イビデンとNVIDIA(エヌビディア)の関係は、資本ではなく取引の関係です。イビデンは GPU を載せる土台のICパッケージ基板を作り、NVIDIA はイビデンの最大の顧客になっています。
「イビデンは何を作っている会社か」と聞かれたら、答えはこの基板です。ニュースだけでは、どれくらい売っているのかまでは見えません。この記事では、イビデンの有価証券報告書3期分と決算資料の数字だけを使い、報道でしか出てこない話は分けて書きました。
先に読みたい節 NVIDIAが最大の顧客になった数字/イビデンは何を作っている会社か/決算で見るところ
この企業の立ち位置:AIインフラ > 先端パッケージ(ICパッケージ基板) > イビデンとNVIDIA
サプライチェーン(上流から下流へ)
材料(ABFなど)→ICパッケージ基板(イビデン) ←ココ→GPU(NVIDIAが設計)→AIサーバー→データセンター
関わる技術
ABF基板
先端パッケージ
CoWoS
一言でいうと:NVIDIAのGPUを載せる「土台の基板」を作り、NVIDIAが最大の顧客になった会社
イビデンとNVIDIAの関係は?
先に結論
イビデンとNVIDIAの関係とは、イビデンが作るICパッケージ基板(チップを載せる土台の基板)の最大の買い手がNVIDIAであるという関係です。イビデンの有価証券報告書では、2026年3月期にNVIDIA Corp.向けの売上が1,225億円で、売上全体の29.4%を占め、Intelを抜いて1位になりました。
NVIDIA向けの売上は、前の期の751億円(20.3%)から6割あまり増えました。NVIDIA向けはすべて「電子」の事業に入り、電子の売上2,433億円のおよそ半分にあたります。
ただし、会社が開示しているのは「NVIDIA Corp.に対する売上の金額」までで、どの製品にどの基板が使われているかは公表していません。この記事では、確かめられる範囲と、報道で言われていることを分けて読みます。
用語メモ:ICパッケージ基板
GPUやCPUのチップと、サーバーの基板(マザーボード)の間に入る板。チップの細かい端子を、太い配線に広げてつなぎます。イビデンの主力製品です。
NVIDIAはイビデンの最大の顧客
上場会社は、売上の10%以上を占める取引先があると、有価証券報告書にその名前と金額を書きます。イビデンの直近4年の記載を並べると、NVIDIAの名前が出てきたのは2025年3月期からです。
| 決算期 |
1位 |
2位 |
3位 |
| 2023年3月期 | Intel 1,508億円(36.1%) | AMD 505億円(12.1%) | — |
| 2024年3月期 | Intel 1,146億円(30.9%) | —(ほかは10%未満) | — |
| 2025年3月期 | Intel 767億円(20.8%) | NVIDIA 751億円(20.3%) | AMD 407億円(11.0%) |
| 2026年3月期 | NVIDIA 1,225億円(29.4%) | Intel 753億円(18.1%) | —(AMDは10%未満) |
2024年3月期にはNVIDIA向けの売上が10%未満で、名前が出ていませんでした。そこから2年で、NVIDIA向けは売上の3割近くまで増えました。逆にIntel向けは、2023年3月期の1,508億円から2026年3月期の753億円へと、ほぼ半分になっています。
1,225億円
NVIDIA向けの売上(2026年3月期)
出典:イビデン 有価証券報告書
29.4%
売上全体に占める割合
出典:イビデン 有価証券報告書
約50%
電子の売上に占める割合(計算)
出典:有価証券報告書の値から計算
注意:電子の売上に占める割合は、NVIDIA向けの1,225億円を電子の売上2,433億円で割った値です(会社が示した比率ではありません)。
イビデンは何を作っている会社か
イビデンの電子の事業が作っているのは、ICパッケージ基板です。AI向けのGPUは、GPUのチップとHBM(積み重ねたメモリ)を並べ、その下に配線の板を重ねてから、サーバーの基板に載せます。いちばん下でサーバーの基板とつなぐ「土台」が、ICパッケージ基板です。
たとえるなら
