半導体製造装置メーカーのランキングで、日本の会社はどこに入るのか。直近の通期の装置の売上で並べると、日本の1位は東京エレクトロン、2位はアドバンテスト、3位はSCREENホールディングスです。
世界にはオランダのASML(エーエスエムエル)、米国のApplied Materials(アプライド マテリアルズ)・Lam Research(ラムリサーチ)・KLA(ケーエルエー)という大手がいます。ただ、売上の順位だけでは足りません。どの会社が何の装置で強いのかが見えないからです。この記事は、売上の表のあとに、前工程から後工程まで工程ごとに日本の装置メーカーを並べた地図を置きました。
先に見たい節 売上ランキング/前工程の装置と会社/検査・後工程の装置と会社/日本が弱い工程
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サプライチェーン(上流から下流へ)
素材
製造装置 ←ココ
前工程(ファウンドリ・メモリ)
後工程(パッケージ)
AIチップ
この地図で扱う工程
成膜
露光・塗布現像
エッチング
洗浄・CMP
検査
後工程
一言でいうと:工程ごとに強い「専門店」が分かれる日本の装置メーカーを、1枚の地図に
半導体製造装置で日本は世界何位か
先に結論
日本は、半導体製造装置で米国に次ぐ位置にあります。経済産業省の資料では、2021年度の製造装置の国別シェアは米国35%・日本31%でした(OMDIA の調査をもとに経済産業省が作成)。
日本のメーカーは、すべての工程を1社でそろえるのではなく、工程ごとに強い会社が分かれているのが特徴です。東京エレクトロンは塗布現像・成膜・エッチング・洗浄と幅広く、SCREEN は洗浄、KOKUSAI ELECTRIC はバッチ式の成膜、荏原製作所は CMP、レーザーテックはマスクの検査、日立ハイテクは寸法の計測(CD-SEM)、ディスコはウェーハを削る・切る装置、アドバンテストはテスタ、と専門の分野を持っています。一方、最先端の露光装置(EUV)は、オランダの ASML の独占です。
31%
半導体製造装置の日本企業の世界シェア(2021年度、米国35%に次ぐ2位)
出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」の資料(OMDIA の調査より作成)
用語メモ:前工程・後工程
前工程はウェーハの上に回路を作る工程、後工程はウェーハを切ってチップにし、包んで検査する工程です。
半導体製造装置メーカーの売上ランキング
日本の半導体製造装置メーカーを、直近の通期の「装置の売上」で並べると、1位は東京エレクトロン(2兆4,435億円)、2位はアドバンテスト(1兆194億円)、3位はSCREENホールディングス(4,853億円)です。装置のほかに事業を持つ会社は、装置の部門の売上で比べています。
| 順位 |
会社(証券コード) |
装置の売上 |
何の売上か |
決算期 |
| 1 | 東京エレクトロン(8035) | 2兆4,435億円 | 全社の売上高 | 2026年3月期 |
| 2 | アドバンテスト(6857) | 1兆194億円 | テストシステム事業部門 | 2026年3月期 |
| 3 | SCREENホールディングス(7735) | 4,853億円 | 半導体製造装置事業(外部の顧客への売上) | 2026年3月期 |
| 4 | ディスコ(6146) | 4,369億円 | 全社(単一セグメント) | 2026年3月期 |
| 5 | 荏原製作所(6361) | 3,423億円 | 精密・電子事業 | 2025年12月期 |
| 6 | KOKUSAI ELECTRIC(6525) | 2,351億円 | 全社(単一セグメント・IFRSの売上収益) | 2026年3月期 |
| 7 | レーザーテック(6920) | 2,305億円 | 全社(単一セグメント) | 2026年6月期 |
| 8 | 東京精密(7729) | 1,279億円 | 半導体製造装置部門 | 2026年3月期 |
8社の決算短信を読み比べて、最初につまずいたのは「どの数字を装置の売上と呼ぶか」でした。SCREENは印刷関連の機器やディスプレーの製造装置の事業も持ち、荏原製作所はポンプや環境の事業が大きく、東京精密には計測機器の部門があります。全社の売上で並べると、荏原製作所が2位に入ってしまう。それでは装置の順位になりません。そこでこの表は、決算短信のセグメント(事業の区分)の数字を使いました。
決算期もそろいません。荏原製作所は12月期、レーザーテックは6月期です。同じ1年で切りそろえる方法もありますが、四半期の数字を足し合わせる分だけ間違いが入りやすくなります。この表は、各社がいちばん新しく発表した通期の数字を採りました。東京エレクトロンは部門ごとの売上を筆者がこの記事のために確かめきれていないため、全社の売上高のまま載せています。
世界の大手は、通貨と決算期をそろえずに並べる
