MR-MUFとTC-NCFの違いは、HBMの薄いDRAMのチップを何層も積むとき、チップの間のすき間を「何で、いつ埋めて固めるか」の違いです。すき間の埋め方で、熱の逃げ方も、作る速さも変わります。SK hynixはMR-MUF、SamsungはTC-NCFを選んできました。
こんな疑問はありませんか?
- MR-MUFとTC-NCFは、何の略で、何をする方法なの?
- 2つの方法は、どこが違うの?
- なぜSK hynixはMR-MUF、SamsungはTC-NCFなの?
- 層が増えると、どちらが有利になるの?
この記事でわかること
- MR-MUFとTC-NCFの定義と、積む手順の違い
- 熱・反り・生産性・すき間の4つで比べた表
- SK hynixとSamsungの選択と、それぞれの改良
- 16層・ハイブリッドボンディングへの流れ
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HBMの作り方
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TCボンダー・ハイブリッドボンディング
モールド・封止材
MR-MUFとTC-NCFの違いは?先に結論
先に結論
TC-NCFは、チップを1枚積むたびに、間に薄い膜(NCF)を挟み、熱と圧力で押しつけて固める方法です。MR-MUFは、チップを積んだあと、全部のバンプを一度に溶かしてつなぎ、すき間に液状の材料を流し込んで固める方法です。
SK hynixは、熱を逃がしやすく、まとめて処理できるMR-MUFを2019年に発表し、HBM2Eから使っています。Samsungは、膜を薄くしてすき間を7µmまで縮めたTC-NCFで、12層を8層と同じ高さに収めました。どちらの方法も、層が増えるたびに改良が続いています。
用語メモ:TC-NCF
Thermal Compression with Non-Conductive Film。電気を通さない膜(NCF)をチップの間に挟み、熱圧着(TC)で1層ずつ固める方法。
用語メモ:MR-MUF
Mass Reflow Molded Underfill。積んだチップを一度にリフロー(加熱)してつなぎ(MR)、すき間を液状のモールド材で埋めて固める(MUF)方法。
積む手順は、こう違う
| 手順 |
TC-NCF |
MR-MUF |
| 1. チップを置く | 下のチップの上に、膜(NCF)を貼ったチップを置く | 下のチップの上に、チップを置いていく |
| 2. つなぐ | 1枚ごとに熱と圧力をかけ、膜を溶かしながらバンプをつなぐ | 全部積んだあと、一度に加熱してバンプをまとめてつなぐ |
| 3. すき間を埋める | 溶けた膜がそのまますき間を埋める | すき間に液状のエポキシモールド材を流し込み、固める |
| くり返し | 層の数だけ1〜2をくり返す | つなぐのも埋めるのも、まとめて1回 |
いちばんの違いは、「1層ずつ」か「まとめて」かです。TC-NCFは、1枚ごとに熱と圧力をかけるので、時間がかかり、何度も熱を受けるチップに負担がかかります。MR-MUFは、つなぐのも埋めるのもまとめて行うので、効率がよいとSK hynixは説明しています。
たとえるなら
TC-NCFは「サンドイッチを1枚ずつ、両面テープを貼っては押しつけて重ねる」方法、MR-MUFは「パンと具を全部重ねてから、すき間に溶かしたチーズを流し込んで固める」方法です。
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| 比べる点 |
TC-NCF |
MR-MUF |
| 熱の逃げ方 | 膜は熱を通しにくい。バンプの大きさを工夫して放熱 | 熱を逃がすダミーのバンプを最大4倍置ける。モールド材も放熱を助ける |
| 反り・チップへの負担 | 1層ごとに熱と圧力を受ける。チップが薄くなるほど負担が課題 | モールド材が反りを抑える。薄いチップは仮止めの工夫を足す |
| 生産性 | 層の数だけ熱圧着をくり返す | つなぐのも埋めるのも一度 |
| 高さ(すき間) | 膜を薄くして、すき間を7µmに | すき間を液で埋めるので、すき間の高さはバンプで決まる |
どちらが「正解」というより、それぞれの弱点を改良で埋めてきた歴史です。SK hynixは、チップが薄くなるにつれてTC-NCFの熱と圧力の扱いが難しくなったことを、MR-MUFに切り替えた理由に挙げています。一方のSamsungは、膜を薄くしてすき間と空洞を減らす改良で、TC-NCFのまま12層を実現しました。
用語メモ:ダミーバンプ
電気の信号は通さず、熱を逃がすために置く小さな金属の突起。チップの間の熱の通り道になります。
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SK hynixの選択:MR-MUFからAdvanced MR-MUFへ
SK hynixは、HBM2まではTC-NCFを使っていましたが、層を増やすためにチップが薄くなり、熱と圧力の扱いが難しくなったことから、MR-MUFに切り替えました。2019年に発表し、HBM2Eから使っています。