GPUのチップが「高層ビル」なら、ICパッケージ基板は「ビルを地面につなぐ基礎」です。ビルが大きく重くなるほど、基礎も大きく、ゆがまず、たくさんの配管(配線)を通せるものが要ります。
AI向けのGPUは、チップが大きく、たくさんの信号と電力を通すので、基板も大きく、層が多くなります。基板が反ったり、配線に欠けがあったりすると、上に載った高価なチップごと使えなくなります。イビデンは、こうした大きく難しい基板の量産を得意にしてきました。
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イビデンの何がすごいのか
「すごさ」を、会社の数字で言い換えると3つになります。
1. 1社で1,225億円を任されている
NVIDIAは、自分の製品の土台をイビデンに大きく任せています。1社向けで売上の3割近くになるのは、品質と量の両方で選ばれているということです。
2. 電子の利益率が高い
2026年3月期の電子の営業利益は452億円で、電子の売上の18.6%です。会社全体の営業利益(620億円)の7割あまりを電子が稼いでいます。
3. 先に工場を作っている
2025年10月に大野事業場(岐阜県大野町)を開設し、2026年度から2028年度の3年で電子の事業に約5,000億円を投資する計画です。
報道では、もっと踏み込んだ言い方も出ています。Bloombergは2024年12月、NVIDIAのAI半導体はすべてイビデンの基板を使っていると書き、台湾の欣興電子(Unimicron)などが参入をねらっているとも伝えました。これは記者の書いた内容で、イビデンやNVIDIAが発表したものではありません。
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IntelからNVIDIAへ、顧客の変化
イビデンは長く、パソコンとサーバーのCPUの基板をIntelに納めてきました。Bloombergの報道によると、Intelはかつて基板の売上の約7〜8割を占めていました。2024年3月期の有価証券報告書では、Intel向けは売上全体の30.9%です。
| 比べる点 |
Intel中心の時代 |
NVIDIAが1位の今 |
| 主な製品 | パソコン・サーバーのCPUの基板 | AIサーバーのGPUの基板が伸びる |
| 最大の顧客 | Intel(2023年3月期 36.1%) | NVIDIA(2026年3月期 29.4%) |
| 顧客の所在地で多い地域 | — | 台湾 1,115億円(前期 585億円) |
| 会社の説明 | — | 生成AI用サーバー向けの需要は引続き好調 |
顧客の所在地で分けた売上では、台湾向けが2025年3月期の585億円から2026年3月期の1,115億円へ、ほぼ倍になりました。ただし、会社は所在地ごとの顧客の内訳を説明していないので、台湾向けの増加とNVIDIA向けの増加を、数字の上で直接結びつけることはできません。
NVIDIAへの依存のリスク
追い風:AIサーバーの需要
会社は2026年8月、ICパッケージ基板の需要が想定を大きく上回ったとして、通期の予想を売上高5,500億円・営業利益1,270億円に引き上げました。電子の受注残高も、前の期より27.8%増えています。
追い風:大きな基板ほど難しい
GPUが大きくなるほど、基板の層と面積が増え、量産できる会社が限られます。
逆風:1社への集中
売上の3割近くがNVIDIA向けです。NVIDIAの製品の切り替えや発注の変化が、業績に直接響きます。
逆風:競合と新しい基板
台湾などの基板メーカーが参入をねらい、次の世代ではガラスを芯にした基板も開発されています。
逆風:大きな投資
3年で約5,000億円の投資は、需要が想定を下回ると負担になります。
NVIDIAの名前が有価証券報告書に出ているのは、取引が大きいことの証拠であると同時に、1社に頼っている度合いを示す数字でもあります。決算のたびに、NVIDIA向けの割合がどう動くかを見ると、関係の変化を追えます。
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イビデンの決算で見るところ