世界の半導体製造装置の大手には、露光装置のASML、成膜・エッチングのApplied MaterialsとLam Research、検査・計測のKLAがあります。通貨(ユーロ・ドル・円)と決算期が違い、円に直すと為替の前提で差が変わるので、この記事は順位をつけず、各社の発表した通期の売上を並べます。
| 会社 |
本社 |
得意な装置 |
直近の通期の売上 |
決算期 |
| ASML | オランダ | 露光(EUVは独占) | 327億ユーロ | 2025年12月期 |
| Applied Materials | 米国 | 成膜・エッチング・CMPなど | 283.7億ドル | 2025年10月期 |
| Lam Research | 米国 | エッチング・成膜 | 232.3億ドル | 2026年6月期 |
| KLA | 米国 | 検査・計測 | 135.8億ドル | 2026年6月期 |
| 東京エレクトロン | 日本 | 塗布現像・成膜・エッチング・洗浄 | 2兆4,435億円 | 2026年3月期 |
5社とも全社の売上で、装置の保守やサービスの売上も入っています。たとえばASMLは、2025年の売上327億ユーロのうち、すでに納めた装置の保守や改造の売上(Installed Base Management)が81.93億ユーロでした。
前工程の装置と、日本の主要メーカー
前工程では、ウェーハに膜を積み、模様を焼き付け、削り、きれいにする、という工程を何百回も繰り返します。工程ごとの装置と、日本の主なメーカーは次のとおりです。
| 工程 |
何をするか |
日本の主なメーカー |
海外の主なメーカー |
| 成膜 | ウェーハに薄い膜を積む | 東京エレクトロン(8035)・KOKUSAI ELECTRIC(6525) | アプライド マテリアルズ・Lam Research |
| 露光 | 回路の模様を焼き付ける | ニコン(7731)・キヤノン(7751) | ASML(EUV は独占) |
| 塗布現像 | 感光剤(レジスト)を塗り、現像する | 東京エレクトロン(8035) | – |
| エッチング | 膜を削って形を作る | 東京エレクトロン(8035)・日立ハイテク | Lam Research・アプライド マテリアルズ |
| 洗浄 | ごみや汚れを落とす | SCREEN ホールディングス(7735)・東京エレクトロン(8035) | Lam Research |
| CMP | 表面を平らに磨く | 荏原製作所(6361) | アプライド マテリアルズ |
| イオン注入 | 不純物を打ち込む | 住友重機械工業(6302)のグループ | アプライド マテリアルズ・Axcelis |
東京エレクトロンは、塗布現像の装置(コータ/デベロッパ)で、2025年に世界市場の91%を占めたとしています(同社調べ)。露光装置のすぐ隣で使う装置なので、最先端の EUV 露光でも欠かせません。
91%
東京エレクトロンのコータ/デベロッパ(塗布現像装置)の世界市場シェア(2025年暦年、同社調べ)
出典:Shared Research
用語メモ:日立ハイテク
日立製作所(6501)の子会社で、それ自体は上場していません。
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検査・後工程の装置と、日本の主要メーカー
| 工程 |
何をするか |
日本の主なメーカー |
| マスクの検査 | 回路の型紙(フォトマスク)の欠陥を見つける | レーザーテック(6920) |
| 寸法の計測 | 回路の線の幅を測る(CD-SEM) | 日立ハイテク(日立製作所のグループ) |
| ウェーハを削る・切る | ウェーハを薄く削り、チップに切り分ける | ディスコ(6146)・東京精密(7729) |
| プロービング | ウェーハのチップに針を当てて電気の検査をする | 東京精密(7729)・東京エレクトロン(8035) |
| ボンディング | チップを基板につなぐ | ヤマハ発動機(7272)のグループ(新川)など |
| モールディング | チップを樹脂で包む | TOWA(6315) |
| テスト | 完成したチップを電気で検査する | アドバンテスト(6857) |
日立は、日立ハイテクが CD-SEM でトップシェアを持つと説明しています。検査と後工程は、日本の中堅・専業のメーカーが、それぞれの装置で世界の大手になっている分野です。
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日本の装置メーカーが強い理由
1. 工程ごとの「専門店」が多い
1社ですべてをそろえるのではなく、洗浄・CMP・検査・削るなど、1つの工程に集中して世界の大手になった会社が多くあります。
2. 材料と装置が近くにある
日本は、ウェーハ・レジスト・薬液などの材料でも強く、装置メーカーと材料メーカーが一緒に工程を作り込めます。経済産業省の資料(OMDIA の調査より作成、2021年度)では、主要な部素材の日本のシェアは48%です。
3. 顧客と長く一緒に開発する
製造装置は、半導体メーカーの工場に合わせて調整しながら使います。長年の付き合いと、現場での調整の力が強みになっています。