2023年の12層のHBM3では、8層と同じ高さに収めるため、DRAMを約40%薄くしました。薄いチップは反りやすいので、積むたびにチップを短く加熱して仮止めする「チップコントロール」と、放熱が元の材料の1.6倍の新しいモールド材を組み合わせ、Advanced MR-MUFと名づけました。2026年のHBM4Eのサンプルも、この方法で作っています。
1.6倍
Advanced MR-MUF の新しいモールド材の放熱(元のMR-MUFの材料と比べて)
出典:SK hynix(2024年7月)
約40%
12層のHBM3で、8層よりDRAMを薄くした割合
出典:SK hynix(2024年7月)
Samsungの選択:膜を薄くしたAdvanced TC NCF
Samsungは、TC-NCFを改良する道を選びました。2024年2月に発表した12層のHBM3E(36GB)では、膜(NCF)を薄くしてチップの間のすき間を業界最小の7µmに縮め、層の間の空洞(ボイド)をなくして、12層を8層と同じ高さに収めました。
熱への対策では、信号を通す所には小さなバンプ、熱を逃がしたい所には大きなバンプと、バンプの大きさを使い分けています。この工夫で、縦の密度はHBM3の8層より20%超高くなったとしています。
7µm
Advanced TC NCF のチップの間のすき間(業界最小と発表)
出典:Samsung(2024年2月)
20%超
12層HBM3Eの縦の密度の向上(HBM3 8層と比べて)
出典:Samsung(2024年2月)
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16層とハイブリッドボンディングへ
層が12から16へ増えると、決められた高さの中に、さらに薄いチップを積む必要があります。すき間を埋める材料と、つなぐためのバンプそのものが、高さと熱の制約になってきます。
そこで注目されているのが、バンプを使わずに銅どうしを直接つなぐハイブリッドボンディングです。すき間そのものがなくなるので、高さと熱の点で有利になりますが、装置と工程が大きく変わります。MR-MUF・TC-NCFは、バンプでつなぐ時代の2つの答えで、その次の選択肢がハイブリッドボンディングという位置づけです。
注意:ハイブリッドボンディングをどの世代から使うかは、各社とも正式には決めていません。報道の見通しは変わりやすいので、各社の発表で確かめてください。
MR-MUFとTC-NCFを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:材料・装置・パッケージの仕事では、どちらの方法を使うかで、必要な材料(膜か、液状のモールド材か)と装置(熱圧着の装置か、リフローとモールドの装置か)が変わります。HBMの話を、使う材料と装置に結びつけて聞けるようになります。
投資家の方へ:HBMの3社の差は、DRAMそのものだけでなく、積み方の歩留まりと熱でもつきます。積み方のニュースは、どの材料・装置の会社に注文が向かうかのヒントになります。
学生・就活中の方へ:積層の実装は、材料・熱・機械・電気が重なる分野です。「チップを積んで固める」という一見地味な工程が、AIのメモリの性能を左右している点は、就職先を考えるうえでも面白いところです。
よくある誤解
誤解1:MR-MUFとTC-NCFは、チップをつなぐ装置の違い
主な違いは、チップの間のすき間を何で、いつ埋めるかです。つなぐ装置の違い(TCボンダーとハイブリッドボンディング)は別の話です。
誤解2:TC-NCFは古い方法で、もう使われていない
Samsungは改良したTC NCFで12層のHBM3Eを作っています。
誤解3:MR-MUFなら熱の問題はない
層が増えるほど、どちらの方法も熱と反りの改良が要ります。SK hynixも新しい材料と仮止めの工夫を加えています。
まとめ
- TC-NCFは、1層ずつ膜を挟んで熱圧着する方法
- MR-MUFは、まとめてつないで、すき間を液状のモールド材で埋める方法
- MR-MUFは熱と生産性に強く、TC-NCFは膜を薄くする改良ですき間を縮めてきた
- SK hynixはMR-MUF(HBM2Eから)、SamsungはTC NCFを改良して12層を8層と同じ高さに
- 16層の先では、バンプを使わないハイブリッドボンディングが次の選択肢
よくある質問
Q. MR-MUFとは何ですか?
A. HBMのチップを積んだあと、まとめて加熱してつなぎ、すき間を液状のモールド材で埋めて固める方法です。SK hynixが使っています。
Q. TC-NCFとは何ですか?
A. チップの間に電気を通さない膜を挟み、1層ずつ熱と圧力で固める方法です。Samsungが改良して使っています。
Q. MR-MUFとTC-NCFの違いは?
A. すき間を埋めるのが「膜で1層ずつ」か「液でまとめて」かです。熱と生産性、反り、高さの点で得意が分かれます。
Q. ハイブリッドボンディングとの関係は?
A. MR-MUF・TC-NCFはバンプでつなぐ方法で、ハイブリッドボンディングはバンプを使わずに銅どうしを直接つなぐ次の方法です。
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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
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