGPUの計算が始まった瞬間、電流は一気に増え、電源回路の制御はすぐには追いつきません。

その一瞬に電圧が落ちると、GPUは誤動作します。だから、GPUのすぐそばにMLCCを何百個も並べ、ためておいた電気で穴を埋めます。この使い方がデカップリング。太陽誘電が2025年9月に出した22µFの製品も、用途はAIサーバーなどのIC電源ラインのデカップリングとされています。

大電流

GPUの消費電力が大きく、電流が大きい。ためておく電気の量も大きくなる

急な変化

計算の開始・停止で電流が一瞬で変わる。電源の制御が追いつくまでをMLCCが受け持つ

高い電圧の入口

48V系の電源の入口では100V定格のMLCCが要る(TDK)

入口の側も同じです。TDKは、AIサーバーなどで48V系の電源が広がり、電源ラインに使う100V定格のMLCCの需要が伸びているとして、1608サイズ・100Vで1µFの製品を2025年6月に量産しました。

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MLCCの個数を計算で出してみる(例)

必要な容量は「電流の変化 × 時間 ÷ 許せる電圧の落ち込み」で桁がわかります。仮に、電流が100A増え、電源の制御が追いつくまで1µs(100万分の1秒)、電圧の落ち込みは0.03Vまでとします。

段 式 結果
① 必要な容量100A × 1µs ÷ 0.03V約3,333µF
② 47µFの部品なら3,333 ÷ 47約71個
③ 実際の容量が半分なら71 × 2約142個

もう100個を超えました。1か所の電源だけで、です。GPUのまわりには電源がいくつもあり、メモリやネットワークの部品にも同じ考え方が要ります。1台で数千〜数万個という桁は、この計算を重ねると納得がいきます。

注意:ここでの数字はすべて考え方を示す仮の値です。実際の設計は、周波数ごとのインピーダンス、電源回路の応答、ほかの種類のコンデンサとの組み合わせで決まります。

この記事に計算を入れたのは、「1万個」という数字が大げさに聞こえるからです。式に当てはめると、1か所で百個単位になるのは自然な結果だとわかります。

MLCCの必要な個数を計算する例の図。100A・1µs・0.03Vから約3,333µF、47µFで約71個、容量が半分なら約142個

DCバイアスとは?カタログどおりの容量は出ない

DCバイアスとは、高誘電率系のMLCCに直流の電圧をかけると、容量が公称値より下がる性質です。村田製作所のFAQは、主成分のチタン酸バリウムで自発分極の向きが固定されるためと説明し、実際の回路と機器の条件で確かめるよう勧めています。

種類 代表の特性 容量 DCバイアスでの変化 主な使い道
高誘電率系(CLASS2)X5R・X6S・X7R大きいある(下がる)デカップリング・平滑・バイパス
温度補償用(CLASS1)C0G小さいない発振・フィルタ・整合

電源回路の設計の立場から言うと、筆者ならMLCCの個数を数える前に、まず「その電圧・その温度での実際の容量」を部品の特性データで見ます。理由は、公称値で数えると、前の節の計算のように個数が半分しか足りないことが起こりうるからです。品質保証の目で見ても、試作では動いたのに高温の試験で電圧が落ちる、という不具合の入口になりやすいところです。

ポイント:AIサーバーのGPUの近くは温度が高く、MLCCは定格2.5Vの品から100Vの品まで、場所ごとに使い分けます。個数は「公称値」ではなく「実効値」で数える、が設計の基本です。
MLCCのDCバイアス特性を示す図。公称値から直流電圧と温度で容量が下がり、回路の中の実効値になる

MLCCとほかのコンデンサの違い

MLCCとほかのコンデンサの違いは、小ささと速さの代わりに、電圧と温度で容量が動くことです。AIサーバーでは、性質の違うコンデンサを組み合わせて使います。

種類 得意なこと 苦手なこと DCバイアス
MLCC(高誘電率系)小さい・速い・数を並べやすい電圧と温度で容量が下がるある
導電性高分子(ポリマー)コンデンサ大きな容量を1個で持てるMLCCより大きいない(村田製作所 FAQ)
シリコンキャパシタ電圧・温度でほとんど変わらない・薄い容量は小さめ変化がきわめて小さい(同)

