DRAMとNANDの違いは、データのため方と役割です。DRAMは速いけれど電源を切るとデータが消える作業用のメモリ、NAND(NAND型フラッシュメモリ)は電源を切ってもデータが残り、安く大容量にできる保存用のメモリです。
GPUのそばに積むHBMはDRAMの一種で、SSDの中身はNANDです。作る会社も Samsung(サムスン)、SK hynix(SKハイニックス)、Micron(マイクロン)と重なります。だから迷う。ニュースの「メモリ」がどちらの話かを、この記事で最初に切り分けます。
先に見たい節 データのため方の違い/7つの視点の比較表/「メモリ不足」はどちらの話か
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メモリの種類(速さの順)
HBM(DRAMの一種)
DRAM ←ココ
NAND(SSD) ←ココ
HDD
サプライチェーン(上流から下流へ)
素材
装置
メモリ製造
パッケージング
GPU設計
システム統合
DRAMとNANDの違いとは
先に結論
DRAMとNANDの違いは、DRAMは「速いけれど、電源を切るとデータが消える」作業用のメモリ、NANDは「DRAMより遅いけれど、電源を切ってもデータが残り、安く大容量にできる」保存用のメモリという点にあります。
DRAMはコンピューターが今まさに使っているデータを置く「作業机」、NANDはSSDやスマートフォンの記憶装置として大量のデータをためる「書庫」です。AI向けのGPUのそばに置くHBMは、DRAMの一種です。AIデータセンターでは、両方の需要が同時に増え、2026年はどちらも価格が上がっています。
用語メモ:揮発性・不揮発性
揮発性は、電源を切るとデータが消える性質。不揮発性は、電源を切ってもデータが残る性質。DRAM は揮発性、NAND は不揮発性です。
用語メモ:DRAMとNANDの名前
DRAM は Dynamic Random Access Memory の略。NAND は、メモリセルのつなぎ方が論理回路の NAND に似ていることから来た名前で、正しくは NAND 型フラッシュメモリです。
いちばんの違い:データの「ため方」
DRAMとNANDの違いは、1ビットのデータを、どんな仕組みでためるかにあります。
電源の設計者の目で見ると、DRAM のリフレッシュは「何もしていなくても電気を使い続ける」仕組みです。待機中の電力を見積もるとき、積んだメモリの量が効いてくるのはこのためです。電源を切るとデータが消える性質と、表と裏の関係にあります。
|
DRAM |
NAND |
| ため方 | 小さなキャパシタ(コンデンサ)に、電気をためる | 電子を「わな」に閉じ込める(電荷をためる膜) |
| 電気の性質 | 時間がたつと、電気が漏れていく | 電子は、閉じ込められたまま長く残る |
| 必要な手間 | 漏れる前に、くり返し書き直す(リフレッシュ) | 書き込みと消去に、少し時間と電圧が要る |
| 電源を切ると | データが消える | データが残る |
たとえるなら
DRAMは、底に小さな穴の開いたバケツに水をためているようなものです。水(電気)は少しずつ漏れるので、こまめに注ぎ足し(リフレッシュ)し続けなければなりません。注ぐのをやめれば(電源を切れば)、水はなくなります。NANDは、ふたを閉めた瓶に水を閉じ込めるようなものです。ふたを開け閉めするのに少し手間はかかりますが、置いておいても水はなくなりません。
DRAMとNANDの違いを7つの視点で比較
| 視点 |
DRAM |
NAND |
| 1. 役割 | 作業用(今使っているデータ) | 保存用(ためておくデータ) |
| 2. 電源を切ると | データが消える | データが残る |
| 3. 速さ | とても速い | DRAMより遅い |
| 4. 容量あたりの値段 | 高い | 安い |
| 5. 書き換えの回数 | ほぼ気にしなくてよい | 書き換えるほど少しずつ傷む(寿命がある) |
| 6. 主な製品 | パソコン・サーバーのメインメモリ、HBM | SSD、スマートフォンの記憶、USBメモリ |
| 7. 容量を増やす方法 | セルを小さくする。HBMはチップを積み重ねる | セルを縦に何百層も積む(3D NAND) |
ポイント:DRAMとNANDは、どちらが上というものではありません。速さのDRAMと、量と保存のNANDという、得意分野の違う2つのメモリを組み合わせて、コンピューターは動いています。
AIデータセンターでの2つの役割
AIデータセンターのサーバーの中では、データの置き場所が、速さの順に階層になっています。
| 置き場所 |
メモリの種類 |
役割 |
| GPUのすぐそば | HBM(DRAMの一種) | GPUが今まさに計算しているデータ |
| CPUのそば | DRAM(メインメモリ) | CPUが扱うデータ、GPUに渡す前のデータ |
| サーバーの中・ストレージ | NAND(SSD) | 学習のデータ、推論で使うデータ、途中の結果 |
| さらに外側 | HDD | 大量のデータの長期保存 |
AIの学習では、SSDにためた大量のデータを、DRAMを通してGPUのHBMへ次々に送り込みます。推論が広がると、検索に使うデータや、途中の計算結果をためる場所としても、SSDの出番が増えます。DRAMとNANDは、AIデータセンターの中でリレーのようにデータを受け渡しています。