イビデンの決算は四半期ごとに発表され、IRカレンダーで確かめた直近の2回は、どちらも日本時間の午後3時台でした(2027年3月期の第2四半期は2026年10月29日 15:20、前の期の第3四半期は2026年2月3日 15:30)。NVIDIAとの関係を追うなら、見るところは3つです。
| 見るところ |
どこに出るか |
何がわかるか |
| 電子の売上と利益率 | 四半期の決算短信・補足資料 | AIサーバー向けの基板の伸びと価格 |
| 通期の予想の変更 | 決算短信・業績予想の修正 | 会社が需要をどう見ているか |
| 主要な顧客の割合 | 有価証券報告書(年に1回、6月) | NVIDIA向けが何%か |
顧客ごとの金額は、四半期の決算では出ず、年に1回の有価証券報告書にだけ載ります。次にNVIDIA向けの割合がわかるのは、2027年3月期の有価証券報告書(2027年6月ごろ)です。
この関係を知ると、何が見えてくるか
あなたにとっての意味
仕事で関わる方へ:基板・材料・装置の仕事では、「NVIDIAのGPUが伸びると、どの部材の需要が増えるか」を考える場面があります。イビデンの電子の売上と受注残高は、GPUの土台の需要を測る目安になります。
投資家の方へ:NVIDIA向けの割合は、強さの証拠でもあり、集中のリスクでもあります。数字は年1回の有価証券報告書で確かめ、四半期では電子の売上と利益率、通期の予想の変化を追うと、報道と実際の数字を分けて見られます。
学生・就活中の方へ:パッケージ基板は、材料・配線・めっき・検査が交わる分野です。GPUの会社だけでなく、その土台を作る会社にも、AIの伸びが直接届いていることがわかります。
よくある誤解
誤解1:イビデンはNVIDIAの子会社・グループ会社
資本の関係ではなく、取引の関係です。イビデンは独立した上場会社(東証プライム 4062)で、NVIDIAは最大の顧客です。
誤解2:NVIDIAとの取引額は公表されていない
売上の10%以上を占める顧客の名前と金額は、有価証券報告書に載っています。公表されていないのは、どの製品にどの基板が使われているかです。
誤解3:イビデンはGPUを作っている
イビデンが作るのは、GPUのチップを載せる基板です。GPUを設計するのはNVIDIA、チップを作るのはTSMCです。
まとめ
- イビデンとNVIDIAの関係は、GPUの土台の基板の「作り手」と「最大の買い手」
- 2026年3月期のNVIDIA向けは1,225億円で、売上の29.4%(有価証券報告書)
- 2年前は10%未満。Intel中心から、AIのGPU中心へ顧客が変わった
- 電子の売上のおよそ半分がNVIDIA向けで、集中のリスクもある
- 次の決算は10月29日。顧客ごとの割合は年1回の有価証券報告書で確かめる
よくある質問
Q. イビデンとNVIDIAはどんな関係ですか?
A. イビデンはGPUのチップを載せるICパッケージ基板を作り、NVIDIAはその最大の顧客です。資本の関係はなく、取引の関係です。
Q. イビデンのNVIDIA向けの売上はわかりますか?
A. わかります。売上の10%以上を占める顧客として、有価証券報告書にNVIDIAの名前と金額が載っています。2026年3月期の最大の顧客です。
Q. イビデンは何を作っている会社ですか?
A. 主力はGPUやCPUのチップをサーバーの基板とつなぐICパッケージ基板です。ほかに自動車の排ガスのフィルターなども作ります。
Q. イビデンの何がすごいのですか?
A. AI向けの大きく層の多い基板を量産でき、NVIDIAからの大きな注文を任されている点です。電子の事業の利益率も高まっています。
免責事項:本記事はイビデンとNVIDIAの取引の関係の構造を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。業績などの数値は2026年10月19日時点の公開情報に基づき、将来の成果を保証しません。投資判断は、ご自身の責任と最新の一次情報(IR・有価証券報告書など)に基づいて行ってください。
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