2025年に太陽誘電が出した22µFの製品は「基板内蔵対応」で、部品を基板の表面ではなく中に埋め込む使い方を想定しています。GPUの真下に置ければ、電気の通り道が短くなり、一瞬の変化に強くなります。表面の場所が足りなくなったAIサーバーならではの工夫です。

MLCCの日本企業マップ:村田・TDK・太陽誘電・京セラ

MLCCは日本の会社が多く作る部品です。下の表は、AIサーバー向けで2025年に出た製品を各社の発表から並べたもの。シェアや売上は、会社の資料で同じ基準の数字を確かめられなかったので入れていません。

会社 2025年の主な製品(会社の発表) AIサーバーとの関係
村田製作所0402インチ(1.0×0.5mm)で47µFを量産(7月)背景にAIサーバー・データセンターの需要
TDK1608サイズ・100Vで1µFを量産(6月)48V系の電源の入口
太陽誘電1005サイズで22µFの基板内蔵対応品(9月)AIサーバーなどのIC電源のデカップリング
京セラ1005サイズで47µF、105℃まで(3月発表・12月量産予定)AIサーバーの高い温度での信頼性
海外韓国のサムスン電機、台湾のヤゲオ(国巨)など(この記事では製品を確かめていない)

需要の大きさの目安になる数字もあります。村田製作所は2026年10月30日の決算説明会の資料で、データセンター関連の売上が2026年4〜9月に1,649億円、前年同期比101.8%増だったと示しました。2027年3月期の通期は4,250億円の見込みで、7月の3,706億円から上げています。ただしこれは会社の推計で、MLCCのほかに電源モジュールや電池も含む数字です。

太陽誘電も2026年11月5日に、通期の業績予想を上げました。営業利益は8月の予想450億円から540億円へ(+20%)。MLCCが中心の「コンデンサ」の7〜9月の売上は833億円で、前年同期比26.4%増です。受注を売上で割ったBBレシオは1.83で、1を超えると、売上より注文が多い状態です。会社は理由に、AIサーバー向けなど高付加価値なハイエンド品の需要拡大を挙げ、来期はAIサーバー向けコンデンサの生産能力を今期の2倍以上にする予定としています。

株価や業績の見方は、この記事では扱いません。電源の部品をまとめて見たい方は、データセンター電源の関連銘柄の記事(予約中)で整理する予定です。

MLCCの日本企業マップ。村田製作所・TDK・太陽誘電・京セラの2025年のAIサーバー向け製品と海外の会社

よくある誤解

誤解1:MLCCは容量の数字どおりに働く

高誘電率系は直流の電圧と温度で容量が下がります。個数は回路の中の実際の容量で数えます。

誤解2:AIサーバーで増えるのは個数だけ

太陽誘電は、搭載数と1個あたりの大容量化が同時に進むと説明しています。

まとめ

  • MLCCは、薄いセラミックと電極を何百層も重ねた小さなコンデンサ
  • AIサーバーでは従来の5〜10倍(約2,000個→1万〜2万個。EE Times Japan が報じた村田製作所の説明)
  • 理由は、GPUの大電流が一瞬で変わり、電源の制御が追いつくまでをMLCCが受け持つから
  • 高誘電率系は電圧と温度で容量が下がる(DCバイアス)。個数は実効値で数える
  • 村田製作所・TDK・太陽誘電・京セラが、AIサーバー向けの大容量品を2025年に相次いで出した

よくある質問

Q. MLCCとは何の略ですか?

A. Multilayer Ceramic Capacitor(積層セラミックコンデンサ)の略です。セラミックと電極を何層も重ねたコンデンサです。

Q. AIサーバー1台にMLCCは何個使われますか?

A. 従来のサーバーは2,000個程度、AIサーバーは1万〜2万個程度です(村田製作所の説明。EE Times Japan、2024年8月)。

Q. DCバイアス特性とは何ですか?

A. 高誘電率系のMLCCに直流電圧をかけると、容量が公称値より下がる性質です。温度補償用(C0G)にはありません。

次の一歩:GPUのそばでMLCCが受け持つ電圧の手前、ラックの給電がなぜ800Vの直流へ変わるのかを確かめる → 【完全図解】800VDC給電とは?NVIDIAがラック直流化に踏み切った理由と、54Vでは足りなくなった構造
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