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「メモリ不足」は、どちらの話なのか
2026年は、DRAMとNANDの両方で売上が大きく伸びています。どちらもAIデータセンターの需要が理由ですが、増え方の中身は違います。
2つの数字を並べるときに筆者が気づいたのは、TrendForce の数え方の違いです。DRAM は業界全体の売上、NAND は上位5社の売上の合計。母集団がそろっていないので、この記事では2つの伸び率を比べず、並べるだけにしています。
59.5%増
2026年第2四半期の DRAM の業界の売上(前の四半期と比べて)
出典:TrendForce(2026年9月7日)
77%増
2026年第2四半期の NAND の上位5社の売上の合計(前の四半期と比べて)
出典:TrendForce(2026年8月18日)
DRAMの側
HBMを作るためにDRAMの生産能力が使われ、ふつうのDRAM(サーバー向けなど)の供給が追いつきにくくなっています。
NANDの側
AIの推論が広がり、データセンター向けのSSDの需要が強くなっています。
ニュースの読み方
「メモリ不足」と出たら、DRAM(HBM)の話か、NAND(SSD)の話かを分けて読むと、何が足りないのかがはっきりします。
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DRAMとNANDを作る会社
DRAMとNANDは、作る会社の顔ぶれが一部重なり、一部違います。TrendForce の2026年第2四半期の売上の順位は次のとおりです。
| 順位 |
DRAM(シェア) |
NAND |
| 1位 | Samsung(39.4%) | Samsung |
| 2位 | SK hynix(24.9%) | SK hynix グループ |
| 3位 | Micron(23.3%) | Micron |
| 4位 | | キオクシア(13.6%) |
| 5位 | | SanDisk |
DRAMは、Samsung・SK hynix・Micron の3社で大半を占めます。NANDには、日本のキオクシアと、米国の SanDisk が加わります。キオクシアと SanDisk は、日本の工場で一緒に NAND を作っています。
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DRAMとNANDの違いを知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:設計・調達・データセンターのどの担当でも、「速さが要るのか、量と保存が要るのか」で、DRAMとNANDのどちらの話かを切り分けられると、メモリの選び方や不足の話がすっきりします。
投資家の方へ:DRAM と NAND は、需要の波の動き方も、作る会社の顔ぶれも違います。メモリのニュースは、どちらの話かを確かめてから読むと、関連する会社の位置づけがわかりやすくなります。
学生・就活中の方へ:DRAM と NAND は、電気をためる仕組みの違いが、性能・値段・使い道の違いにそのまま表れる、わかりやすい例です。電気電子・情報系の学生にとって、コンピューターの記憶の階層を学ぶ入口になります。
よくある誤解
誤解1:DRAMとNANDは、速さが違うだけの同じメモリ
データのため方がまったく違います。DRAMは電気をためて電源を切ると消え、NANDは電子を閉じ込めて電源を切っても残ります。
誤解2:SSDがあればDRAMはいらない
SSDはDRAMより遅いため、コンピューターが今まさに使うデータはDRAMに置きます。2つは役割が違います。
誤解3:HBMはNANDの一種
HBMはDRAMのチップを積み重ねたもので、DRAMの一種です。NANDとは別の種類のメモリです。
まとめ
- DRAMは速いが電源を切ると消える作業用、NANDは遅いが消えない保存用のメモリ
- DRAMはキャパシタに電気をため、NANDは電子をわなに閉じ込める
- AIデータセンターでは、HBM・DRAM・SSD(NAND)がリレーのようにデータを受け渡す
- 2026年は、HBMとSSDの需要で、DRAMとNANDの両方が足りなくなっている
- DRAMは3社、NANDはそれにキオクシアとSanDiskが加わる
よくある質問
Q. DRAMとNANDの違いは何ですか?
A. DRAMは速いが電源を切るとデータが消える作業用、NANDは遅いが電源を切ってもデータが残る保存用のメモリです。
Q. なぜDRAMは電源を切るとデータが消えるのですか?
A. 小さなキャパシタにためた電気が時間とともに漏れるため、電源で書き直し続けないとデータを保てないからです。
Q. SSDはDRAMとNANDのどちらですか?
A. SSDはNANDを使った記憶装置です。速さのためにDRAMを一緒に載せている製品もあります。
Q. HBMはDRAMとNANDのどちらですか?
A. HBMはDRAMの一種です。DRAMのチップを縦に積み重ねて、GPUのそばに置けるようにしたメモリです。
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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、AIインフラを支える半導体・電力・冷却の仕組みを、図解でやさしく解説しています。
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