たとえるなら
大きな総合病院(海外の大手)に対して、日本には「この手術ならここ」という専門のクリニックがたくさんある、という形です。どの専門クリニックが欠けても、手術(半導体の製造)は完成しません。
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日本が弱い所:最先端の露光とエッチング・成膜の大手
一方で、日本が後れをとっている工程もあります。
| 工程 |
状況 |
| EUV 露光 | オランダの ASML が独占。日本のニコン・キヤノンは EUV の装置を出していない |
| エッチング・成膜の最大手 | 米国のアプライド マテリアルズ・Lam Research が大きい。東京エレクトロンが追う形 |
キヤノンは、露光とは別の方法で模様を作るナノインプリントの装置を出し、新しい道を探っています。露光の主役が EUV である間は、日本の装置メーカーは、露光の前後の工程(塗布現像・検査・洗浄など)で存在感を発揮する形です。
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追い風と逆風
|
内容 |
| 追い風 | AIのチップと HBM の増産で、最先端の工場への投資が続く。GAA・裏面電源・3D 実装のように工程が複雑になるほど、装置の数と種類が増える |
| 追い風 | 日本国内でも、TSMC の熊本の工場や Rapidus の北海道の工場など、新しい工場の建設が進む |
| 逆風 | 中国向けの輸出規制が強まると、中国向けの売上が減る |
| 逆風 | 半導体の投資には波があり、メモリなどの市況が悪くなると、装置の注文が一気に減る |
注意:製造装置の会社の業績は、半導体メーカーの設備投資の計画で大きく動きます。個別の会社の状況は、最新の決算資料で確かめてください。
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この地図を知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:装置・材料・部品のどの仕事でも、自分の会社や取引先が、前工程・後工程のどこの工程を支えているのかを地図の上に置くと、ニュースや顧客の話が工程と結びつきます。
投資家の方へ:製造装置の会社は、同じ「半導体株」でも、どの工程の装置かで、AI・メモリ・中国のどれに影響を受けやすいかが変わります。工程の地図で整理してから、個別の会社を見ると読みやすくなります。
学生・就活中の方へ:装置メーカーは、機械・電気・化学・物理・ソフトの技術者が一緒に働く職場です。どの工程の装置かで、必要な専門が変わります。就職先を選ぶときの地図として使えます。
よくある誤解
誤解1:日本の装置メーカーは、すべての工程で世界一
露光(EUV)は ASML の独占で、エッチング・成膜の最大手は米国の会社です。日本は工程ごとに強い分野があります。
誤解2:装置メーカーは、半導体を作っている
装置メーカーは、半導体を作るための機械を作り、半導体メーカーに売っています。
誤解3:後工程の装置は、技術的にやさしい
HBM や先端パッケージでは、ウェーハを薄く削る・切る・積む工程の精度が、歩留まりを左右します。
まとめ
- 日本は製造装置で米国に次ぐ位置(2021年度のシェア31%、経済産業省)
- 東京エレクトロンは塗布現像・成膜・エッチング・洗浄と幅広い(塗布現像は世界の91%、同社調べ)
- 洗浄の SCREEN、成膜の KOKUSAI ELECTRIC、CMP の荏原、検査のレーザーテック・日立ハイテク
- 後工程ではディスコ・東京精密・TOWA・アドバンテストなどが専門の分野を持つ
- EUV 露光は ASML の独占。日本は露光の前後の工程で強い
よくある質問
Q. 半導体製造装置の日本企業は強いのですか?
A. 経済産業省の資料では、製造装置の分野で日本企業は米国に次ぐ位置にあります。工程ごとに強い会社が分かれています。
Q. 東京エレクトロンは何の装置を作っていますか?
A. 塗布現像・成膜・エッチング・洗浄など、前工程の幅広い装置を作っています。塗布現像の装置で特に強い会社です。
Q. 日本が弱い製造装置は?
A. 最先端の EUV 露光装置は、オランダの ASML の独占です。日本のニコン・キヤノンは EUV の装置を出していません。
Q. 後工程の日本の装置メーカーは?
A. ウェーハを削る・切るディスコ、プローバの東京精密、モールディングの TOWA、テスタのアドバンテストなどです。
免責事項:本記事は半導体製造装置の業界の構造を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。業績などの数値は2026年10月時点の公開情報に基づき、将来の成果を保証しません。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)に基づいて行ってください。
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